02 駄女神ハザード?(後編)

体力不足で全部書き切れなかったので続きをカキカキ…

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- ショウ、地上で鍛錬開始 -


衝撃笑劇ウスメ駄女神との邂逅の後、ショウは眷属の身分と神力を無理やり押し付けられた。そう…本人の承諾も無しにだ!


「ま、便利だからいっけど…」


風属性の初級の魔法は半日で極めてしまい、初級だというのに威力と精度はまるで最上級魔法のようだと褒めら驚かれた…というよりはドン引きされたといっていいだろう。続けて水属性魔法も…と思ったらさっさと帰れ!…といわれて現世へと戻って来たのだが…解せぬ。



「まぁいいや。あの白い空間は女神の魔力で満たされたプライベート空間っていってたっけ…」


道理で消費した魔力がすぐ補充されるし、幾ら強力な魔法をぶっぱしても何ら影響が出ない筈だ。だが、恐らくはそんな荒い使い方をしていたので充満していた魔力が減ったのだろう。水魔法の練習をすると今度こそ枯渇しそうなくらいには…


「仕方無いな…何処か安全そうな場所で練習してみたいんだが…」


と思った瞬間、頭の中に響く声がした。


〈君…ウスメの弟子、かい?〉


「弟子?…いや、眷属って聞いてたけどな?」


うっかり声に出して反応してしまったが、今は母親は買い物に出掛けていて1人っきりだ。まだ戻る時間でもないので…まぁ問題は無いだろう。


〈今、水属性魔法の練習にいい場所を…といっていただろう?〉


「…まぁそう呟いていたが。君は誰だ?」


どうもウスメと念話する感じと違い、無理やり介入して来た…といった感覚が強い。僅かにノイズが乗っているようなのでそう感じるのだろうが…


〈あぁ、すまなかったね。我は砂漠の神だ。まぁ、余り世間に認知されてないローカルな守護神さ…〉


(…ひょっとして、こいつがウスメを毎年負かしている勝負強い外国の神って奴か?)


いきなり敵対しているであろう神?…から接触されて警戒度が上がるショウ。弟子を取ったか?…と聞かれて眷属と答えたのは不味かっただろうか?…というのもあるが。


〈…そう警戒しなくともいいぞ?…神の弟子なり眷属なり、守護するモノの権能が上がるのは世界にとっては善きことだからな?〉


…と、一方的にペラペラと話し掛けられたのだが…。要は、神と悪魔みたいな具体的に敵対している関係なら兎も角、守護地域を与えられてそこを守護している神同士は敵対することは…個神的に余程のことがない限りは…無いそうだ。


(じゃあ、何で毎年このクソ暑い季節にクソ暑い気候が…亜熱帯(笑)…とまでいわれる状況になってんだよ!?)


…と思ったのだが、全ては人間の自業自得らしい。彼の地域とこちらの空気を1箇月程入れ替えた所で、1℃くらいしか変動しないとか…


(いや、その1℃も俺は我慢できないのだが…)


取り敢えず、練習の場は提供してくれるという話しなので…そのご厚意に甘えることにした。魔力もどんどん使ってくれていいという話しだったし…はぁ。



- ウスメ、ガクブルする -


(何なのあの人間…一体何なのぉ~!?)


毎年高騰する気温。それは私の権能では抑えきれない。私の権能は…せいぜい風と水を少し操れて、後は舞いによる祈祷で上位神の権能に働きかけて祈りを届けて現実のものとするのみ。


(聞いた所、たったの半日であの風魔法を…人間だったら人生を掛けたって辿り着けない領域よ?…それをあの青年…ショウは………)


教えた3つの風魔法。突風ウィンド風弾ウィンドバレット風矢ウィンドアロウだったかしら…突風以外は1回づつ見せただけ。突風だけは初めての魔法の行使だからと、細かく丁寧に教えたつもりだけど…


(たったの半日で極めてるって、何かの冗談!?どう見ても災害級の威力だったし、消費魔力も達人級マスタークラスを越えてたわよね…あれ)


魔法を使い始めた初級者では有り得ない保有魔力量。そしてそれを扱う精度と魔力。1度に放出できる魔力…あの突風・極とかいったかしら…あれ1つで最底辺の神である私の保有魔力の数倍を消費する。


(道理でプライベート空間の貯めに貯め込んだ魔力が激減してた訳ね…)


引き籠ってる間に自然漏出して貯め込んだ魔力が激減していた原因がこれだ。もし、水の魔法の練習を…なんて許可してたら…


(この空間が消滅の危機だったわ…危なかった!)


