一緒にアニメ映画を見た

「あっ、やっと来たこっちこっち」

時間ぎりぎりの九時五分前風呂を終え、言われた通りにリビングに向かうとすでにソファに座ってる夏輝がこっちに座れと言わんばかりにかなり強めな感じでソファを叩く。




しかも家から持ってきたと思われる猫?みたいなバケモンの枕カバーを抱き着きながらくつろいでいた。

もうすでにこの家の暮らしに慣れているようだ。俺の家なのに図々しいやつだ。




冷蔵庫を開けて風呂上がりの冷たい牛乳を口に含みながらすでにソファに座ってる夏輝よりかなり端に座るのだが、夏輝はにししと笑いながらこっちに寄り添うとする。





「おいこっちくんなって前にも言っただろ」

「別にいいじゃない減るもんじゃないし、それに夜寒くなるならこうやってくっついたら少しは温くなるよ」

「そんなん毛布かけるか暖房強くすればいいだろ」

「暖房はなんか暑いから嫌だな。でも毛布はいいかも。ほら一緒にかけよっか」

「自分の取りに行く」

「むーーーーーーーーーーー」

また頬を膨らましながらこちらを睨んでいたが無視し自分の部屋から毛布を取り再び感覚を開けながら座る。

またあいつが寄ってきたのは言うまでもない。




「それでいったいなにが始まるんだ九時に」

「その前に聞きたいけど今日は何曜日かな?」

「なにって金曜日だろ・・・・・・・ってまさか」

「そう金曜ロードショーだよ。それしかないでしょ」

とても呆れて声も出ない。

あんだけ期待しておいて金曜ロードショー?俺はてっきりK-1とか生放送のトーク番組かと思った。




まぁ別に金曜ロードショーでもいいけど問題は内容なんだよな。

一昔前なら洋画のアクション映画とかサスペンス系をやるんだが今なんてほとんどアニメ映画で仮に洋画だとしてもメジャー作品で吹き替えが有名俳優やアイドルで棒読みが目立つ作品なのだろう。

それならカットが一切なく、なおかつ字幕で見れるア〇プラで十分だ。

正直ここで見るのは時間がもったいないが一応どんなものをやるか聞いておこう。




「で、なにを見るんだよ」

「ラピュタだよ」

はいベタすぎる撤収!!!




「ってちょっとどこに行くのさ」

「うほっ!!!」

「せっかく来たんだから最後まで付き合おうよ」

こいつまた脇腹を突きやがって・・・・・・

クソ逃げられない。




「離せ!!!いい年下してラピュタなんか見れるか」

「いい年ってあんま年変わらないはずだよ。それにボクのクラスではラピュタ見たらSNSでバルスしようバルスしようと盛り上がってたし」

「それはこっちの都合だろ。無関係の俺には関係ない話だ」

「関係なくない!!!君だってうちの学校の生徒なんだから生徒会長剣青春部部長の権限で絶対逃がさないよ」



権限で強引に拘束して風習を強要させるとか・・・・・・いつからうちの学校は独裁国家になったんだ?

結局逃げられないままソファに座り無理やりラピュタを視聴する。



♪♪♪♪♪♪~~~~~~~




「あの~~~~~~地平線~~~~~輝くのは~~~~~~」

頼むから耳元で歌うなよ。カラオケはよそでやってくれ。そして二度と帰ってくるな。

そう思って睨むと夏輝はこっちに気づいたようで歌うのはやめた。

どうやら自分の醜態に気が付いたようだな。



「あっごめん不愉快だった」

「ああ、不快だった。映画見るときは静かにしろと親から習わなかったのか」

「そうだけどつい口ずさむからしょうがないよ。それに君だって昼・・・・」

「わかったわかったみなまで言うな。こっちが悪かったからあのことはどうか掘り下げないでくれ」

「ふふっ」

なんかこっちが勝ったといわんばかりにドやってる。

俺の世界が徐々にこいつに侵略されてるな。




「で、明日火君お願いがあるんだけど・・・」

「断る!!!」

「え?何も言ってないのに」

言わなくても分かるんだよ。どうせ一緒にバルス言おうとか考えてるんだろ。

まったくわかりやすい。




「別にいいじゃん減る前じゃあるまいし」

「俺のプライドがだ」

「はいはいプライドね・・・・まぁ君はそういうと思ってたからボクだけ言うよ」

勝手にしろ。後さりげなくこっちにもたれるな。

こいつの頭を元の場所に戻し、しきりのためクッションを重ねることにする。

正直これ以上寄ってきたら迷惑だからな。





物語も終盤にせまり敵のムスカは舐めプ感覚で三分待とうとする。

はい余命三分ご臨終様。





「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

最初はやかましかったがさすがの夏輝も物語が進むにつれ静かになったようだ。

さてとここからが問題だ。最後のバルス言うべきか。




「・・・・・・・・・・」

いやさすがに恥ずかしい。言ったら言ったでまたからかわれるが、逆に言わないと脇腹突かれたり最悪投げ飛ばされる可能性がある。

テレビは大詰め・・・・主人公のパズーとシータは手を握り破滅の呪文を唱える。




『バルス!!!』

「バルス・・・・・」ボソ

♪♪♪♪♪




言ってしまった・・・・・・・ついに

破滅の呪文を唱えたことで大佐は天空の城から消えSNSではバルスコールが拡散し、そしてここでは俺の中のプライドが見事に砕かれてしまった。




「言ったぞこの野郎。これでいいだろう。それはそうとてめぇなんでお前は言わなかったんだ。見事にはめやがっ・・・・・・・」







「ZZZZZZZZZZZZZZZZZZZ」

「へっ?????」

こいついつの間にか寝てるし・・・・

くそっ・・・・・・この状態じゃ怒りたくても怒れねぇじゃねぇかよ。

脳裏に沸き立つ怒りがいつのまにか覚めていった。

それくらい夏輝の行動に飽きれてしまった。

こいつの油断もかけらもない寝顔と口元からかすかに聞こえる吐息。

怒りが収まった俺もつられて寝てしまった。






・・・・・・・・・・・・・・・・







うーーーーーん。

意識を失った後、俺は再び目を覚めた。時計を見ると深夜2時になっていた。

寝る前と変わらず電気つけっぱなしで暖房がきいてる一室に先ほどと変わらない夏輝の寝顔。

テレビも今かかってるのは通販番組くらい。





はぁぁぁ〜〜〜〜さてともう一度寝るか・・・

ぐ〜〜〜〜〜〜〜





やっべお腹空いてきた。なんか飯にするか。

確かラーメンが・・・・ないな。





夏輝が来てから保管してたカップ麺食べるようになったからもうない。

というかなんだこの減り具合、もしかしてあいつ黙って食いやがったな。

食うのはいいが、無くなったのなら買ってくれ。

どこまでもガサツな女だな。





まぁ、たまにはコンビニで飯を食うのも悪く無いか。

夏輝はまだスヤスヤと寝ているようなので気づかれないように電気を消し、忍足で外を出ることにした。

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