腕相撲することとなった
「明日火君、一度受けたからには撤回しないでね」
「ああ、男に二言はない」
そう言いつつ俺と夏輝は互いを見つめながらテーブルの前に付き座り、腕を出す。
これから家事をする、しないを賭けての腕相撲をするのだ。
勿論戦闘面では引きこもりの俺が夏輝に勝てるわけないが、腕相撲は別だ。
なぜなら腕相撲は多少の技術面はあるが基本は腕力と腕力のぶつかり合い。
男の俺と女のあいつとじゃ体格が違う。
それに俺も引きこもりだが、ストレッチや筋トレをしてるのだから少なくとも並みの高校生のワンランク上くらいの筋力はあるだろう。
加えて夏輝が提示した三つのハンデを架しているから負けるはずはない。
そのハンデの三つとは
・左で行うこと
・夏輝側は親指を使わないこと
・試合開始の合図は無言でかつ俺が力を入れた時と同時に開始する
まず俺は左利きで、相手は利き腕でない右でその上親指を使わない。
この時点で大幅に力は低下する。
三つ目も俺の判断で試合を開始するのだから夏輝が力を動かす前に速攻で叩き込んだらほぼ勝ちは確定だろう。
というか、ここまでの条件を課してなお勝ちを狙おうとする俺って最低の人間じゃないか?
・・・・・・・・・・冗談これでちょうどフェアだと思う。
なぜなら俺は腕相撲をしたことなんてあんまりないから楽に勝てる技術はない。
理由は・・・・・・ボッt・・・・・・・そういうくだらないものをする暇なんてないからだ。
相手が女だろうと関係ない。たとえこのまま自身が破滅に向かっても行動は変わらない。俺の覇道を貫いて見せる。(学生引きこもり)
「準備はできたぞ夏輝」
「うん、こっちもだよ。いつでもどーーーーーーーぞ」
相手は余裕に微笑みながら肘を付き俺の手を握る。
そのクソ柔らかくて細い腕、テーブルに思いっきり叩きつけてやるからな。
テレビも試合前に消したせいか、部屋中は異様に静まりかえる。動くのは時計の秒針のみ・・・・・・
そして俺と夏輝は睨みながら腕に力を入れる。この時点で試合は始まってると過言ではないだろう。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
やつは既に戦闘態勢に入っていてその証拠に腕に力がこもっていた。
見るからに腕相撲には自信がありそうな顔つきだ、
腕相撲はあまりやってないが握っても分かる。この感じ経験者だ。いろんなハンデを架せられても圧倒的技や力で瞬殺しそうな雰囲気がする。恐らくハンデなしなら100%負けるはずだろう。だが・・・・・・・
勝機はある・・・・・・・あいつのハンデの一つ、試合開始の有無は俺が動いた直後・・・・・・・
つまり試合開始の合図がない状態で始めるのでじらしまくって夏輝が俺より動かすように仕向ければその時点で夏輝の負けになることだ。
完璧だ。
現に握ってまもなく二分も立ってるのに俺はビクンとも動かしてない。
ははははははは焦らしまくって油断してる時に決め・・・・・・・・
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
雰囲気で分かるなんて集中力だ。こんなの少しでも揺さぶりをかけるようなものならすべてを無視するくらい精神を研ぎ澄ましている。
下手に力を入れると返り討ちにされそうだ・・・・・・・・
やばい・・・・・・・・プレッシャーのかかりすぎて汗が滴り喉が渇いてしまう。
一旦ドリンクでも飲んで気を紛らわすか・・・・・・・
近くにあったドリンクに手を出そうとする。
「あーーーーーーーーーーー!!!!ちょっとそれボクのストロベリーシェイクなんだけど、なに勝手に飲もうとしてんの!!!」
「いまだ!!!!」
夏輝が俺の持ってるシェイクに気を取られてる隙に渾身の力を放ち腕相撲が始まった。
短期決戦だ。この数秒にすべてをかけ、夏輝の腕をテーブル台に叩きつけようとするが。
「なんのぉーーーーーーーーー!!!!」
夏輝はその不意打ちにも対応し、力を発揮し体制を取り戻していった。
くっ・・・・・・・やっぱり女と思えないくらいのとんでもない力だ。
利き腕じゃないのに俺と互角に渡っていた。
これは非常にまずい。俺的にはここで勝負を決めたかったのに・・・・・
ググググググググ・・・・・・・
くっ・・・・・・俺が必至で力を入れてるのに夏輝のやつ眉一つ動かさないほどの余裕顔で徐々に力を押し込もうとしている。この武闘派ゴリラめ・・・
負けじと俺は片方の手をテーブルの端を掴み身体を支えながら力をさらに加える。
こんなことならもう一つのハンデで両手を使ってもいいって言えばよかった。
女相手にやりすぎでもいい。俺はこいつなんぞと共同で家事をしたくないだけだ。
「おっ・・・・・・」
わずかだが沈んでいく腕が止まった。そして少しずつだが上がろうとする。
人間ってとっさの状況にとんでもない力を発揮するのか・・・・・
根性論は今までクソだと思ったが今日だけは根性論を信じるわ。
絶対に負けてたまるかぁ。
「まだまだぁ!!!!」
先ほどの余裕だった夏輝も血相変え真面目な顔つきでさらに力を加えようとする為、俺の顔を近づきさらに力を出そうとす・・・・・
「ふっ・・・・・・」
「へ・・・・・?」
「隙あり!!!!」
な・・・・・・・・なんだ!?突然耳元から生暖かい風のようなものが当たって・・・・・・・力が・・・・・・・
そして夏輝の声によって我に返った時には試合が決着し俺の左腕が床に叩きつけられてしまった。
なにが起こったんだ?思い当たるのは一つしかない。
「やったーーーーーーー勝った。ボクの勝ち約束通りルールは守ってもらうよ」
「ちょっと待て!!!!今のはナシだ。さっきお前俺の耳元に息吹きかけただろ?アレどう見ても反則じゃねぇか」
「いや、だってハンデでズルしてもいいって言ってないでしょ。それに三つもハンデ貰ったくせに文句言うの大人がないと思うけどな。後、ついでにボクのシェイクも飲もうとしてたし!!!」
「ぐぬぬぬぬぬぬぬ」
正論すぎてなにも言えない。というかシェイクを飲もうとしたのはわざとじゃないのに、それについて若干キレ気味なんだけど
つーーかこの前の脇腹叩きにしろ耳元に息を吹きかけるにしろ俺弱点増えてないか?
そのうち夏輝にこの家を支配され・・・・
「それじゃ今からおばさん達の整理の前にボクの部屋を整理しようよ」
「へ?」
「実は明日おばさんの私物を持ってくついでにボクの私物をここに持ってくるよう頼んだんだ。だってボクが卒業するまでここにいるんでしょ。だったら今持ってきた私物だけじゃのんびりと生活出来ないでしょ?それにいちいち家から持ってくるのも面倒いし」
「・・・・・・・」
「後この家にある家具は自由に使っていいとおばさん言ってたからおばさんの部屋にあるタンスをボクの部屋に・・・・って聞いてる?」
前言撤回もうすでにこの家はこいつに支配されてる
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