今は消費が無い為にゆっくりと回復しているけどまた此処に来られた日には…守護神なんてやってることすらできなくなるかも知れない。拠点を失った神は、守護の任から解かれる可能性もあるし…


(下手したら降格されて神じゃなくなるかもだからなぁ~…)


前世は踊り子…つまり神前で踊る巫女だった私は、降格した場合どうなることやら…下手したら成仏して輪廻転生の渦に巻き込まれて終わるのかもね…


(はぁ…ま、別に神やってたからっていいことはなかったし、それもまた生なのかな…)


元が人だった私は、諦め癖がついてるようで…まぁ今は魔力というか神力を回復させる為に、白い空間プライベートで惰眠を貪るのだった…べ、別にサボってる訳じゃないよ!!



- ショウ、砂漠の国に転移して魔法の訓練に没頭する! -


「ここが…」


好条件に誘われて日本を飛び出し、砂漠の国へと誘われたショウ。ちなみに砂漠の守護神の名前は教えて貰ってないが、練習を終えたら帰してくれると保証してくれたので


「…まぁいっか」


と軽くスルーした。


〈軽いね、君…まぁその方が面倒が少なくていいんだけど…〉


相変わらずSOUND ONLYな砂漠の神。その内に映像が出たかと思ったらナンバーとSOUND ONLYって刻まれたモノリスでも出てくるんじゃないかと少しワクワクしているショウが居るが、その思念を感じたのか


〈あ~…そういうパクリはやらないから〉


と、あっさり言い放たれてガックリしていたのだったw



「じゃ…まずこの砂漠に水でも打ち込んでみっか…」


暑くて熱くてヤバイ…ので、まずは水出しウォーターを馬鹿の1つ覚えのように打ち出していく。コツを掴めば水量とか勢いとか規模とか色々アレンジできるだろう…と思ってたのだが。


「飽きた…」


流石に100回やって100回とも同じ水量がぴゅーっと出るだけでは飽きる。どうやら水属性系列は近くに水が…それも現物が無いと魔力から産み出される量には限界がある模様。無論、魔力から産み出される水が…さっきから100回打ち出してる水だが…そこ砂漠に溜まってれば、多少の違いはあるのだろうけども…


「全部吸い込まれて砂漠の中か、蒸発しちまってるもんなぁ…」


途中で水球ウォーターボール水矢ウォーターアロウも試したが、基本的な量とか威力とかは不変だった。


「はぁ…こりゃあ他の属性魔法も使ってみなきゃ、かなぁ?」


眷属となった瞬間に全属性の魔法はしっかりと身に付いているのだ。基本性能でならどれも発動は可能だろう。何しろ、保有魔力とその魔力精度に関してだけは、風魔法の練習で上がり切っているし、マスターしているのだから…


「じゃ、まずはっと…」


ショウは何処までも続く砂の海を見回して、水を吸い込む砂をどうにかしようと考え始めた…



「うは…砂漠の夕焼けって目にきちぃ…」


腕で目を庇うショウ。その腕も顔もすっかり砂漠の住人と見紛うばかりに日に焼けていた。流石に紫外線から肌を護る術は覚えてないのだが、可視光線を弱体化する闇属性の魔法を覚えてからは肌がこれ以上焼けないようにはなっていた。目だけはそれで覆うと何も見えなくなる為に研究の余地はあるだろう。


「これの弱点って、他人から見ると真っ黒な黒人みたいに見えるんだよな…」


何せ闇魔法だけに覆っている部分は真っ黒な訳だ。尤も、解除しても日に焼けた肌は戻らない。回復系統の魔法を覚えるか、例の砂漠の神に癒して貰うかだが…


「砂漠神、出てこねーなぁ…」


(流石にそろそろ家に帰らないと母親が心配すると思うのだが…いや、時差を考えると向こうはもう真夜中か?)


