第16話 おでかけ

「咲ちゃん、お待たせー」

「大丈夫です。今来たところですから」


 日曜日に咲ちゃんに誘わえrて遊びに行くことになった。


「それじゃあ、行きましょう」

「そうだね」


 2人で電車に乗って移動を始める。中はそこそこ混んでいたけど、2人とも座ることが出来た。隣の県までの移動だから20分くらいかな。そっちの方が買い物できる場所とか遊べる場所が多いから。そうして咲ちゃんといろいろ話をしているうちに目的地についた。


「まずは、どうしよっか?」

「そうですね、夕方には映画を見たいのですが、まずはお昼食べませんか?」


 時間もお昼時だし、ご飯をたべることになった。高校生でそこまでお金が無いので、ファミレスに入る。2人とも注文して、運ばれてきた料理に手を付ける。

 ご飯を食べながら2人で今日の予定について話をする。その間咲ちゃんは笑っていて、今日一緒に遊ぶことを楽しみにしてくれているみたいで嬉しい。


「じゃあ、とりあえずいろんなお店見てまわろっか」

「はい」


 ファミレスを出て買い物へと向かう。いろいろなお店を見て回って、ある雑貨屋に入る。店内を回って見ていると、咲ちゃんが髪留めのコーナーで立ち止まっていた。


「髪留め探しているの?」

「はい」


 陳列されている棚を見ると、いろんな色、いろんな柄の髪留めがある。


「あの、一緒に選んでいただけませんか?」


 しばらく悩んでいた咲ちゃんは、選びきれなかったのかわたしにも聞いてきた。


「わたしが選んでいいの?」

「はい、春先輩に選んでほしいです」


 そう言ってくれるのは嬉しい。


「うーん」


 改めて棚を見る。緑色のシンプルな髪留めが目に入る。


「これかな」


 選んだ髪留めを手渡すと、「ありがとうございます」と満面の笑みでお礼を言ってくれる。


「ねえ、咲ちゃん」


 わたしが選んだ髪留めを、大切そうに見つめている様子からは、本当に喜んでくれていることが伝わってくる。


「わたしも同じの欲しいから何色がいいか選んでくれない?お互いプレゼントしよ」


 せっかく2人で出かけたんだから、一緒の思い出をつくりたい。


「はい!」


そうしてしばらく考えた後に咲ちゃんはピンク色を選んでくれた。2人で選んだ髪留めの会計を済ませてお店を出る。


「春先輩、ありがとうございます」

「わたしも嬉しいよ。ありがとうね」


 咲ちゃんは買った髪留めを早速つけてくれて、照れくさそうにお礼を言ってくれる。わたしも早速つけてみた。それから2人でまたいろんなお店を回って楽しい時間を過ごした。気づけば時刻は16時ごろ、映画の上映時間が近づいていた。


「どれが見たいの?」

「これです」


 あ、最近話題の恋愛映画だ。たしか、女の人同士の恋愛を描いたドラマだっけ。


「いいよー」


 チケットを買って中に入る。席は結構埋まっててなんとか隣同士の積を確保できた。


「咲ちゃん、恋愛の映画とか好きなんだね」

「えっと、最近、話題で気になって」


 恥ずかしかったのか咲ちゃんは頬を染めてそう言った。私も見るし恥ずかしがらなくても良いのに。

 映画はとても面白かった。部活の後輩を好きになった先輩と、そんな先輩の気を知らずに慕っている後輩。後輩の距離の近さに困惑しながら、後輩との関係や自分の気持ちと葛藤する日々、後輩に好きになってもらおうと決意して頑張って最終的には想いが実る。そんな話だった。ものすごく面白くて、つい感情移入しちゃった。


「すごく良かったねー」

「はい、とても面白かったです」


 映画を見た後、喫茶店でゆっくりしてから帰路に就く。時刻はもうすぐ20時。駅までの道は地元と違って明かりでいっぱいだ。


「あの、今日はありがとうございました」

「わたしも楽しかったよ。ありがとうね」

「…あの」


 隣を歩く咲ちゃんを見ると、なんかもじもじしながらこっちを見てくる。


「手、繋ぎたいです」




 いつからか、咲ちゃんのことが気になるようになってきた。気になるというのはそのままの意味で、ふとした時に咲ちゃんのことを考えて目で追ってしまう。映画の中の先輩は後輩に恋をしていた。彼女のことを考えて、彼女の行動で一喜一憂してた。

 わたしはどうなんだろう。わたしのこの気持ちは映画の中の先輩と同じなのか。もうとっくにわかってる。咲ちゃんに遊びに誘われたとき、2人きりで遊びたいって言われたとき、すごく嬉しかった。咲ちゃんがどう考えているのかはわからないけど、私にとって今日はデート。


「いいよ…繋ご」


 今だって咲ちゃんと手をつないでドキドキしてる。もっと近づきたいって思っちゃう。この気持ちは何なのか。答えはもう出てるけど、だからこそ怖い。映画みたいにハッピーエンドで終わる保証なんて無い。もしかしたら咲ちゃんもわたしを好き。なんて思ったりするけど、違ったら、想いを伝えてしまった時に咲ちゃんとの関係が壊れてしまうかもしれない。それだけは嫌だ。

 でもやっぱり一緒に居たいって思っちゃう。今日だってそうだ。物でも思い出でも何でもいいから、咲ちゃんと同じものを共有したいって思った。映画みたいにはいかないかもしれないけど、恋人じゃなかったとしても咲ちゃんの特別になれたら嬉しいなって。

















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