ショートショート
お餅。
かなしくても
私をあいして。かなはそう言った。言ったというよりそれは、あまりにも痛くて苦しい、かなの中のとげそのものだった。だから私は思わず胸がぎゅううとなって、かなを強く強く、強く抱きしめた。
かなはまるで、私のようにぼろぼろで、うえていて、見苦しい。
きっと誰かが救ってあげないとこの子は、この子は。
だから私は、かなをちっそくさせるぐらいの力をこめる。
かなが息苦しくて、他の苦しみなんてわからなくなればいい。
私がかなの悪者であればかなは、今よりも痛がらずに済む、これだけは確定しているのだ。
だってどこにもぶつけられない痛みで充満してる。
そんなかなを、私、いや誰か(かなにとっては誰だっていいの)が救わねば、ならなくて。
「愛するよ、かな。だから」
かなはもう、どこかに去ってしまいそうだったから、私はとうとう焦りきってしまって。かなが、もう私であればいいのに。私がかなで、かなのことを私の思い通りにできるならば、かながもう自分のことをゼッタイに痛めつけないようにするのに。
どれだけすがったって自分のことを傷つけるのよね、かなは。
私は、そんなことを言うつもりじゃなかった。
これ以上かなを苦しめるのはやだったのだ。
ほんとうだ。
かなしくても私は、私だけは。
ショートショート お餅。 @omotimotiti
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