どうすべぇ…と悩んでいたら砂漠神が現れた。


〈何アホなことで悩んでいる?〉


「いや、流石に真夜中まで帰宅しないと親がな…」


〈あの駄女神ウスメに聞いてないのか?…プライベートスペースでは時間経過しないということを…〉


暫く硬直するショウ。


「…最初からいってくれよ。どうやって帰るか悩んじまったじゃねーか…つか、こぉんな環境でよく落ち着いていられるな?」


〈砂漠神だからな。ほれ、飯だ〉


砂漠神は乾いたパン(ナンのようなもの。味は素朴な塩味とだけ…)を2個放り投げた。


「うわわわっ!?…食べ物を粗末に扱うなよ!」


ショウは土型成型クリエイトで創っておいたコップにウォーターで水を入れ、喉を潤すとパンをゆっくりと齧り始める。実に半日ぶりの食事だった。


〈魔力が使い放題といえば、そこは神のプライベートスペースだろう?…何故気が付かない?〉


「いやだって…そういう地形なのかと…」


砂漠は魔力が枯渇してしまった地であり、逆にそんな所に行けば魔力が尽きてしまえば水が尽きた砂漠旅行者と同義である。所謂「なるべく行ってはならない土地」…ということになるのだ。どうしても砂漠を渡る必要があれば、準備は十二分にするに越したことはない。


〈それで?…何かいうことはないのか?〉


「え?あ…飯、ありがとう」


〈…まぁいい。今日はそこで寝ておけ〉


イケメンの砂漠神は自分の姿を晒したのに無反応なショウに溜息を吐き、さらっと手を振った先に出現したテントを指差し、ショウに休めと進言する。ショウはいわれた通りテントにノロノロと歩み寄り中に設えていたベッドに転がり込むと、夢も見ない深い眠りにつくのだった…



- 翌日…といえる程の時間が経過 -


「くあっ…あぁ、腹減った」


寝床で伸びをしてから脱力して独り言ちるショウ。


〈起きてからの第一声がそれか…〉


イケメン砂漠神が音も無く佇んでいて、いきなり声を掛けられてビビるショウ。


「びびび、びっくりしたぁ…つかいきなり声を掛けるなっての、心臓が止まるかと思たわっ!?」


微妙に関西イントネーションで突っ込むショウ。彼は関東生まれで関西の出ではない。


〈それでもう帰るか?…それとももう少し練習をしていくか?〉


ショウは1も2もなく、


「もう少し練習していく。まだ全然モノにしてないしなぁ…」


砂漠神はゆっくりと頷くと、


〈わかった。朝飯だ〉


と、再びパンいう名のナンぽい塊を2つ放り投げる。


「ちょわっ!…だぁ~かぁ~らぁっ!…食いもんを粗末にすなっての!!」


ぞんざいに投げられたパンを辛うじて両の手で受け止めてショウは絶叫するが、当の本神は影も形も無かったのだった…



- 更にお昼時まで時間が進む… -


「やっぱりな。土型成型クリエイトで砂に水が吸い込まないようにして水溜まりを造っておけば水属性魔法の発動がかなり楽になるな…この場所って空気中の水分含有率が極端に少ないせいで、水属性魔法の発動がかなり困難ってことだな…」


今は面倒なのとお手軽なのでプールを造っておいてそこに水を貯め込んで練習しているが、いずれ同じような場所ではそんな事前準備をする余裕が無いかも知れない。空間魔法で扱える異次元収納アイテムボックスを利用してその中に水を入れておく…という運用も視野に入れて、空間魔法も練習しておく必要があるだろう…


「さて…腹も減ったし、あれを試してみるか」


使うは幾つかの魔法。但し、属性魔法なんて上等なモノではなく、念動魔法と空間魔法だ。空間魔法は視界を確保するだけに使い、メインは念動魔法。いや、他に有効なモノが思いつかなかっただけだけどな…


(眷属になって幾つかの魔法がインストールされたのはいいんだけど、やっぱ高等なモノは覚えさせて貰えないのかねぇ…)


魔法を扱えない人間としちゃ魔法が扱えるだけで上等だとは思うが、矢張り初級と呼ばれる魔法しか使わせてくれないってことなんだろう。0からモノを生み出すような魔法は流石に覚えてなかった。


