03 眷属バトル(前編)

砂漠神に拉致されて砂漠のある国…恐らくは中東アジアやアフリカなどの国土の多くを砂漠が占有している国だろう…に連れて行かれ、そこで水属性魔法の練習をしたショウ。そして凡そ1日程練習しまくった後にその成果を砂漠神に披露するが、ウスメと同じように此処から去れ!…と日本の自宅へと強制転移で戻されてしまう。2柱の神から見ても、どうやらショウの魔法に対する熟練度の上昇が異常だということだろう。そしてショウに迫り来る災いが…昔からいわれていることだが「口は禍の元」という諺があるが…今回は「過ぎた力は禍を呼び寄せる」という方がしっくりくるかも知れない…元凶?…無論、ウスメだw

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- 熱い…否、暑い毎日を過ごし易くしてただけなのに… -


ショウは以前と同じように上空500mに跳び上がり、以前と同様の魔力量を消費して冷水蒸気散布した。


「よっし、今日はこれくらいでいっかな…」


すっかり冷えた空気を深呼吸をして肺に取り入れ、ふぅと吐き出す。ショウは目を開けて鑑定魔法を行使する。十分空気が冷えていて今日は十分だろうと判断。その間も徐々に高度を落としているが彼はそのまま落ちるに任せて…いきなり背中からの攻撃を受けて吹っ飛んだ。無論、布団ではなく、ショウ自身が、だ!


「げほぉっ!?」


肺の中の空気を全部吐き出した為に衝突時の咳に似た声しか出せず。今は口から吐血しながら吹き飛ばされる儘に流れる景色を眺めている。


(い…一体何が…)


辛うじて動く目を背後に動かすと…


(いぃ~っ!?…ひ、人ぉ~っ!?)


視界に捉えたのは、自分より年下と思われる少女だった。そしてその少女がショウの背中を蹴っていたのだw


「…!……!!」


何かを叫んでいるようなのだが、何故か背中で発生している衝撃波らしい轟音のせいで全然聞き取れてない。


(ぐぐぐ…つか何で空中で蹴り飛ばされなきゃならんのだ…理不尽過ぎる!!)


咄嗟に張った魔力結界でガードしたので致命傷は免れているが…


(くっそぉ~…何とか抜け出さないと何処まで蹴り飛ばされるかっ!?)


突風ウィンドを使うしかないと魔力を練って、ショウは叫んだ!


突風ウィンド・スラスター!!」


アレンジ版ウィンドだ。両足の靴底の2か所以外に背中の2か所からも噴射ポイントを設定し、その部分から最大威力で噴射を開始。現在吹き飛ばされている速度より速い速度で飛翔を開始するショウ!(ショウだけに?)


「行っっっけぇ~~~!!!」


シュゴォ~!!!


背中の肩甲骨辺りから推進用の空気が吹き出し、作用反作用の原理で背中に居る人物を引き剥がし、ショウはようやく囚われの状況から抜け出せたのだった!


「…!?」


スラスターから出る空気の音で相変わらず何をいってるのか聞こえないが、ある程度離れてからくるっと振り返ってようやく背中を蹴っていた人物を確認できるショウ。


「…矢張り女の子か。こんな場所であんなことをできるなんて、普通の人間じゃないよなぁ…誰だ、君は?」


今は足元から噴射している姿勢制御用の突風ウィンドのみなのでそこまではうるさくはない。が、これ以上高度が下がると下から発見される恐れがあるので風と火の混合属性の魔法で疑似光学迷彩を纏うショウ。尤も、ここまで接近している敵対している女の子からはやや見え難いという程度の効果しかないのだが…


「黙れ、この野郎!」


がびぃ~ん!…といきなり野郎呼ばわれしてショックを受けるショウ。いや、男だから野郎なのは間違いではないのだが…


「さっさと死ねやぁっ!」


と、溜め動作をしてから飛び蹴りしてくる女の子。


「ひょいっと」


不意打ちでなければ避けるのに何も難しいことはない空中跳び蹴りをかました女の子は、素直にそのままかっ跳んでいってキラン☆とお星さまになるのだった…(漫画的表現)


