おまけ・第十部完結記念座談会

 騎士寮の食堂にて

 ヤルン=ヤ/キーマ=キ/ココ=コ でお送りします。


 3人)お疲れさま(です)ー!

 キ)それで? 2人とも歌の練習は順調?

 ヤ)いきなりそれかよ! うるせぇ、聞くな。

   だーもう、何が悲しくてこの年で歌なんか……!

 コ)でもヤルンさん、楽師の先生に「筋が良い」って

   褒められていたじゃありませんか

 キ)へぇ、さすがは言葉を操るプロだね?

 ヤ)あぁ? あんなのただのお世辞だろ。

   ココの方がずっと上手いんだし

 コ)いえ、私は家で基礎を教わっていただけで、

   そんなに違いはありませんよ。

   それより、私達も頑張って歌姫を目指しましょうねっ!

 ヤ)アホっ、ココはともかく俺が「歌姫」を目指してどーすんだよ!?

 キ)ヤルンなら目指せるよ、痛っ

 ヤ)今ここで命を捨てたいんだな?

   ……で? キーマの方こそどうなんだ、練習は進んでるのか?

 キ)うーん、まぁそれなりに? 水と風は出せるようになったかな。

   テトラ先生のおかげでね

 コ)そちらも順調ですね! なら、あとは火と土でしょうか

 ヤ)その前に魔導書を小さくしたり軽くしたりする術の方だな

 キ)え、もう?

 ヤ)おう、テトラに教えるように言っておくから、しっかり習えよ

 キ)わー、また引っかかれそー

 ヤ)それはお前がすぐに寝ようとするからだろ

 コ)あっ、私にもまたテトラちゃんを触らせてくださいね

 ヤ)別に良いけどさ、ココは自分の使い魔を作らないのか?

 コ)……それが、どんな子にしようか悩んでしまって。

   黒も可愛いんですけど、白や三毛も捨て難いじゃないですか。

   やっぱりずっと一緒にいるなら、理想のネコにしたいですし

 ヤ)猫じゃなくて使い魔な

 キ)猫なのは決定なんだ……?

 コ)だって、一度あの柔らかい撫で心地に触れてしまうと……!

 ヤ)……撫でるくらいはともかく、あんまりべたべた可愛がらないでくれよ

 コ)どうしてですか?

 ヤ)だから、テトラは俺の魔力なんだって。……恥ずかしいんだよ

 コ)? えぇと、ヤルンさんもなでなでして欲しいってことでしょうか

 ヤ)どう聞いたらそうなるんだよっ!

 コ)私は全然構いませんよ?

 ヤ)ちっがーう!!

 キ)あはは、ヤルンのためにも早くココに使い魔が出来るといいねぇ

 コ)はい、頑張ります! あと、もちろん飛空術も!

   高いところも絶対に克服してみせますから

 キ)ふぁいとー

 ヤ)うーん、あれなぁ。うまく飛ぶにはもう一息なんだよなぁ

 キ)あれでもまだなんだ?

 ヤ)もうちっと上手く飛べるようになりたいんだよ

 キ)そういえば、書いてた序文は?

 コ)あれなら、師匠せんせいのOKを頂いたので、これまでの経緯も

   付け加えて学会に送りましたよ

 ヤ)あれだけでも形になるって言われたけど、納得いかなくてさ

 キ)駄目なんだ?

 ヤ)今のじゃあ、まだ「浮遊術」の域だからな

 コ)もっと練習すれば上達するかもしれませんし、他の方が何かアイデアを

   思い付かれるかもしれませんよ


(一息入れて)


 キ)そうそう。話は変わるけど、最近困ってることがあるんだよね

 ヤ)困りごと?

 コ)キーマさんがご相談なんて珍しいですね

 キ)それが、「晩餐会でゲストを案内していた女性騎士見習いは誰だ?」

   って話が城内で出回っててねぇ

 ヤ)げっ

 キ)ウチのメンバーも、どう対応したら良いか悩んでるんだよ

 ヤ)そそ、そんなの、知らぬ存ぜぬを通せばいいだろっ

 キ)うーん、どこまで隠し通せるかなぁ。人の口に戸は立てられないしさ

 コ)それでしたら、実は私も女性騎士の皆さんから聞かれてしまって……

 ヤ)ひっ

 キ)あー、ココは隣に並んでたから他人のふりするわけにいかないか

 ヤ)そ、それで、どう応えたんだ? まさか……っ!