「さて…と。空間魔法の視覚拡大発動っと…。次は…」


念動魔法で極微細なモノを動かす。操作して次々と配置していく。そして没頭したショウが組み立て終えたモノとは…



〈アホか?〉


「え…そんな褒めるなよ。照れるぜ…」


砂漠神が現れたのはあれから8時間程だろうか。空腹で倒れてるかと思いきや、満腹で倒れてるショウがそこに居た。見覚えのない機械の傍にだ…


〈褒めてないわい!…ったく。眷属如きがこんなモノを創れる筈が無かろう!〉


「でもできちゃったしなぁ…まぁこれからはあのナンのお世話にならなくて済むな!」


別にショウはフードプロセッサーを創った訳ではない。素材を投入すればその素材以下の存在価値の別のモノを創り出す、いわば等価交換装置魔導具を創り出しただけだった…内部的にはメカ機械マギ魔導が共存している、過去に類を見い出せない存在だが…


〈あれはナンではない。パンだ…〉


砂漠神がブスっと反論するが、ショウは(どう見てもナンだろ、あれ…)と思いつつ特に反論はしなかったw


〈(しかし…眷属如きがトンデモない物を創りだしたな…)〉


ショウが創り出した等価交換装置は、恐らくはその辺に無尽蔵にある砂を入れて食器から食料までを創り出していた。無論、食料は当人がほぼ全部食い尽くしていたのだが…


〈(この我が領域パーソナルスペースの砂は一見して唯の砂に見えるが…実は砂に見せかけた魔石の欠片だ。その正体を知っていればそんな食い物に置換する訳がないだろうからわかってないのだろうなぁ…)〉


砂漠神の個人空間ではウスメとは違い、霧散しないようにと固形の魔力…魔石を砕いた欠片として貯蔵していたようだ。それを物質置換が行える等価交換装置魔導具でその価値以下のモノに交換していたことに怒るどころか何処から突っ込んでいいのやらと困惑していた。本来なら、消費した魔石の欠片は砂漠神の魔力1年分相当量なのだが…


〈…まぁそれはいい。さて、ショウ…といったか。水属性の魔法はモノにできたのかね?〉


見た所、風以外の属性魔法も幾つか熟練度が上がっているようにみえるが…


※ステータスを見てるのではなく、身に纏っている魔力の色の濃さなどで判断している


「あぁ!…練習というか訓練の結果を見るか?」


自信満々に返すショウに砂漠神は頷く。まるで、


見せてみよ…


と、上から目線で偉そうにw



- そして砂漠神はそっと個人空間から現実空間の砂漠へと舞台を移す… -


「じゃあ、まずは水出しウォーターからだな。出力は最大でいいか?」


〈任せる〉


どうせ少し勢いの増した放水レベルだろうと高を括っていた砂漠神だが…


「我求む。此の砂漠を全て濡らす水の恵みを!」


〈何っ!?…ちょっと待…〉


アレンジ版の水出しウォーターの呪文詠唱を始めたショウにぎくり!?…と凍り付き、慌てて止めようとするが既にコマンドワードは解き放たれていた…


水出しウォーター・極!!」


急に辺りが暗くなり、それまでカラっとした満天の快晴が雨雲で埋め尽くされ、気温が急激に下がってくる。そして有り得ないことに乾期の砂漠にぽつぽつと雨が降り始め、やがてバケツをひっくり返したような豪雨となって恵みの雨・・・・がショウの居た地点から半径10kmに降り注ぐのだった…


〈ちょっと待てぇっ!?〉


という砂漠神の必死の突っ込み…否、停止にも掛からわず、豪雨の音で聞こえてないショウは次の句を口にする。


「じゃ、折角水がありますし、次の魔法もお披露目しますね?」


〈…なに?〉


ショウは右腕を銃を模した親指を立て、人差し指を前方に伸ばして他は握り込んだ状態にして前方に伸ばす。


「我望む。冷酷な一撃を。鮮烈な連弾を。この指先に込めて撃つ者なり…」


きゅうううん…


と、2つの魔法陣が指先に形成される。1つは一撃必殺の絶対零度の氷弾丸射出の。1つは秒間100連射の水弾射出の魔法陣だ。


氷弾フロストバレット・極!!」


どごぉぉおおんんっ!


