俺とあいつの日常
カズラ
「ありがとう親友よ」
「ん?」
自室で仕事をしていると不意にいい匂いが鼻をかすめる。何の匂いか気になり、仕事に区切りをつけた。
おれの仕事はフリーランスのステージダンサーだが同時に振り付けも考えて踊ることがあるため自分で動画を撮り先程まで観客に見せるのにふさわしいか確認をしていたのだ。
おそらくルームメイトがいるであろうリビングへと向かい、ドアを開けると案の定そこにはキッチンで何かを作っていたルームメイトの黒斗がいた。黒斗とは中学からの付き合いで親友だ。
「黒斗、何作ってるんだ?」
そう声をかければ黒斗は振り向き赤い瞳におれをうつした。
「ああ、暁雷、仕事は終わったのか?」
「おう、だいたい終わった。で、何作ってるんだ?」
「ケーキ作ってんだよ。」
「ケーキ?」
あの匂いの正体はケーキだったのか、いやでも、男二人だけで食うのか。
そもそもなぜケーキを焼いているのだろう。
「いや〜、材料あったからケーキ作りたくなっちまってな。もうそろそろ出来るから座っとけ。」
「おう。」
黒斗がいきなり何かを作り出すのは今に始まったことではない、今まで黒斗が作ったものから何を作っているのか推測していると、いつの間にか目の前にコーヒーとガトーショコラが置かれていた。
黒斗の仕事はカフェの経営をしているため黒斗の作るものは全て美味しく、さらに家事もできる。家庭的な男だな〜とはいつも思っている、なんなら第二の母さんだろ。
「ほら、どうぞ。」
「サンキュー、うまそうじゃん。」
焼き立てのガトーショコラだ、これはかなりうれしい、なぜならおれはケーキの中ではガトーショコラが一番すきなのだ。
「うま…、まじで美味い。これコーヒーと相性抜群だわ。」
「そうか、ならよかった。」
一口食べてみると、チョコレートの程よい苦味と甘さが口の中に広がり、本当にこいつとルームシェアして良かったと思えるくらい美味い。
「あ〜、暁雷。」
「ん?どうした?」
ガトーショコラを食いながら黒斗を見ると少し、顔を赤くして、こちらを向き、手のひらサイズの箱をおれの目の前に差し出した。
「誕生日おめでとう。」
「……へ?」
思いもよらない言葉を言われ、間抜けな声が出てしまい、飲もうとしたコーヒーをこぼしかけた。いや、そんなことよりも
「おれって今日誕生日だったのか…、よく覚えてたな黒斗。」
親友がおれの誕生日を覚えていて、しかもプレゼントまで用意してるとは思わなかった。黒斗は誰かの誕生日を祝ったり、プレゼントを用意なんかしなかった、いや、言葉だけなら祝ってくれるが、プレゼントを用意することなんてなかった。
「まぁな、ちなみに、ケーキ作りたくなったってのは建前で本当は、お前の誕生日ケーキとして作ったんだよ。」
「そうだったのか…プレゼント、開けてみていいか?」
「どうぞ。」
黒斗から渡された手のひらサイズの箱にはシールが貼っており’’Happy Birthday!’’と書かれていた。
「おお!綺麗だな!」
箱を開けてみれば、中には鋭い爪のような形をした水色の宝石がついているネックレスが入っていた。
「オレの知り合いにジュエリーデザイナーがいてな、加工してもらったんだよ。宝石はアクアマリンな、宝石言葉は聡明・勇敢・沈着、お前にぴったりだろ?」
「そうか〜?ていうかこれお前がデザインしたのか?」
黒斗は意外と美的センスがかなりいいからおそらくこれも、こいつがデザインしたのだろう。
「そうだぜ、まぁ、仕事とかでつけてくれや。」
ネックレスを手に取り、光にあてるとキラキラと輝いていた。確かにこれをつけて踊ったらとても綺麗だろうと思った、とても嬉しいプレゼントだ。
「黒斗。」
「ん?」
おれが声をかければ黒斗はこちらを向いた、だからおれはネックレスをつけて、笑顔で言ってやる。
「ありがとうな!大切にする!」
その後は昔の思い出を語り合い、親友と笑いあった。
俺とあいつの日常 カズラ @KAZURA0308
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