第11話 作戦
「うおおぉお! 我が名はサタン! カガチ・サタン! いざ尋常に勝負!!」
カガチは炎で作った大槍を構え俺に向かってくる。やばいやばい、どうすればいいんだこういう時は。
『正義くん、
「ん!?
頭の中で響くダイニチの声に従い、右手を前に出す。すると俺の手先から水色に輝く刀身を持つ西洋風の片手剣が生えてくる、即座に握るとその剣は水の渦を帯び始めた。すげーな、これが魔法かなんて思う暇はない。すぐさま炎の槍を迎え撃つ。
「はぁっ!!! 」
「ぐっ……! 」
俺の振り上げた剣とカガチの突き下げた大槍がぶつかり合い、激しい衝撃が走る。しかしカガチの槍は折れることなくそのまま俺の肩を掠めていく。危なかった、もう少しで当たるところだった。手のひらがじんじかと痺れるように痛む。運が悪かったら剣もろとも吹っ飛ばされていたところだ、掠められただけで済んだのは幸運だと本能で察する。
「やるな、流石はオレのハニーだぜ!」
「その減らず口ごと叩き切ってやる!」
すまない思わず乱暴な言動が出てしまった。荒事賭け事問わず勝負事が始まると乱暴になってしまうのは昔からの悪い癖だ。それにオレはこんなに必死なのにカガチはヘラヘラしていて、それに腹を立ててしまった。邪魔な上半身のブレザーを脱ぎ捨て少しでも動きやすくする。
『無事かい、正義くん!』
『……なんとかあいつを無力化する方法はないのか?』
『サタン家は有数の名家だ。特に武術に関してはアスモデウス家以上と言ってもいい。魔力も魔権能も受け継いでいるとはいえ力技で無力化するのは容易ではないよ』
……それはつまり、力技以外だと無力化できるという事だろうか。さっきの一撃を受けて薄々感じていたことだが、このままではジリ貧は必死だ。何かどでかい魔術とかオレの想像をはるかに超える魔権能とやらがない限りどう考えても勝てる算段が浮かばない。なにか小賢しい手を使って勝つ方法を必死に模索している。
『マオ様の魔権能を使えば勝つことは不可能ではないだろう。多分今の彼にはこれ以上ないほどよく効くからね。でもそれにはスキが必要だ。何か戦いの中で一瞬でも彼の思考が停止してくれれば……』
『……わかった。ちょっと考えてることがあるんだ、作戦っていうのかな。ダイニチ、飛び道具が使える魔法ってのはないのか?』
そう。今さっき思いついた、例の小賢しい作戦ってやつを。これが出来れば多分無力化できる、マオの魔権能は色事に関するってこと以外の知識がないがダイニチが言うのなら多分カガチには効くんだ、そのためにはスキを出させるのがいいらしい。それを聞いた瞬間、俺がちょっとだけ考えていたアレがドンピシャにハマるはずだ。そのためには飛び道具の魔法があれば完璧なんだが……
『あるよ、サタン家の魔権能である炎と相性がいいのなら……
『わかった。因みに魔権能を発動させるのに呪文とかはあるのか?』
『……我が名はアスモデウス、の後に自由にやりたいかといえばいいよ、あとはノリ』
……ありがとう、魔権能についてはさっぱりだがまあいいだろう。お陰でなんとかなりそうだ、俺はカガチに向き直った。
『考え事なんて余裕だなオイ!! このままぶっちぎってやるぜ!』
「悪いな、お前を倒すための作戦会議をしてたんだ」
「なんだと!? このカガチ様にハッタリは通用しねえぞ!」
「ほう、なら試してみるか? ダーリン?」
「あ!? え!? 上等だコラァ!」
よしよし、今からでもいい感じに焦らせて少しずつ冷静な判断力を削いでいこう。俺は
「甘いな!
「なに!?」
まさかこんな近距離から飛び道具を撃たれるとは思っていなかったのか、焦りが見えた。しかし流石は武術に長けた一族であり、魔王の子供。最も簡単に槍で振り払われ、追撃と剣を振りかざしていた
「もらった!!」
カガチは横っ腹がガラ空きになった俺を見て完璧に勝利を確信した。それと共に俺も勝利を確信した。今こいつが見ているのは俺の腹と
槍が腹に狙いを定めると同時に振りかぶっていた
パァンー!!!
大きな猫騙しをくらわせた。
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