真っ白い氷の破片を撒き散らしながら、一直線に白い軌跡を曳いて魔法陣と同じ幅。凡そ10cmの砲弾が発射され、凡そ20km先の砂漠に突き刺さって白い柱を乱立させ、数秒後に白い爆光を撒き散らしてから飛び散った砂を凍り付かせて歪なオブジェを形成する。


水弾ウォータージェットバレット・極!!」


1秒に100発の水弾を発射する魔法陣が指先から僅かに射線を揺らしながら放たれる。それは3秒もすれば魔力を失い、300発もの水弾を全部吐き出した後に消失する。その射線の先を見れば、先程形成された歪なオブジェ…砂が凍った物体を全て打ち砕いて四散させていた。


〈な…な…〉


砂漠神は慄き、何かを口にしようとするがその言の葉は喉まで上がってこようとせず。唯々意味の無い音を吐き出すだけの存在と成り果てていた。


「ラスト…標的を形成するんで砂をちょっち弄りますね…土型成型クリエイト土人形ゴーレム!!」


先程と同じ凡そ20km先に人型の土人形が形成される。傍で見れば身の丈5m程でずんぐりむっくりと形容できる感じのゴーレムが佇んでいるだろうが、流石に20kmも離れていると米粒程にしか見えない。人間なら望遠鏡でないと視認するのも難しいだろう。


「我望む。彼に届く力を。彼を貫く力を。彼を斃す力を…」


ぼわぼわぼわ…と周囲に魔法陣が描かれる。その数は3つ。直径50cmの魔法陣がショウの前方に浮かび上がり、固定される。前方から戦艦好きが見ていたらこんな幻視をしていただろう…


「あはははは…戦艦大和の46サンチ砲が見える…」


と。


水矢ウォーターアロウ・極…装填」


どこかで何かが装填される音が聞こえる。周囲に溜まっていた雨水が僅かに減ったように感じられる。


「狙い…」


魔法陣が標的を定めるようにその向きを微調整する。まるで砲塔が旋回し、射出角度を調整するように微妙に仰角も上がって行く。


発射てーっ!!」


術者を護るように瞬時に魔力障壁が展開する。その直後、


どどぉぉおおおおんんっっ!!


無論、砂漠神も魔力障壁の中だが顎が外れたかのような顔で放心し、神さまの顔として見られない形相となっていた…


射出された3つの砲弾は…数秒後にゴーレムに着弾して見事粉砕し…クレーターのような有様となっていた。本物の46サンチ砲弾でもこうはいかないだろう…と思う(砂漠に撃ち込まれた事実は多分無いだろうから比較しようもないと思われる)尚、氷弾の大型化した砲弾だが着弾と同時に内部から爆発はさせるが妙な氷の彫像は形成する機能は無い。また、それらの機能は魔法陣形成時点で書き換えられる為、例えば水属性弾の癖に超高温と化して水蒸気爆発する…なんてことも可。


「…とまぁ、こんな感じです」


ぱちん、と指をスナップさせる。ぱちん…と鳴った直後には、あれだけ曇っていた空は瞬時とはいかなかったがみるみる雲が何処かに消えて元の快晴に戻り、地面…砂漠の砂はやや湿った状況のままだが、この気温なら数時間もすれば砂煙が漂う元の砂漠に戻るだろう。


