タッパーに入れた

「ただいま~~~~~~」

その日の午後7時半、玄関からやかましい声が響き渡っており、どうやら夏輝が帰ってきたようだ。





俺は一旦ゲームを中断し、重い腰を上げ夏輝が向かうであろうリビングに向かった。

案の定制服の夏輝が寒い寒いと言いながらリビングのテーブルに大きな袋と買い物袋を音を立てながら帰ってきた。

まぁ、今は三月の上旬だから、まだ寒さは残ってるだろうな。

別に暖房をつけたのは夏輝の為じゃないこれから飯なんだから風邪ひかないようにつけただけだ。





「明日火君、暖房付けてくれたんだありがとう。今から晩御飯作るね」

「別に・・・・・・それと夏輝今日出した洗濯物取り込んだぞ」

「あ、ありがとう助かるよ」

それだけ?てっきり下着も取り込んだのかと言われるのかと思った。

やっぱこいつ、どこか抜けてるな・・・・

夏輝は無言のまま買い物袋からのものを冷蔵庫に入れ、思い出したかのようにこっちに振り替える。



「ん?もしかしてボクのパンツも取り込んだ?」

「ぶっ!!!」

「アハハハハ!!!そんな驚かなくてもいいよ。ボクそんなの気にしない方だから・・・・・ただ勝手に部屋に持ちかえるのはやめてよね。そんなことされたらおばさんにそのこと報告しなければいけないから」

「誰が持ち帰るかそんなもの!!!はやく飯用意しろよ」

夏輝ははいはいと、いいながらテーブルに料理を入れたタッパーをふんだんにおいていた。





タッパーの中を開くと見るとうまそうなものが入っていてその匂いがとても香ばしかった。中はぶりの照り焼きに里芋の煮っ転がしか。

明らかに昨日の駄作カレーとは一際違うとてもいいメニューだ。夏輝の婆さんナイス・・・・・・てアレ?これなんだ?

並んでいるタッパーの中にとてつもなく異質なものを俺は衝撃を与える。




な・・・・・・・・・・なんだこの野菜炒めの成れの果てのようなものは・・・・・

なんか黒い液体みたいなものがかけられてこれだけ匂いが濃くて鼻が曲がるぞ。





もしかしてこれってソースか?それにしてもかけすぎだろ。あまりにも過剰なソースの分量で婆さんボケてんじゃないかと心配になる。

それくらい俺はその暗黒物質にドン引きしている。




「な・・・・・・・夏輝さんなんですかこれは・・・・」

「ん?見てわからない。ソース野菜炒めだよ。なにを今更」

「いやいやこれが野菜炒めなわけねぇだろ・・・・なんかソース入れすぎて野菜や肉が黒ずんでるんだけど」

おまけにタレがめちゃくちゃ垂れてるしおまけになんか甘ったるい匂いがするしこんなの旨いわけ・・・・・」

とりあえず箸で味見をする。






う・・・・・・・・うまい。なんだこの野菜炒め。見た目がグロテスクなのに対し、少し辛さがあるものの抜群の香ばしさを感じそれが野菜炒めととても合っている。





「美味しいでしょ。これくらいは自身があるんだ」エッヘン

なんで作ってないのにいばってるんだこいつ?




「ボクも小さいころコレ出されてちょっと引いちゃったけど、一口食べたらキミみたいにやみつきになっちゃたよ」

「やみつきってまだ一口しか食ってないんだけどな・・・」

「むむ・・・・・そんなこと言うならキミには上げないよ。ボクだけでコレ食べちゃうよ」

「けっ・・・・・・勝手にし・・・・・・・」ぐ~~~~~~~~~~~~








「クソお願いします!!!!・・・・・・・・・・・・はっ」

「よろしい!!!」

気づいたら土下座してしまった。恐るべき灰崎スペシャル野菜炒め!!!

ぜってぇ中毒させる作用が入ってるだろと疑いながらも他の料理をタッパーで温めた後、皿に入れ食べた。





ん~~~~~~~~~温めたらより一層美味しかった。

それにこれだけじゃなくてほかの料理も地味ながらおいしすぎる。

夏輝の婆さんがくたばる前にレシピは知りたいな・・・・・・・







これも夏輝の為じゃない。自分一人で暮らすことを考えてをだ・・・・





「くすっ」

「あ?なに笑ってんだよ」

「昨日と比べて美味しそうにご飯食べてるからキミってやっぱ正直モノなんだね」

「うるせぇ・・・・・・」

それ以降俺は夏輝の顔を避けるようにご飯を進める。






夏輝は『近いうちに楽しくワイワイ話しながら食事できるかな』とかぬかしてるようだが、安心してください。

そんなことねぇから!!!!

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