第28話 テンプレ的に、騎士と合流する俺。
翌日、日の出とともにシンジたちは村の外れ、オークどもと戦った反対側の土壁の前にいた。
周りには、二日酔いでフラフラの男たちと、それを小突いてしゃっきりさせようとする呆れ顔の女たちの対比が妙に面白い。
「で、村長さんこちら側の壁にも入口を作る感じで良いかな? 他にもいる?」
「そうですな、そうしていただけるとありがたいですじゃ。入口は2か所で大丈夫ですじゃ。増えても見張りに困りますからな。門と物見台は村で作りますじゃ」
昨晩は一番飲んでいたはずのJIJY村長が、一番シャッキリしていた。ただし、杖を持っているときのみのようだ。杖が無いと、アヘアへ言って崩れ落ちてしまう。
(やはりかん〇ーちゃん……。げふんごふんッ)
シンジは咳払いで誤魔化す。
「ん、どうしましたかの?」
「ん、ん、何でもないよー、うんうん、わかった、そうするね」
そう言うと、シンジは村外へと繋がる道を遮断する土壁の前に立ち、手を付いた。すると、道幅の分だけするすると壁が下がって凹んでいた道がつながる。村人からおおぉッ!とどよめきが上がる。
「これで大丈夫かな?」
「ええ、ええッ! 素晴らしいですじゃッ!!」
JIJY村長が杖をブルンブルン振りながら喜んでいる。あ、息子さんに当たった。
「じゃあシンジさん、そろそろ出発しましょうか」
アイリスに促され、シンジは宙に浮いてノアの背に乗る。これにも村人が驚きの声を上げた。
「じゃあ皆、機会があったらまた来るねー」
「アイリス様、シンジ様、その時は村を挙げて歓迎しますぞい」
「村長さんも元気でねー」
「皆、達者でな」
アイリスは、ひと言だけ声を掛けた。騎士が村人に言う言葉としては普通だろう。だが、アイリスが微笑みながら言うと、村娘に直撃する。娘たちが真っ赤になってふらついた。慌てて周りの母親たちが支える。
(やっぱりヅカだよねー)
そんな村人たちを残し、アイリスとシンジはノアとともに村を出発した。
「はいよーシルバーッ!」
「何ですか? シルバーって?」
「これは
「はあ……?」
◇
シルバー、もといノアの足は軽快で、普通の馬の全速力が単なる駆け足程度だ。さすがはUMAである。
1時間ほど、普通の馬なら3時間以上も掛かる距離をサクサク進めていると、遥か遠くから3体の何かが見えてきた。よく見ると、馬に乗った騎士のようだ。
「アイリスさん、誰か来るよ?」
「え? 見えませんが……」
シンジの目には見えているが、アイリスの目では捉えられていないようだ。まあ、草原が続いていて、遮るものがほとんど無いのもあるが、何よりシンジの目だから、という事だ。距離にすれば3kmは離れている。マ〇イ族か。
実際のところは、シンジの目が魔力で強化されているために起こっている現象だ。
「まあ、このまま進めばすぐに接触するよね」
「あ、私にも見えました。確かに3騎いますね……あ、あれは、兄上?」
アイリスの目も強化されているらしい。ロード戦で強化された影響だろうか。
お互い走っているからか、すぐに姿が見えてきた。
「兄上ッ!!」
「アイリスかッ!? 無事で良かっ……なんだその馬はッ!!?」
初見では驚くのも無理はない。何しろUMAなのだから。
お互いに視認して、歩みを止めた。馬に乗った騎士が3人、三角形を描くように近づいてきた。
馬の背の高さが1m近く違うため、シンジたちからは三人を見下ろすような形になる。
「兄上、お戻りだったのですか」
兄と呼ばれた男は、アイリスとよく似ていて、金髪碧眼と肩までの総髪が映えるイケメンだった。だが、すらりとしていながらも優男感は全くなく、むしろ鍛え上げられた体格が、力強い生命力を感じさせた。
「ああ、戻ったら
どうやら、あの狼煙はかなり正確に伝わっているらしい。
「で、その巨大な馬はなんだ? ノアはどうしたのだ?」
「ノアです」
「は?」
「いやですから、ノアなんです、この子」
「……は?」
騎士が3人とも目が点になっている。原形をとどめないほど変わってしまったので、まあ無理もなかろう。
兄騎士が頭を振った。
「いや、それより
「ええ、報告します。
「は?」
「いやですから、
「……は?」
……まあ、無理もなかろう。
シンジは、うんうんと肯いた。アイリスの陰に隠れるように話を聞いていただけだが。
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掲載遅れてすみません。
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