第4話

 波の音がする。海にいるのか?それにしては静かだな。穏やかな風さえ、吹いているように感じる。ゆっくり目を開けると、夏なのか、まぶしい真っ青な空に白い雲。寝転んでいたようで、体を起こすと、目の前には海が広がっている。また夢か。でも・・・、綺麗だな。青と白、キラキラ光る波。ここ最近、何かに心を満たされるようなことがなかったからか、余計に綺麗だと感じる。ほっと息を吐き、再び目を閉じた。瞼の裏にさっきまでの綺麗な景色が見える。また誰か、いるのだろうか。二度目だから、驚きはしないが、少し怖かった。いつかの誰かと自分を思い出すことが、あの気持ちを味わうことが。だからだろうか、目を開けることをためらっていた。それでも綺麗な景色のせいか、穏やかな風のせいか、もう一度目を開けてみたくなった。

「はい、葵くんの分ね!」

「ありがとう・・・。もらっていいの?」

「うん、葵くんが持っててね」

 奥の砂浜に、二人の男の子がいる。幼い僕の顔は見えなかったが、もう一人の男の子は、あどけなく笑っている。僕とその子は手に何か持っているのか、じっと手の平を見つめて、その目を輝かせていた。

「きれいだね・・・」

「そうでしょ?キラキラで、小さくて。貝殻ってね、ぴったり合うものは世界で一つしかないんだって。ふつうは、砂浜にある貝殻ってバラバラなんだけど、たまに、偶然二つの貝殻がすぐ近くに上がることがあるって、お父さんが言ってた」

 覚えてる。何年も前だけど、この場所には来た記憶がある。確か、親戚の家に行って・・・。

「・・・奇跡、みたいだね」

「そうだね、その奇跡の貝殻、僕たちで持っていようよ!」

「うん」

「葵くんは、明日帰っちゃうけど、いつか・・・」

 地面が傾く。目の前がぼやけて、次第に真っ暗になった。

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