「ふぅ~…一体何だったんだ、あれは…」


取り敢えず落ちてしまった高度を戻し(大体100m程下がっていたらしい)、周囲を確認するショウ。


「うわぁ~…ここって隣町どころか隣の隣の県じゃん…」


凡そ100kmといった所だろうか。余程蹴りに威力があったのか、かなり蹴り込まれていたようだ。体感時間としては数分程度なのでどれだけの速度で蹴り込まれたのか…想像したくない。


「道理で何となく焦げ臭いと…まぁいいや。戻るか…」


これ以上衣類が焦げ臭くなるのも嫌なので体を僅かに呼吸する気体が通過する魔力結界を張り、徐々にスラスターの噴射を強めていく。そしてその間に水属性魔法のアレンジ版を唱えるショウ。


「我願う。癒しの水を此処に…」


目の前に一口分の水が現れ、揺らめいている。ショウは頭を動かして水を口に含み、ごくんと飲み込んだ。


ぱぁぁ…


やや弱い癒しの光が…水色の光がショウの体を包み込み、衝撃を受けた背中や少々傷付いた内臓が癒されて回復する。


「はぁ…痛かった」


その間も突風ウィンド・スラスターは加速を続けていたが中間地点を通過してからは噴射を停止し、空気抵抗のままに緩やかに飛行速度を低下させていた…そう、跳ぶではなく、飛んでいるのだ。


「長距離移動はこっちのが楽だからなぁ~。開発しておいて良かったわぁ~」


ショウはまたもやアレンジ版の魔法を編み出し、自ら運用し実績を積み上げていたのだった!…それは直属の契約神にも報告が成され(但し、ショウ…眷属本人は報告したという意識は無い。あくまで契約神と眷属の間の繋がりによるものだ)、契約神の功績にもなっている。そう…あの、下っ端で最底辺のウスメの!…これがどういうことか、神界では物凄いニュースとなり激震が走っているのだ!…あの!…下っ端で最底辺のウスメ(大事なことなので2回書いたw)の眷属が、この数千年もの間…新しい魔法がとんと開発・運用されてなくて久しいというのに、短期間で幾つもの…それも初級ともいえる魔法の応用と混合、そして熟練度マックスで上級魔法に匹敵する極シリーズすら新しく開発・運用しているという事実に…神界は混乱を極めていた。



神界がそんなことになってるとは露知らず、ショウは自宅のあるウスメの守護地域へと戻った。だが…


がきぃぃんんん…!


いきなりの攻撃に弾き飛ばされるショウ!…彼は咄嗟の事で姿勢制御も儘ならず、大き目の公園の敷地へと叩き付けられる!!


「うぉっと!?」


そして辛うじて地面に叩き付けられる直前にくる!っと1回転し、両足で地面に踏ん張って速度を落とす…そして、靴底の抵抗値を上げて(土魔法)辛うじて死なない程度のダメージで緊急着陸に成功したのだった!


(まさか想定内の状況になるとはなぁ…まぁ、靴底の地面との抵抗値を上げるのにも成功したし、実験はまずまずかな?)


そして、まだまだ危険度は下がっていない。先程から危険感知が警告を発しぱなしなのだ!


「上?…いや!」


両腕に土型成型クリエイトで成型し、魔力結界で覆った即席のシールドを生成。装備して真横からの攻撃に備える。


ぎゃりぃぃんっ!!!