〈…れ〉


「はい?」


砂漠神が擦れた声で何かをいっているがショウには聞こえなかった。


〈…もういい。帰って、くれ〉


「え、それってどういう…」


全てをいう前に、ショウは砂漠神の転移魔法で日本の自宅へと強制転移されることとなったのであった…



「一体何なのだ…あのショウとかいう日本人はっ!?」


まだ湿っている足元の砂を蹴っ飛ばす砂漠神。


「あれでは…まるで…」


そこまで呟いてから口を噤む砂漠神。それ以上は不敬だと思いつつ…


「それとも…」


禁足事項に引っ掛かる為か、それ以上は口が動かない。


「ふっ…私も要らぬ世話をしたものだ…これでは日本の彼奴ウスメも管理が大変になるでしょうね…」


ニヤソ、と口角が歪んで嫌味を口にする砂漠神。


「兎に角、今日は疲れましたね…まさかたった1日足らずであそこまで化けるとは思いませんでしたよ…今日はもう寝ますか…」


個人空間に引き籠ればどれ程寝ても外では1秒も経過しない。そして、引き籠りが一柱増えた瞬間でもあった…マル



- 日本・ショウ自室 -


「う…此処は…俺の部屋、か」


砂漠と違い、湿度が高くて粘りつく気温。日本の夏真っ盛りの匂いにホッとすると同時に嫌気がさしてきた。


「クソ暑い…」


折角覚え、熟練度マックスまで上げた水属性魔法だ。湿度コントロールや上手くすれば気温のコントロールもできるかも知れないとショウは自室を出て2階へと上がって行く…



幸い、母親は1階で昼飯の準備中だ。2階には余程のことが無ければ上がって来ないだろう。


「さて…と」


そっとベランダへと通じるドアを開けてベランダへと出るが…


(うぁっちぃっ!?)


暑いではなく、熱い。つまり、ベランダのコンクリが日差しに焼けていた。素足で出たわけではないが、夏向けの薄い生地の靴下ではとてもじゃないが熱過ぎたという訳だ…


(まず先に、ベランダの温度を下げねーと…足の裏が焼かれちまうわ…)


取り敢えず、空気中に含まれる多分な水蒸気を利用して水出しウォーターを行使する。無論、氷水の如し…冷たい水を!…と思ったが、余り温度差のある水を掛けた場合、ベランダのコンクリが劣化して破壊されないとも限らないと思い直し、せいぜいー5℃程度の…いうなれば温水を先ず用意するということにした。だが…


「…表面温度が40℃くらいあるんだが…」


下手をすると40℃を越えてるかも知れないと…何でわかるかって?…初級魔法に鑑定もあって、物体の温度もそれで視れるという訳だ。余り行使してないので熟練度もそれ程上がってないが…まぁ、名前とかどんな物かとかはわかるらしい。今回は「何℃あるんだろう?」と思いながら行使した所、温度も判明したという訳だ。


「…水出しウォーター


無言で温度設定をしてコマンドワードだけ唱える。温めの水…お湯といっていいかどうか微妙…がじょぼじょぼとベランダのコンクリを濡らしていく。いきなり強い流水だと1階まで音が響いてしまう為、1回の魔法行使でベランダの凡そ8割くらいがお湿りするくらいにした。これならそこまで音が響かないし下に滴り落ちることもないだろう…


「…終了っと。後は乾くまで暫し待機」


鑑定で見てみると、先程は40℃を示していた温度が35℃くらいまで下がっていた。まだ熟練度が足らない為、小数点以下の数値が不明なのだがサーモグラフィーを見たような温度で色の変化が見えるようになったらしい。切り替えスイッチのような物が視界の外側に追加されていた。


「おお、試しに使って…ぐあっ、視界が真っ白に!?」


無論、ベランダの辺りは水を蒔いたので黄色レベルに落ちていたが、それ以外では高熱のエリアばかりで白跳びしていた…流石南側のベランダである。太陽光が無慈悲に燦燦と注がれているだけあって、各々の壁や屋根に貯め込んだ熱量も半端が無かった!


「元に戻して!…ふぅ、普通の視界に戻ったか。くそっ…目がチカチカするぜ…」


ショウはもう1度水を蒔き、鑑定でコンクリの温度を見ながらタイミングを見計らっていたのだが、下から「飯ができたから降りて来い!」との母親の声に、作業を中断せざるを得なかった!


