第19話 衝撃の事実
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「それで、その服のまま帰ってきてしまったんですね」
「悪魔のパッション舐めてたぜ」
このゴスロリ姿のまま家に帰された俺を見て一足先に帰っていたダイニチは一瞬ギョッとしていた。しかしカガチの屈託のない笑顔と俺が対して気にしてなさそうなのを見て一安心したのか、そのまま向かい入れてくれた。
「じゃ、おれまた修行すっから! また明日学校でな、じゃあなセイギ!」
送ってくれたお返しとして、カガチもゆっくりしてけと言ってみたが、この後稽古をしなければいけないとまたどこかに行ってしまった。勤勉だったり欲望に正直だったり悪魔ってのはよくわからねえな……自分の望みを叶えるための努力は惜しまないってことか?
「カガチ・サタンはこのまま順当に行けば次期魔王……正義くんに限らず、並大抵の悪魔では力負けしてしまいますよ」
そう言ってそっとフォローしながら呪文らしきものを唱えてゴスロリ服を元の制服に戻してくれるダイニチ。そうか、別に俺が勢い負けしたんじゃなくてどうしてもカガチが勝つ負け試合だったようだ。魔王一族の圧は半端じゃないってことだ。
「それはそれとして……セイギ呼びなんて、随分と仲良くなったんだね」
……あ、やべえな。ホンネグサの不可抗力とはいえとんでもないことにしたの思い出した。そもそもバレて大丈夫なんかな、俺に対して悪いことがあるならあの場でわかるだろうが、あいにく健康そのものだ。魔法が使えなくなるとかマオの魂が消えてしまうとか……今になって嫌な汗を感じる。ま、まずは順を追ってことの顛末を説明しなければ。そして俺に悪気がないことをなんとか理解してもらわなければ。
「うーん、協力者が早めに出来てよかったというべきか、まだ素性もわからない子にバレてしまったと考えるべきか……」
「ん?」
「どのみち僕と正義くんだけじゃバレるのは時間の問題だし、いつか学内で協力者がいてくれればなと思ってたんだけど、よりにもよって魔王一族の息子とはね」
……確かにダイニチにはこの家の再建を手伝って欲しいとかマオの影武者とか色々言われたけど、絶対にバラすなとは言われてないな。ダイニチほどの悪魔だ、不味いことがあるなら早めに忠告しているだろう。本当にいつかは信頼できる悪魔のごくごく少数にバラす気だったのかもしれない。俺のせいで不幸にも初日でバレてしまったというわけだ、ごめんなさい。
「いやいや、不慣れな悪魔界に君一人にしていた僕の責任だ。それにマオ様にお熱なカガチ・サタンでよかったよ」
そんな事はない。これに関しては少しの間でもダイニチの手元を離れてしまった俺のせいだ。あのあと心配だからとかそんな理由で保健室に残りカガチが目覚めるのを待っていたのがそもそもの間違いで、普通に逃げ帰っていればよかった。もちろんそんなことをすればカガチに武術を教わる約束も、空になれる練習も、花園デートも何もかもなくなってしまうが……別に寂しくはないからな。ただちょっと退屈になるなとか思っているだけだ。
「ううん。でもアル・ルフロル・ベルゼブブにバレるよりかは遥かにマシだ。不幸中の幸いと言っていいだろう」
アル・ルフロル・ベルゼブブ。たしか挨拶してくれて、あと決闘の審判をしてくれていた会長だ。カガチが鼻血を噴き出して、無我夢中で医務室に運んだっきり会っていないな。明日にでも昨日はお騒がせしましたって頭を下げたいところだったが、人間だとバレなくてよかったとは一体どういうことだろう。ひょっとして人間が嫌いなのだろうか、さまざまな種族が存在するんだ、人間が嫌いなのだろうか悪魔がいてもおかしな話ではない。
真剣な顔をしているその姿は嘘をついているようには見えない。怖いもの見たさでもし会長にバレたらどうなるのか聞いてみると、これでもかという追い詰められた顔で凄まれる。
「……ベルゼブブ家は暴食を司っている」
「ぼ、暴食」
「過度な食事、飲酒、そして魔力や精力の食べすぎなことを暴食って言うんだ」
「それぐらい知ってるけど」
「人間っていうのは悪魔にとってはこれ以上ないぐらいのご馳走だからね。もし暴食を司るベルゼブブ家にバレたら……その瞬間に性的に食べられるよ」
性的に?
性的に?
その、それはつまりどういうことなんだ。
「つまり、交尾されるんだよ」
……思い出した。あのイケメン悪魔じゃん。あとダイニチの口から交尾なんて言葉聞きたくなかった、カガチでよかったってそういう意味かよ。しかも食べられるって性的にかよ、いっそのこと普通に頭からバリバリ食ってくれればよかったものを……いや無理矢理犯される方がマシなのか? どちらも最底辺で決められない、どんぐりを変えてミジンコの背比べだ。
肩をがっしり掴み気をつけてねというダイニチを見て、明日からは何があってもカガチから離れないと心に決めたなてわあった。
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