 コ)いえ、安心してください。セクティア様にも言われて、

  「王族案件ですのでお答え出来ません」とお伝えしましたから

 ヤ)は? お、王族案件ん~?

 キ)わお、国家機密? 随分と壮大になったね

 ヤ)……それ、喜んでいいのか?

 キ)でも、緘口令かんこうれいを敷くにはちょっと遅かったんじゃない?

 ヤ)うぐ

 キ)それに、下手に隠すよりオープンにした方が、面倒がない気もするけどね

 ヤ)絶っ対に嫌だ!

 キ)だって所属はもうバレてるだろうし、妙な手紙が来ても知らないよー?

 コ)妙なお手紙ってなんですか? ……はっ! そ、それは駄目ですっ

 ヤ)馬鹿野郎! んなもん、速攻で燃やし尽くすに決まってるだろ!

   ココも、頼まれても決して受け取るんじゃないぞ

 コ)は、ハイ

 ヤ)っていうか、キーマこそ、そぉんな恐ろしいことを言い出すんだったら、

   その時はお前の秘密も同時公開してやるからなぁ?

 キ)ええ? 酷いなぁ、親友を脅す気ー?

 ヤ)人を売ろうとしておいて、どこが親友だ!

 コ)お、お2人とも、もう少し冷静に……

 ヤ)むむむむむ……!


(一息入れて)


 ヤ)で、俺達はいつになったら正式な騎士になれるんだ?

 コ)そうですね、見習いになって結構経ちましたし

 キ)それなら、今度試験があるって噂を聞いたよ?

 ヤ)マジで!?

 キ)ほら、前にルリュスが言ってた「入団試験」と一緒に実施されるみたいだね

 コ)どんな試験なんでしょう

 キ)さぁ、そこまでは。普通に筆記や実技じゃないのかなぁ

 ヤ)うおおぉっ、絶対に合格して騎士になるぞー!

 キ)あははは、これで落ちたら面白いよねぇ

 ヤ)あぁ!?

 キ)もし何回受けても受からなかったらどうする?

 ヤ)こらっ、縁起でもないこと言うな!

 コ)想像したくないですね……

 キ)そうなったら料理人にでも転職しようかなぁ

 ヤ)は? り、料理人!?

 キ)食堂で働いてるのを見て、面白そうだなぁと思って

 コ)今からですか?

 キ)別にまだ遅くないよ。それに同じ刃物を扱う仕事だし?

 ヤ)いやいや全っ然違うだろ!

 キ)そうかなぁ。ヤルンは受かるまで諦めないつもりなんだ?

 ヤ)あったり前だろ! つか、落ちねぇし

 キ)あぁ、ヤルンの場合は転職したら、あの2人に叱られそうだもんね?

 コ)あの2人というと、セクティア様と師匠せんせいですか?

 キ)うん。ヤルンて多分、この国で一番の魔力の持ち主だよね。

   それを、たとえば使用人なんかにしてたら、王族は周りから

   馬鹿にされるか、何か含みがあると思われるだろうからねぇ

 コ)……ちょっと怖いお話ですね

 ヤ)ふん、お姫様はともかく、師匠は「どこにでも付いていくから

   好きにしろ」ってなことを前に言ってたぜ

 コ)そうなんですか?

 ヤ)つか転職なんかしねぇし

 キ)もしもそうなったら、ココはどうする?

 ヤ)おい

 コ)うーん、騎士にはなりたいですし、王立図書館の蔵書は魅力的ですけど

   やっぱりヤルンさんに付いていくと思います

 ヤ)え……訓練したいから?

 コ)はいっ!

 ヤ)……

 キ)ブレないねー

 ヤ)いや、だから、俺は騎士になるって言ってるだろ?

 キ)ま、そうなったら自分も付いていくかなぁ?

 ヤ)ブレないのはお前の方だ。って、だから聞けよ人の話を!!


《終》


 ◇書き終えてみると、食堂でするにはキワドイ内容な気が……?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る