「お~、わかったぁ~…」


そう返して、ドアを閉めて鍵を掛ける。そしてカーテンを閉じると2階から降りていくのであった…



- 昼飯を摂り作業の続きを…と思ったが、 -


〈ショウ、あんた何してんの!?〉


突然、ウスメが現れて何してんの!?…と来たもんだ。昨日は水属性魔法の練習を拒否った挙句、個人空間パーソナルスペースから追い出されたんだが何か不味いことでもあったんだろうか?…と思っていると、


〈砂漠の奴から文句が来たのよ…あんた、何したのっ!?〉


(…あ~、あのスカしたイケメン神さまか。何って別にウスメのとこと同じ練習して、練習の成果を見せただけなんだがなぁ…)


だが、何となくそのまま報告するとダメな気がする。何より目の前の契約神たるウスメは情緒不安定にしか見えないのだ。


(う~ん…でも腐って…はないが、下っ端でも神さまだしなぁ…。嘘付くと見破られるくらいのスキルは持ってそうだし…何よりこっちは身分が低い眷属だからなぁ…)


はぁと溜息を吐いて、覚悟を決めて正直に話すショウ。


「嘘を吐いたのね!?」


…と逆ギレされる可能性もあったので嘘偽りなく、極めて正確に事のあらましを思い出しながら自分の感情を交えないで客観的に白状する。そして、自室まで強制転移で戻った所までを話し終え、俺は沙汰を待つ罪人の如く…頭を項垂れて待っている。


〈…ぷっ〉


(?…今、吹いた声が聞こえたんだが…幻聴か?)


〈ぷっ…あはははは(笑)〉


幻聴ではないようで、ちょっと動くとあちこち見えそうな神衣を着た女神さまはベッドの上でじたばたと暴れている。無論、暴れた所で神の御業で音なんかは漏れないのだが…そして神衣クオリティーで際どい所も目視できないのだが、既に露出している素肌(生足とか腕とか胸の谷間とか…)が見え隠れするのはDT歴=人生の男にはとても辛い物がある…それは兎も角、大笑いで暴れているということは、怒りの矛先からは自身が回避できたと考えていいのだろうか?


〈でかしたぁっ!…えーっと、ショウだったかしらね?〉


眷属にした男の名前くらいちゃんと覚えておけよ…と思わないでもないが、まぁ「ははぁ~!」と更に頭を下げておく。これで合ってるのかはわからんがね。


〈ふっふっふっ…積年の恨みが少ぉ~しだけ晴れたわ…で、本当なの?…水属性魔法の熟練度を上げて来たってのは?〉


「先程話した内容が全てですよ」


砂漠神の個人空間で水属性魔法の練習をして(その他の魔法は補助程度に行使しただけなので然程上がってないが…)熟練度マックスになった水属性魔法のお披露目を…ウスメにしたのと同じ感じでやっただけだ。一応、どんな反応をしていたかも報告したが、それを聞き終えたウスメが俺のベッドの上であられもない恰好で笑っている…という所までがワンセットだ。


〈はぁ~…苦しい…でもでかした!あんたは偉い!!〉


何処の芸人だよ…と思いつつ、再び「ははぁ~!」と頭を下げておく。ようやく落ち着いたウスメがベッドの上に座り直し、


〈…で、さっき何やってたの?〉


と、今更な質問をしてきた。砂漠神にいわれた文句に関してはもういいのだろうか?


「えと…あっちから戻って来たら、またクソ暑い毎日を送る訳ですよね?」


〈そうね…〉


「折角水属性魔法の熟練度をカンストにしたんだし、少し涼しくしてみようかと…」


〈…で、ベランダの熱を下げようと?〉


「いや…それは」


恥ずかしながら足が熱かったからであって、まだ家周辺の気温を下げる前段階の話しだ。でも、いきなり熱を下げると物質の劣化を引き起こして壊す可能性があったので温い水で徐々に温度を下げていた…という経緯がある。ショウは科学なんて神さまがわかるか不明だったので、なるべく子供に話して理解して貰うような感じで説明した。


〈…つまり、2階のベランダで水属性魔法を試そうとしたら、ベランダのコンクリが焼けていて足が熱かったので冷やそうとしてたと?〉


ほぼオウム返しでウスメがニヤ付きながら訊いて来る。


「…だからそういってるでしょ。もういいですか?…続きをしたいんで…」


ケラケラ笑っているウスメにぶすっとしながら答えるショウ。ウスメは


〈わかったわかった(笑)…もう行っていいよ?〉


…と、最後まで笑い転げながら消えた。ショウは残り香が女性特有の甘い香りを嗅ぎながら、


(これ、すぐ消えるのかね…親が入って来たら何て説明したらいいのやら…)