何故か金属音のシールドが削り取られるような不協和音が鳴り響き、欠片が舞う様が見られ…反動でやや吹っ飛ばされたショウが見たモノは…先程の女の子だ。


「痛ぅ…一体、何なんだ、君はっ!?」


無言で体勢を整える少女。名乗らない為、ショウは仕方なく鑑定魔法を行使する。ウスメがいうにはマナー違反だから他人をみだりに鑑定するなとはいい渡されているが、こうも敵対行動を取って来る相手なら問題無いだろうという判断だ。何処まで鑑定魔法でその正体が判明するかは不明だが、名前と所属くらいはわかるだろう。



【敵対する少女の鑑定結果】

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◎名前:メイ(偽名)

◎所属:大陸神

◎状態:敵対

◎備考:契約神は大陸ではそこそこの地位があるが長年の間に堕落した結果、ブービー賞レベルの地位に堕ちている。メイは下から数えた方が早い地位から上を目指して頑張っている眷属だが、わずか数日で追い越されたショウに殺意を抱いており、ショウの抹殺に来日したと見られる(唯し、空を跳んで)

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「うわぁ…」


備考の余りの詳細情報にドン引きのショウ。そして命を狙われる理由が余りにも余りな内容に更にドン引きのショウ。早い話し、ウスメの地位を向上させた眷属のショウを亡き者にすれば再び最下位ではなく、下から2番目の地位ブービー賞に返り咲ける…と考えたようだ。


「…こんな理由で殺されたら、俺って浮かばれなくね?」


そして、既に地位向上してるウスメの眷属たるショウが開発・運用実績を積んだ数々の新魔法はショウを殺害したからといって消えるものではない。既に多くの神たちが誰にでも行使できるか、どの程度の魔力で発動するかなどの検証を進めており、消し去ることなどできないのだ(個人空間パーソナルスペースを利用すれば、その程度の作業は現実時間ではほぼ時間経過無し。保有魔力にもよるがそれ程多くの日数を必要としないだろう)


チラと目前の怒れる小娘を見れば、いつでも飛び掛かって来そうな雰囲気だ。唯、馬鹿正直に特攻すれば先の二の舞となることがわかっているから迂闊に飛び込んで来ないだけなのかも知れない…


(はぁ、どーすっかなぁ…)


ウスメの持っていた個人空間みたいなモノをショウも所持していれば安全にバトれるだろうが…


(生憎、そこまで魔力を保有してないからなぁ…)


嘘である。既にショウの保有している最大魔力量はウスメの数百倍となっている。個人空間の作り方と魔力の貯蔵方法がわかれば、すぐにでも砂漠神のモノにまでは至らないが、ウスメのモノより上等な空間を得られるだろう。


(永続空間は無理だけど、一時的なモノなら創れるかねぇ?…確か………)


数秒の間、視線は固定したまま考え込むショウ。ウスメと砂漠神の個人空間を記憶の中で比較し、それぞれで共通する部分を抽出。足して2で割ったような似非空間イミテスペースを何となく構築する。空間魔法は既に初級魔法ではなく、中級以上の難易度だがショウは何となくで把握してしまった。


「貰ったっアル!」


何故か日本語で発音したメイが、音を置いてきぼりにするような急加速でかっ飛んでくる。若しかすると大陸語で喋っていて、自動翻訳魔法とかで脳に届いているのかも知れないが…そんな検証をする時間はショウには何処にもなかった。だが…


「ふぅ、どうにか間に合ったな…」


たらり、と流れ落ちる汗は額から落ちて地面にぽとりと丸い僅かなお湿りを施した。だが、その汗を流した本人と…目の前までかっ飛んで来た少女は何処にも居なかったのだ。



- ショウの似非空間(イミテスペース) -


「…どうやら成功したようだな」


取り敢えず、ショウ以外の者の魔力と物理を用いた全ての敵対行動はできないように設定しておいた。ショウ自身は全魔力の半分程を空間に注ぎ込んでおいたので、1日くらいは相手は何もできないだろう。できるのは落ち着いた上でのお話しくらいだ。敵愾心てきがいしん剥き出しの間は呼吸くらいしかできないようにも設定しておいた。可愛らしい女の子とはいえ、敵愾心剥き出しで罵詈雑言を浴びせられるのは流石にクルものがあるからな…


