*** 二〇二〇年 八月十一日 火曜日

 今日のアリスは珍しく遅刻したのだが、どこか様子がおかしかった。言葉の端々に表れてしまっているはずの覇気がどうしても感じられなかったのだ。バッティングセンターでがむしゃらに球を打とうとした時も、さほど大きくないローラースケート場で転びそうになった時も、慣れない手つきでバスケットボールをカゴに向かって放り投げていた時も、普段のアリスとはほんの少しだけ異なっていた。

 意識から何か追い出そうとしながら必死に奥底に隠そうとしているようで、ちぐはぐな感情に対して静かに対処しようとしている気がした。だがどんなふう彼女に対して声を掛ければいいのか分からなかったし、僕の勘違いによるものかもしれなかったので、このことを口にすることはなかった。

 この日、二週間ぐらい会うことはできないとアリスは言っていた。

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