悪魔の学校
第21話 過保護
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「本当に大丈夫かい?」
「カガチもいるし……平気だと思う」
「そうかな、念のために防犯ブザーでも持っていく? ううん持って行ったほうがいいよ、あとスタンガンに催涙スプレーと」
「ぼ、防犯対策のレベルが高ーよ」
悪魔の世界にも防犯という概念があるようで、今現在ダイニチから死ぬほど心配されている。カガチが迎えに来てくれる手筈になっているのだがまだだろうか、そろそろこの攻防にも限界が見え始めてきた。流石は悪魔、優しくてもそのパッションは目を見張るものがある、気を抜くと一瞬で力負けしてしまいそうだ。
初日でカガチに正体がバレたことをかなり気にしているようで、このままではベルゼブブ会長にバレるのも時間の問題などとブツブツ言いながらこのように俺に凄んでいる。ちょっと悪いことをしたかもしれないと昨日の行いを反省した。そうだよな、俺からしたら失うのは自分の貞操だけだがダイニチはひた隠しにしている秘密や主人の尊厳、そして俺という存在の貞操といろんなものを失うかもしれないのだから。
「おはよーセイギ! ……何してんの」
「玄関の攻防」
「カガチ・サタン様、おはようございます。今正義くんに防犯アイテムを持たせようとしてまして」
リュックから溢れ出そうな防犯アイテムを見て俺の心中を察してくれたのか、仲裁に入ってくれた。教科書や財布が入りきらないほどの防犯アイテムを極力減らす作戦に出たようだ、悪魔の世界のアイテムに関する知識はどう考えても勝ち目がない。ここはカガチにお願いしよう。
「この注射器は?」
「麻痺薬、初めてでも慌てていても打てるようにスタンプ式になっています、人間には聞かない薬で出来ているから間違って自分に打っちゃっても大丈夫!」
「この風呂敷は?」
「風呂敷型の対性的興奮者窒息器、性的に興奮している悪魔の鼻や首に巻きついて窒息させます、正義くんの意志でオンオフ可能ですから安心ですよ!」
「……この妙に派手なペンは?」
「赤い糸感電器ことアッカンちゃん、握った人に性的欲求を持っている人を探り当てて、遠隔で電気ショック喰らわせる最新型の防犯用スタンガンです」
「ここら辺は全部学校に必要のないもんだな、全部置いてくッスよ」
「え!?」
そう言って加減も呵責も温情もなく要らないと判断した防犯グッズをバックから根こそぎとっていく。ってかそんな凶悪なアイテムだったんか、悪魔界の防犯は人間界でやったら正当防衛超えて過剰防衛の域だ。ここまでしないと治安を保てないのか、それともシンプルに犯罪者や変質者に対して人間界よりも当たりが強いだけなのか、なんでもいいがどちらにせよ学校に持って行くには危険すぎる代物達だ。
とにかく断捨離をしたおかげかリックは随分と軽くなった。最低限防犯ブザーと催涙スプレーは待たされたが、まあこれは人間界でも許容範囲だ(催涙スプレーは日本では銃刀法に当たる可能性もあるが)。ダイニチも手ぶらで行くわけではないから大丈夫というカガチの説得を受けようやく落ち着いたようだ。
「じゃあ、僕も準備が終わったら学校に行くから……くれぐれもカガチ・サタン様から離れないようにお願いね」
「わ、わかってるって」
そう言われると自分はこれから学校ではなく戦場とかそこらへんに行くのではと錯覚してしまう。いや見方によってはその通りではあるのかもしれないが。
「じゃ、通学中も離れないようにオレが抱っこして学校まで行くんで!」
「え、そうなん?」
「本当に!? ありがたいです、お願いします!」
「は!?」
また空を飛ぶのか。あのギュイーンって感じはならないのだけど……まあ2人が納得しているのから我慢するが。そんな心境に対して迷わず俺を抱き抱え空を飛ぶカガチ、それを見て笑顔でいってらっしゃいませと手を振るダイニチ。この2人思ったよりも息が合うのかもしれねえ。
こうして大空に飛び立つカガチは、高い所が怖くてまた胸にへばりついている俺を見て嬉しそうに笑った。なんだよ文句あんのか、飛行機とか観覧車とか、あとジェットコースターは行けるけど生身で空飛ぶのは慣れる気がしなくて怖いんだよ。
「……んだよ」
「いや、オレらすっかり使用人公認の中なんだなって!」
「うるせー早く学校に行ってくれ。お前が入学初日に男のゴスロリ見て鼻血吹き出して保健室に運ばれたって笑い話が広がってるからよ」
「それは勘弁してくれ……でもそしたらセイギのことも話題になってるな!」
はいはいと流し俺たち、いいや正しくはガガチだけだが、羽を羽ばたかせながら学校へと急いだ。
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