「…!…!?」


先程から何やら叫んでいるようだが彼女の口からは声は出ていない。敵意剥き出しの儘の為、その可愛らしい口からは罵詈雑言しか出てないことは確かだろう。だが、このままでは埒が明かない為、取り敢えず敵意だけは下げておきたい所だ…が、俺は異性の扱いなんてわからない。同性ですらぼっち街道まっしぐらだった為にどう話していいかもわからないのだ…あぁ、異性でもあの天然おバカっぽい契約神のウスメとか、同性でも目上の者に対しては、まぁ…普通に会話くらいはできていたからな。最初の頃の砂漠神とかも、まぁ何とかな…


「おい、そこの」


びびくぅっ!?…とビビる少女。肩が跳ね上がり、汗がだらだらと流れている。明らかに実力が上のこちらに恐怖していることがわかる。


(ま、あれだけ蹴られてるのに大したダメージ受けてるように見えんからな…)


受けたダメージは癒しの水で回復したから、肉体的なダメージは無い。衣類がやや焦げてるがそこまで見る余裕は無さそうだ。俺は暫く考えていたがタイムリミットがあるこの空間では時間を掛けるのは得策ではない。やがて決心して再び口を開く。


「こちらの質問に答えろ。大人しく受け答えするというのなら、声を出せるようにしてやる…YesNoか?…是なら頷け。非なら…」


そこまでいうと、途端ガタガタ震え出して急いでコクコクコクと頷き始める少女。威圧なんてスキルは持ってないが、もしやってたら股間から水が溢れ出す勢いでビビりまくっているのがよくわかる。とそこへ念話が入る…直属の上司、もとい、契約神のウスメからだ。


〈あんたそこで何やってんの!?〉


どうやらお怒りの様子だが何故俺が怒られている?…相手から手を…否、足を先に出されたのだが。そして未だこちらからは攻撃らしい攻撃をしていない。せいぜい、鑑定したことと似非空間に導いたくらいだ。無論、この空間内でも攻撃はしてないんだが…まさか、質問したことで口撃したということでお怒りなのかっ!?


〈はぁ…あんたって頭はいいけど本当アホね…いいから相手を開放しなさい。その子の契約神から怒鳴られまくってて手が付かないんだから!!〉


契約神というと、大陸神って奴か。ひょっとしてお隣の…いや半島の方ではないが某C国の何処かを守護している守護神って奴か?


〈そうよ!…ああ、もう!…鼓膜が破れる…訳じゃないけど!いいから急いで!!いいわね?…怪我なんてさせないようにしなさいよ!?〉


それだけ叫ぶとウスメは念話を切った。どうやら目の前の少女にも念話が…契約神から届いてたらしく、大人しくなっている。


「ちっ…しゃーねーな。いいか?…この空間を閉じる。そうすれば俺とお前、空間から出ることになるが…攻撃して来たらタダじゃすまさないからな?」


コクコクと頷く少女。ショウは「よし…」と呟くと(空間閉鎖)と脳裏で呟く。すると、見えている風景が白っぽい空間から先程まで立っていた公園の…やや破壊跡のある広場へと戻っていた。


「こらぁっ!貴様ら!!何処から入って来たかっ!?」


いきなり警官のピピーっ!という警笛と共に誰何の声がしてビビるショウ。


「でぇっ!?…あ、そういや俺の似非空間って時間停止までは実装してなかったっけ…」


なんて口籠っていると、あの少女…メイは目に見えない速度でかっ跳んで逃走してった。


「あ、手前ぇっ!」


きたねー!と思いながらショウも同様の手口で逃げ出そうとして…空中で蹴られて再び地面に…泡を喰って逃げ出そうとしてたので対処が間に合わず、そのまま激突して意識を失うのだった…チィ~ン…(死んでませんw)



