第3話 諭す
ハネト事前申請リストの中の中井愛実は、意見が真っ二つに割れた。2日掛けた個別案件会議も、それならばこの目で確かめましょうのフィールドワークになった。俺としてはバランスも大切とは思うが。
バディは千手院鞠庵さんで、中井愛実の勤める青森農業寄合本部は、鞠庵さんの顔パスで何処にでも入館出来た。そしてここ迄入れるのかの開発部に到達し、鞠庵さんが主任中井愛実さんにご機嫌は如何かしらと、窓辺の来賓ソファーに強引に引き込む。
愛実さんは治水設計抜群で、ここ数年暑過ぎますけど、稲作の品質は落ちてませんよ。それでも日本酒の出来はになると、そこは流行病で供給量が過多になるから、若干古米も有りますよと静かに言葉を置く。
鞠庵さんは、ゆっくり切り出す。
愛実さんと一緒に田畠に同行するけど、あの虹に激しく包まれる感覚は何かしらねと。愛実さんは右腕を捲っては、手首の付け根の5つの黒子を見せた。それは点だが目でなぞるだけで正確な五芒星だった。そして循環しての五番目の水の位置に左親指で押し込むと、外の駐車場の車にポツポツと雨音が弾け始めた。そう、愛実さんは法僧以上の五行の水を招き寄せる功徳を持っている。そして交渉が始まる。
「私は小学生の頃からねぶた祭に完全参加して、どうしてもの生き甲斐ですよ」
「よくお聞きなさい。強力過ぎては、肝心の風神雷神のねぶた8台が破損してしまいますよ。台無しは切ないわよね」
「ですけど、愛美さんの五行の水があれば、想定熱帯夜を幾らかでも和らげられますよ。湿気が篭ったらゲリラ豪雨でどんな災難がです」透かさず、鞠庵さんから左手をピシャリと叩かれた。
「仕事馬鹿の愛実さん。ここからは交換条件です。このままでは一体いつ結婚出来るのかしら。小学校入学式でお母さんが40代では、お友達のお母さんと連携が取れるのかしらね」
「あっと、そこ、実に痛いところです。そう、どうか鞠庵さんのお力添いを」
「勿論です。順次縁談の機会を、お気の召すままに、大船に乗りなさいな」
「あっ、ええと、どう男性と付き合ったら…」
ここで、愛実さんが疼いたのか、窓の向こうではインターネットで漸く見つかるかの三重の虹が浮かんでいた。愛実さん、確かに危険な要素だった。
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