第4話 政治力の世界
まつりの話を聞いた限りでもぼくはまぁおおよそ、そうなのだろうな、と考えていたので特には驚かなかった。
確かにまともに働いたり学校に行ったりしてる人が逐一他人に張り付いてられるとは思わない。
だけど、それでも得体の知れない不気味さが其処にはある。
仮に、反社会的組織に兄が協力し続けていたとして
何故、身内を監視し続けて居る?
何故、反社会的組織に情報を提供している?
これじゃあまるでその為だけに存在させられているみたいだ。
まともな仕事にも、学校にも行かずに。
まつりは、ぼくの横で二杯目の紅茶を飲み干しながら片手では端末を操作している。
テーブルに置かれたそれはなにやらトーク画面を表示させていた。
『内輪ネタにすらならない、こっち側のネットワークにすらかからないなんてことはそうないですからね』
『微塵も彼のこれまでなにをやって来たかには触れてない。いきなり出てきていきなり騒いで、いきなり守られて、なんてあり得ないのに、彼はそのシンボルになっている。
本来守るべき対象は、被害者のはずなのに』
『あの異様な持ち上げかた、周囲の視線を強引に逸らそうとしているかのような……
なぜ、他の連中はAのことを捜そうとしないのかも、気にかかる。』
『鈴木、って、偽名に使って荷物を送らせた話とかは最近聞きましたけど…』
『そう、その徹底ぶりがおかしい。情が移ったなんてものではないと思う。
だってあの子のときや、他の子のときは、そうじゃなかったんだ。それこそ情が無かっ
たとでもいうように。』
『その時、なにがなんでも探し当てて晒し上げようという流れがあって、メディアも積極的に後押ししていた。
今からみれば明らかな倫理規定に反していたのに、全部それが肯定されていた。 今だってそう。いきなり出てきた彼に、そうならないだけのどんな価値があるというのか?
少なくとも、あれは簡単に他者を切り捨てられるような奴らだと思う。可能性があるとすれば自分たちも巻き込まれるという理由だけ
』
『山口……を始め、政治関係者がバックに居るという噂もあります。芋づる式に繋がってしまう為、庇い立てしているのでしょう』
トークの相手はリュージさんだ。
訳あって、まつりの捜査に協力してくれている元刑事さん(?)よくわからないけど……そんな人だ。
「組織的な背景について、聞いていたのか」
「んー、そうなんだけどね。確かに手紙から判断して欲しいとなるわけだよ」
まつりは悩まし気に唇を尖らせる。
「次から次へと黒い組織利権が絡んでいる……反社に政治家に、まぁ。
山口さん達にしろ、そういう噂が無いわけでも無かったよ、
これぞいわゆる『政治力の世界』だよね」
「政治力の世界、ねぇ」
「そう、事件をもみ消したり、報道を変えたり、あるいは新たな法律を作っちゃったりして世界を表から牛耳ることが出来る勢力の一部だね」
「でも、行くのか?」
恐る恐る聞くと、まつりはやんわりと頷いた。
「面白そうだろ?」
と、なんだか愉快そうに、どこかニヒルな笑みを浮かべる。
「ただ、まつりたちが出来るのは、相談に乗ることと、推理と、提案だ。
そういう争いや揉め事の対処は専門家に任せるよ」
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