- 自宅にて… -


結局、勝手に検分中のエリアに侵入していた不審者という扱いだったが、大怪我をしてたということで一旦は病院に搬送され、手当てを受けた後に今度は所管の警察署に移動。特に悪気は無く、興味津々で中に入ったら倒れて怪我をした…という内容で話したショウは…厳重注意をいい渡され、凡そ3時間程で解放された。幸い前科も付くことなく、後で保険証を病院に提出されて10割の医療費を3割に減額して貰って…まぁ現金は持ってなかったので母親から借りて支払ったのだった。そして…呼び出された母親と一緒に帰宅した所だ。


「何してんだかね…」


呆れた口調で怒られるショウ。否、呆れてるだけだが…


「ごめん、母ちゃん…」


就職浪人で居候状態で肩身が狭いのにこんな世話になってしまい、明らかに気落ちしているショウ。人間社会では色々と目立つとこんな面倒が待っているのだった…尤も、傷などは死ななければ例の力でどうとでもなる。本来なら全治3箇月クラスの全身打撲と骨折だったが、咄嗟に癒しの水を行使して軽度の打撲と表皮の怪我…少しの出血だけに留めておいたのだ(全くの無傷だと変に疑われるだろうというのと、流石に短時間では完治も難しかったのもある)…尤も、湿布と包帯と処置料だけで10割負担の状態で数千円が吹っ飛ぶ結果となったのだが。日本の医療費は高いのがわかるエピソードでもあった…


(もし怪我を元の儘にしてたら…一体どんだけの医療費が吹っ飛んだんだろうなぁ…)


きっと1箇月分の食費どころでは済まなかっただろう。あな恐ろしや…



さて、自室に戻った頭にだけ包帯を巻いたショウ。そして、見知った白っぽい空間へと召喚される。


「…やっぱりか」


母親や見知らぬ他人と一緒の所で召喚しないだけは気を使ったのだろう。目の前にはショウの契約神…ウスメがムゥ~…と怒気を孕んだ顔でこちらを見ていた。


「やっぱりか、じゃあないですよ!…何で大陸神の眷属と勝手にバトってるんですかっ!?」


いや、そんなん知らねーし…あっちから勝手に突っかかって来ただけだし…と投げやりに言い返したい所だが、それ以外いいようがないのでどういおうかと悩んでいると、


〈あー、こちら、ウスメ殿の個人空間で宜しいか?〉


と、どうにも日本語慣れしてなさそうな自動翻訳したかのような平坦な感じの中年男性ぽい声色の念話が響いてきた。


「え?…大陸神さま、ですか?」


さっきまでの怒り心頭の声は何処に行ったやら、ウスメがびっくりしてやや腰が低そうな声色で反応する。


〈…うむ、ウスメ殿か?…先程はうちの娘っこが迷惑を掛けたようなのでな…詫びをいいに来たのだが…取り込み中のようじゃな?〉


「あ、いえ、その…」


目上の神さまなんだろうがウスメは緊張して返事は言葉になっていない。その神さまの眷属が逆恨みだか何だか知らないが、勝手に殺しに来たんだけどな…事実、こちらが一般人のままだったら最初の撃で確実に胴体真っ二つになっておっちんでたぞ?


