第23話 テンプレ的に、オークロードと対峙する俺。

 「アイリスさんとノアさんは、まずジェネラルを倒して。ロードは俺が抑えとくから」


 配分的には、その方が良いだろう。いきなりふたりにロードは荷が勝ちすぎる。


 「シンジさんは大丈夫なんですか!? ロードと一対一ですよッ!?」


 「へーきへーき、無問題もーまんたい。出来るだけ削っておくから、早めに来てねー」


 ひらひらと左手で手を振りながら答えるシンジ。この程度はチュートリアルで何度も経験がある。


 「じゃ、GO!」


 シンジとアイリスたちが二手に分かれる。


 シンジは、まず挨拶とばかりに氷の剣から氷の矢を発射する。ロードはそれを見ても全く動じず、右手だけで持ったバスタードソードを振るった。そこから炎の矢が生まれ、氷の矢を喰らった。両方の矢がキシュン、と音を立てて対消滅する。どうやら単に当ててきたというより、反対属性で打ち消したようだ。


 「なかなかやるねえ」


 そこでロードが上段から剣を叩きつけてきた。まともに受けたら、シンジでも力負けするだろう。シンジは剣を斜めに構え、左に受け流す。


 ロードが剣を切り返し、横に薙いだ。シンジが回り込んで躱す。なおも斬りかかるロード。剣からは炎が噴き出し、シンジを焼こうとする。が、シンジはひらりひらりと躱し続けた。


 いったん、お互いに距離が出来た。


 「ヤル、デハ、ナイカ」


 「おや、しゃべれるんだ」


 ロードが語り掛けてきた。シンジも少し驚きつつ、返事をする。チュートリアル中には、オークロードが話したのを見たことが無かった。オークキングとはあったのだが。


 「やっぱり、キングになりかけだったんだね」


 「ヨクシッテオルナ」


 「まあね、前にも死合ったことがあるし」


 「ホウ、ドウゾクニカ。ソノモノハ、強カッタカ?」


 ロードがニヤリと笑った気がした。


 「ああ、一度殺されたよ。2回目は問題なく倒したけどね」


 ロードは、片目を見開いた。いぶかしげな表情をしているのが、異形の顔でも分かる。


 「キサマ、生キテ、オルデハナイカ」

 

 今度は、シンジがニヤリと笑う。


 「その時の俺は、死んでも生き返ったんだよ」


 「コノろーどノ前デフザケテイルノカ? コゾウ、余ガジキジキニメイドニ送ッテ、ヤロウ」


 「メイドは好きでござるが、冥土は御免被る」


 影響を受けたのか、シンジの話し方まで時代掛かってきた。


 シンジの軽口に答えたのは、ロードの炎を吹き出す剣。シンジはそれを氷の剣で受け流す。


 「ほれほれ、ぶたさんこちら、手の鳴る方へ♪」


 シンジは手拍子交じりに挑発を繰り返す。怒りのためか、ロードの黒い毛で覆われた全身が、赤黒く変色してきた。


 「オノレッ! 許サヌッ!!」


 「あらよっと、ほらさっと、お尻ぺんぺん♪」


 振り回される炎の剣を、シンジは軽快に躱して、お尻まで叩く始末である。徹底的に挑発していく。


 「ほらほら、そんなに大振りしちゃっていいの? ぶたさんダイエット?」 


 「ヌウウゥゥッ!! 余ヲこけニシオッテッ!! ソッ首、消シ飛バシテクレルワッ!!」


 ロードは子供が小枝で遊ぶように炎の剣を振り回す。ふらふらと揺れるようにそれを躱し続けるシンジ。


 「ほらほら、頑張る頑張る♪」


 「ウガアァアァァッ!!」


 怒り心頭のロードが、ますます激しく剣を振るうが、シンジは意に介さず、ぬるぬると避け続ける。左手は真っすぐにシンジに向けられ、そこからは炎の弾丸ファイヤーパレットが次々と打ち出される。これもシンジは躱したり、剣で弾いたりとやりたい放題である。


 「なかなか器用なことをやるねー。さすがキングっぽいロードだねえ」


 「ホザクナがきガッ!!」


 ロードはますます攻勢を強める。が、シンジは涼しい顔で避け続ける。


 その時、ドガンッ! という大きな音が響いた。シンジが攻撃を避けつつもそちらを見ると、ノアの見事な後ろ蹴りがジェネラルの顔を直撃していた。


 ジェネラルは、仰向けにそのまま3mほど飛び、後頭部から地面に叩きつけられ、ピクリとも動かなくなった。


 よく見ると、ジェネラルの右腕は斬り落とされていた。これはアイリスの仕業だろう。


 「おッ、ノアさん殺ったね! アイリスさんもお疲れ様ッ!!」」


 拍手をしながら攻撃を避けるという、非常に器用なことをひょうひょうとこなすシンジ。ロードはその姿に、ますますヒートアップする。


 もはや言葉にもならない雄叫びを上げながら、攻撃を続ける。が、ついに炎の弾丸ファイヤーパレットが止まった。魔力が切れたのだろう。ロードが肩で息をしている。


 「シンジさん! 大丈夫ですかッ!?」


 アイリスとノアがこちらに駆け寄ってきた。


 「ん、ふたりも合流してきたし、ロードの攻撃も緩んだし、そろそろ決めに掛かろうかな」


 シンジは、改めて剣を構えた。

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