取り敢えず、窓を全開にして扇風機を外に向けておくしかできなかったのであった…



- 再び2階の巻… -


「鑑定…うわぁ、やっぱし元に戻ってるし…」


ベランダに舞い戻って来た俺はベランダの床のコンクリを鑑定してみた。某駄女神のせいでやや落ちていた温度はすっかり元に…いや、飯を食う前よりも上がっているかに見える。夏の日差しは昼を越えてからが本番ともいうし、今が最も照りがきついのだろう。


「くっそ面倒だなぁ…」


いっその事、上空まで飛んでって空気そのものを冷やした方が楽なんだが元々上空の空気は冷えている層がある。気流…偏西風とかな…が吹いていて真上で冷えていても地表に降りて来ないことも多いし、その辺は複雑過ぎて俺もよくわからんのだが。


「まぁ、500mくらい上の空気なら冷やせば下の空気も冷える、かな?」


流石に地上で冷やすと色々と問題がある。何より自身の隠蔽もできない身分で妙なことをしてれば…ってな。この辺は高層マンションも無いし上空を見上げる人間なんぞ居ないだろうから見られることもないだろう。旅客機の空路からも離れているしな!



「突風の応用で…と」


流石にベランダから外に出るにしても、靴も履かずでは足元が不安なので靴を玄関から持って来た。靴底が厚いので熱くてもへっちゃらだがゴム素材なので余り長時間足を付けていると溶けるとも限らない。ので、素早く飛び出した…


「おお…俺は今、空を跳んでいる!」


飛ぶ、ではなく跳ぶで間違っていない。某10万馬力のロボっ子みたいに、両足の底から風の突風を吹き出して推力と変え、その反動で跳んでいるという訳だ。一応、陽炎のように誤魔化せるかと体の周囲の空気に水蒸気を多分に混ぜているが、そんな付け焼刃が通用するかは未知数だ。


「さて…と。そろそろ上空500mくらいか?」


下を見れば人の姿はほぼ見えず、自動車なんかも粒のようにしか見えない。東京スカイツリーより低いが池袋のサンシャイン60の倍より少し高いといった所か。


「じゃ…まずは」


ぱぁ…っとショウの体から冷気を含む水分というか波動が広がって行く。放たれたのは温度制御された水出しウォーターだ。但し、水そのものをじゃぶじゃぶ出したのではなく、限りなく空気に近い密度の…いわば水蒸気状の水だ。唯の水では魔力に限界がある為に放てる量も大した量ではないし、第一今回の目的にはそぐわないというのもある。


「…よし、できるだけ拡散しろ!」


水蒸気状の冷やされた水は、ショウの意思に沿って急激に広がっていく。巻き込んだ空気を冷やしつつ…広く、広く…



『お昼のニュースです。連日続いていた35℃超えの猛暑の日々でしたが、先程入った情報によりますと突如として気温が下がり続け、それでも夏日といえる25℃なのですが…』


冷気ならず冷水蒸気をばら撒いて、魔力が底を尽く前に自宅へ戻って来たショウを出迎えたのは…気温が下がったというニュースであった。内容を聞いているとその影響は住んでいる地域に留まらず、関東全域にまで広がる勢いであるようだ。ショウ本人にしてみれば気温の降下よりも範囲を重視していた為、-10℃もの気温の低下は望外の効果であった。


「これで暫くは少しはマシな環境でのんびりできそうだな…はぁ涼し…」


クーラーが壊れて10数年も経過した我が家では扇風機と唯一の冷房装置だ。いや、うちわもあるがな…唯、ここ10年は扇風機全開でも過ごし難い日々が続いており、健康被害を考えねばならないこの異常事態は何とかしたいと思っていた。寝ていたらのぼせて鼻血が…なんてこともあるのだ。下手をすれば、寝ていたらのぼせて脳内出血で死亡…なんてことも無い訳ではないだろう(恐ろし過ぎる!)


「まぁ、この魔法の力があれば、んなことも減る筈だ…俺が死ななければ、な」


今は激減してしまった魔力だが、寝れば回復すると聞いている。取り敢えず、シャワー浴びてすっきりしたら昼寝と洒落込もう…そんなことを考えながら、ショウはシャワーを浴びる準備に入るのだった。


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先の展開を考えてないのだが、まだ続くのじゃよw

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