エピローグ ある語り手の呟き
かくして、巫女と呼ばれた少女の物語は終幕を迎えた。だが、彼女の成してきた全てが無駄に終わった訳では無い。彼女の思い描いた理想は、彼女自身が共に長い時を過ごした友達に、彼女が創った楽園に依って救われた者達の手に引き継がれて行く。そして、彼女が残したと言う箱の中にも。
レイクリット。純白の竜は、裁定の竜と名を変えて、未だ楽園足り得ぬ、かの世界をその時が来るまで護ると決めた。
アルフレート。一番信頼していた友を失った彼は、狂った様に有る研究を続ける。裁定の竜から預かりし箱を正しき時に開く為に。そして、鮮血に染まった彼の復活を望んで。
他の者達もまた、それぞれの信念を持って。そして彼女の意思を引き継ぎ、各々の道を行く。
彼女と言う要を失った最初の友。二十一の獣達、彼らは、道は違えど同じ理想を信じて、今も尚、楽園の創造に貢献している。
例え、世界を一度滅ぼそうとも。例え、時を巻き戻そうとも。例え、修羅に成り果てようとも。彼らは止まらない。止められない。
だが、彼らの物語は、また別の話。
今は唯、彼女の死を悼もう。彼女の安息を祝おう。汚れた記憶を失い、無垢へと生まれ変わって尚、只人の幸福を願った彼女の残した新たな大地へ祝福を。
彼女の物語りは此処で終わりを迎えるが、彼女が生きた、あの世界の終わりはまだ遠く。
完
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