投げられた

よろしくだぁ。何言ってんだこの女は・・・・

突然押しかけてきてその馴れ馴れしい態度はなんだ。

そのまぶしすぎる笑顔に俺は苛立ちを覚えてしまう。




「ん?どしたのボーーーっとしてさっさと座りなよ」

ガン!!!!




感情を爆発し俺は壁に拳を叩きつけ、女の言葉を打ち消した。






「おい、そんなことはどうでもいい。母さんはどうしたんだよ。なんで、アンタが飯を作ってるか聞いてんだよ?」

「アレ?聞いてなかった。おばさんなんだけど、もうここには来ないらしい。なんでも実家に移ってるらしいよ」

「なんだって・・・・」

そ・・・・・・・・そんなこと全く聞いてない。

いったいなにを考えてるんだあのBBA!!!

俺は、すぐさまに家中を走り回り母さんの痕跡を探す。






ない・・・・・・・・・・ない・・・・・・・・・・両親の部屋までくまなく探したのだが、母さんの私物だけではなく、父さんの私物までも跡形もなく消えている。




唯一あったのは母さんからの書き初めだ。





『明日火へ

突然ですが、私は、亡くなった爺ちゃんの家に戻ります。昔の貴方は活発で賢く元気な男の子ですが今は正反対になってしまいとても悲しいです。今までは貴方の挫折を感じ、その気持ちを尊重する為にあえて言葉をかけずに放置し、自然に復活すると思いましたがそれは間違いでした。失った過去に執着し、引きこもる貴方をとても幻滅しました。貴方は我が家の恥です。まっとうな人間になるまで新しい家には入らせません。これにはお父さんにも了承を得ています。もしそれでも来るというならば、この家はすぐに売り払い、貴方を路頭に迷わせます。勿論、金銭等は与えません。それが嫌なら、これからうちに居候される灰崎夏輝さんという女の子に社会復帰する為に学んでください。期間は彼女が卒業するまでの一年間。その期間でも貴方は引きこもりを続けるのなら、彼女の卒業と同時に家を売り払います

なにとぞ現状を受け止めてください

母より


PS・夏輝ちゃんに乱暴したり追い出したりするのなら家を追い出すのと同時にあなたを前科者にし、少年院に行ってもらいます。』






ふざけんな!!!!!!!!

母親の直筆の手紙を破り捨て壁に蹴りを入れた。

クソBBAが!!!

勝手に話を進めやがって・・・・・

家に来たら路頭に迷わすだと!?

これが親のやることかよ。

俺が引きこもりになったのは親であるアンタらにも責任があるはずだろう。

死ぬまで俺を養い続けろよ。







「おーーーーーーーーーい!!!いつまで叫んでるの。早くしないとカレー冷めちゃうよ」

俺の気持ちを知らずか、呑気にあの女はお玉を片手にこっちを呼んでいた。



ん?待てよ・・・・・・・確か手紙ではこの女が代わりに居候するって言ってったな。





つまりこいつさえいなければ・・・・・







「おい、女今すぐ出てけ・・・・・・・・これは家主の命令だ」

「はぁ?何言ってるの・・・・・おばさんの手紙読んでなかった。ボクはおばさんに頼まれてここに居座ることになったの。第一ボクになにかあったら困るのは君だよ。悪いことは言わないで素直になろうよ」

「うるせぇ!!!クソ女が!!!」

周囲を蹴り俺は女に向かって攻撃する。

路頭に迷う。少年院に措置?やれるものならやってみろ。

今の環境が最高に心地いいんだ。




俺はもう堕ちたんだ・・・・・・・・堕ちた人間が今更まともな人間らしいことできるかよぉ!!!!!!







ガッ!!!!!

「えい!!!!」

「へ?」

ドン!!!!!

しばらくの空中浮遊を堪能した後俺はいつの間にか床に叩きつけられた。

な・・・・・・・・・なにが起きたんだ。



ふと天井に目を向けると先の女が俺を見下ろしていた。もしかして、今さっきこいつに投げられたのか。

疑問を浮かべると女は『オッス!!!』と叫びながら拳を俺に向けていた







「むやみに攻撃しない方がいいよ。ボクの父親は総合格闘家だからね。小さいときにいろんな格闘技を習わされてるんだ」

「くそ・・・・・・」

格闘技経験者とかチートすぎんだろこれは手が負えないな。

そう思うと女は拳からうって変わり手を差し伸ばす。






「ほらっ、立ってよ。さっき襲われそうになったことはおばさんに言わないからさ。その代わりボクをこの家にいさしてくれないかな?」

「・・・・・・・・・・・・・・」

正直言って俺はまだ納得いってないし何より初対面だが俺はこいつの事が大嫌いだ。

だが、抵抗すると先ほどのように返り討ちにさせられる恐れがある。





なぁにまだ時間がある。俺は毛頭引きこもりを辞める気はない。こいつが卒業するまで引きこもりを続けられる方法を考える。

それまでこいつの言うことをあえて聞いたふりをするだけだ。



見てろよクソBBA!!!俺は決してアンタの思う通りにならないからな。

陰謀を隠しながら夏輝の手を握り立ち上がる。





「分かった。よろしくな。夏輝・・・」

「違う違う。ボク先輩だから目上にはちゃんと敬語が必要だよ。Do you understand?」

「はいはい、よろしくお願いします。夏輝先輩・・・」

「グッド!!!それじゃ夕食にしようよ。そこで詳しくお話するよ」





誰がお前に従うかバーーーカ・・・・・

俺は後ろ姿の夏輝に中指を立てた。





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