(殺人未遂だけどどーすんだろーなぁ…この始末)


実際に全身打撲に複雑骨折してたからな…と思い出すと、怒りでムカムカしてきたショウ。魔法で防御とか癒すとかしてなかったら、今日が命日だったわ…と、更に怒気を孕みだす。そんな様子に気付いた神2柱がビクっ!?…となる。


「ど、どうしたの?…ショウ」


〈ふむ…その怒気を見るに、余程うちのメイに痛い目に遭わされたようだな…〉


2柱に話し掛けられ、「あ、やば…」と怒気を無理やり押し込め、


「あ、いえ…まぁ、不意打ちで死にそうになりましたけどね…あはは」


と、苦笑いで返すショウ。可能ならば泣くまで擽り倒してやりたいくらいだが…(一応年下の少女のようなので加減を忘れない紳士ジェントルメンだった!w)


〈そうか…ならこうしよう。気の済むまで奴をお貸ししよう。それこそ、下女の扱いで構わない〉


背後で「え~っ!?そんな殺生な!お父様!!」という少女の声が念話で届くが…


(念話って周辺の声を拾ったっけ?…んな、テレワークのマイクじゃあるまいし…)


と、念話の概念をガラガラと崩されるショウ…後でウスメに聞いた話しでは、同じ血族や血筋の者だと聞こえたり相手に筒抜けになることもあるそうだ…ってことは…


(眷属となってるけど、メイも神の血族か神の娘?)


「…そうよ。義理の父親だけど、一応同じ血筋よ。メイよ」


と、ウスメの個人空間に突如として現れる大陸の神族、メイ。


「えーっと…ウスメさん?」


「…何よ」


「個人空間って勝手に出入りできるんですか?」


「…相手が格上だと割と出入りできるわね…」


「個人空間の個人って意義は…?」


「うるさいわね!」


哀れウスメ、神の地位が上になっても基本的な格が上がらないと意味が無いといういい実例でもあった…


「ふん!…いいからさっさと契約しなさいよ!!」


「契約って?」


ウスメとショウが漫才をしているとメイが怒鳴りながら書類をぶん投げて来る。


「えーっと…これ、いいのか?」


横からショウの手から書類を奪ってウスメも確認する。


「一時的なものだしいーんじゃない?」


イライラしながらメイがまだか?…と睨んでくるが…書類の内容は「隷属契約書」であり、「ショウが満足するまでメイを下女としてどう扱おうと構わないが解放するまでショウの身の回りの世話をさせること」…とあった。


「どう扱おうが構わないって…」


メイがビクッ!…と肩を跳ね上げてショウを睨む。その眼差しは、「変なことをしたら殺す!」という殺意に塗り潰されていた…いや、最初からメイにはショウに対して殺意しか無かったようだが、今は更に濃い殺意がその目に籠っているようで…


〈あれ、絶対人間界に持ってったらダメな奴じゃん…〉


〈そうねぇ…その辺に埋めとく?〉


〈それは名案ですけど…殺しちゃダメですよ?〉


〈そ、そんなんしたら、私が大陸神に分解刑に処されちゃうわよ!…大丈夫、しっかり時間停止処置をしてから埋めとくから!〉


〈あぁ、それなら安心ですね!…でも、何処に埋めたかわからなくなってのは止めて下さいよ?〉


…結局、メイには起こすまで永久に熟睡する薬を混ぜたお茶を飲ませられて用意されていたベッドに眠り姫として過ごすこととなる。そして、半年くらい後に思い出したショウに起こされて大陸神の元へ送り返されることになる。メイは大陸神の元に帰ってから1週間後、与えられた使命を何1つこなしてないことと、ショウの魔法発明の秘密を暴いてないことに腹を立てられ、眷属を首になって露頭に彷徨うこととなる。その後、彼女がどうなったのかは、また別の話しとなるだろう…


「はぁ…まさか大陸からの刺客に襲われるなんてなぁ…おお、怖い怖い」


メイ急襲から半年の間、ショウがどれだけ腕を上げ、新たな魔法を獲得したのか…それは次の話しに譲ることとしよう!


━━━━━━━━━━━━━━━

実は、ウスメは初級魔法は普通に達人級に扱えますが、中級以上はほぼ扱えません。つまり、ショウが普通に覚えたいと思っても契約神が扱えないのです(個人空間パーソナルスペースだけは別ですが…空間魔法の中級魔法なので)

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