アルカナ街への支度
「早く終わらせてくださいね!アルカナ行きの汽車も少ないですからね!」
うるさいなぁ、と私はため息が出そう。どうしておじさまは私にこの子を預けたのだろう。きっと意味があるはずだけれど。
私は荷造りをして、駅へと向かった。
汽車を待つ人たちは大きな荷物を持って、皆ベンチに座って下を向いている。朝早くから待っているのだろう。眠さに叶わず首をこくりこくりとしている。
私は今朝開けた店を、閉まって出てきた。帰ってきたら、お菓子を街の人に無料で配ろう。あれはこの日の特別な限定商品だから。
私は腕時計を見た。装飾品を施したお気に入りの腕時計。これもおじさまからもらった物だ。
汽車に乗ると、隣に一人の小さな男の子が座った。こんな小さな子が一人で汽車に乗るだろうか。
「おはようございます、おひとりですか?」
男の子は礼儀正しく私に聞いた。
「ええ、一人です。これから、アルカナ街に」
「僕もアルカナです」
「ええ!奇遇ですね!」
「家族に呼ばれているので」
汽車が走ると、男の子との会話が始まった。
「私、アルカナに行くのは久しぶりです」
「そうなんですね、僕は何回も行っているので」
少し事情があるのだろうか。男の子はため息混じりに言った。私はそれ以上そのことには触れないでおくことにした。
「アルカナ、相変わらず賑わっているのかしら」
おじさまの手紙を読んでいるけれど、特にアルカナには触れられていなかった。
「少し昔に比べて、いえそんなに昔でもありませんが……少し荒れましたね」
「そう、そうかぁ……」
私は少し寂しくなって、窓辺の外に目線を移した。
魔法使いの家 slime @umbrella55
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