第15話 AIで生成した小説 ~現代ファンタジー編~

異世界ファンタジーの次は現代ファンタジーにチャレンジします。大まかなストーリー展開としは、AIオタクの青年が父から引き継いだ下町の食堂をAI活用で大繁盛を目指す、というものです。今回のデモンストレーションでは、主人公が父から店を引き継いでからもうすぐで1年、というところからAIがつくったレシピの料理が話題を集めて大繁盛するところ+αまでをざっくりと作成しています。



◆AIに入力する最初の書き出し


・タイトル

AI食堂~AIオタクの大繁盛レシピ・恋はピリ辛~


・キーワード

AI、オタク、AIオタク、食堂、レシピ


・登場人物

六三郎: 34歳。AIに興味を持ち、AIを自作する夢を持つ。父親の源蔵から実家の家業「ドンブリ食堂」を引き継ぐが、客足は減り苦戦中。

源蔵: 75歳。六三郎の父親であり、「ドンブリ食堂」の主人。60年間、食堂を営んできたが体調を理由に六三郎に店を委ねる。


・内容

食堂の中を見渡すと、今日も客はいなかった。

六三郎が父親から店を継いてもうすぐ1年。

順風満帆な未来とは程遠く、しかも店じまいの危機に直面していた。

「俺の料理はそんなにまずいのか……」

毎日、六三郎は昼過ぎになると同じことを心の中でつぶやいた。

「AIですごい料理のレシピが生み出せたら客足も戻るかもしれない。そうだ、AIが食堂を救ってくれるに違いない」

辛い日々の中、六三郎にとっては明るい未来を妄想するのが息抜きだった。

ある日の深夜、六三郎は夢をみた。



◆AIを活用して作成した続き


AIが作る理想の食事を食べたあと、目覚める――そんな夢を見た。


「六三郎、目を覚ましてくれ」


突然呼びかける声に反応して、六三郎は自分の部屋に気配を感じた。『AIオタクの大繁盛レシピ』という料理本が置いてあった。


「俺は、六三郎......」


しばらくしてから気が付く。ここは『AIオタクの大繁盛レシピ』を作っている部屋であるということ。


一体、何がどうなっているのか。六三郎は思わず唸った。妄想していた未来予想図が現実のものとなって表れたような感覚だった。繁盛するAI食堂の主人を務めるのはもちろんAIオタクである六三郎。彼にとって理想の食堂とは、AIがすべて食事を作ってくれることだった。現代のAIの発展によって、料理人は必要なくなった。AIが食堂を救ってくれるに違いない――そんな安易な妄想が、現実になったのだ。


そうなると、六三郎はAIオタクの未来を託されたかのように感じて内心では喜んでいた。


六三郎が聞いた声の持ち主には心当たりもなかったが、不思議なことがおこり今はどうでもよかった。


それから、毎日、閉店した後、AIオタクのレシピ本作りに勤しんでいた。


それは自分が考える理想の食堂を現実にする試みだった。作ったのは、AIが客の好みを分析して作る定食だった。AIの趣味で並べられる野菜の量が変動したりするが、手間をかけないところが利点で、世間には受け入れられるはずと考えた。六三郎は店じまいも考えたが、今では前向きに考えていた。


「AIが俺の店を救う……」


六三郎は、世界中の料理レシピや食材、そしてドンブリ食堂のオリジナルレシピをAIに学習させ続けた。そして一旦、AIの学習が終わり、AIにランチメニューのレシピを考えさせた。


「えっと、下町のおじいさん、おばあさんが好きなランチメニューを考えて!」


AIが考えたレシピは、麻婆豆腐。それも絶品とAIは太鼓判を押した。この麻婆豆腐のレシピは、麻婆豆腐の常識を塗り替えるAI食堂の真打だった。


「なかなか凄いぞ!次は、子供が喜ぶおやつのメニューを考えて!」


AIが考えたレシピは、子供向けのクリームシチューとプリンだった。AIは子供の好きな料理のレパートリーが少なすぎると悩んでいた。そこで六三郎は、AIに子供の夢を叶える料理を再学習させた。これは将来の大繁盛AI食堂の礎になり得るものだった。


「いいぞ、未来の名物料理だ!次は、このカレーライス」


AIが考えたのはカレーライスだった。カレーライスって子供も好きな食べ物だから、このレシピを考えさせたのだが、AIは子供好きが高じて子供にカレーライスのレシピを教えるカリキュラムを作ったのだ。 他にも、AIはコンビニの売れ筋商品のレシピまでを作成していた。このコンビニの売れ筋商品も、将来はAIが開発する。


「凄いことになってきたぞ」


六三郎は興奮が抑えきれなかった。その夜、父・源蔵にAIがつくったレシピについて意見を求めた。


「むう。よくわからんがAIというヤツは、料理人なのか」


75歳の源蔵には「AI」がなんであるか理解できなかったが、AIが考案したレシピには目を丸くしていた。


「早速、明日からAIのレシピで営業してみればいい」


源蔵はAIレシピの実践を推した。


翌日、AIがつくったレシピの料理は、常連客から大絶賛された。あっという間に地元の話題になり、ひと月後には行列ができる店まで繁盛していた。


そんなある日、地元の役所の広報誌が取材にやってきた。


「はじめまして。役所の広報誌を担当している花園ミズキです」


六三郎の前には、オタクアニメのヒロインが実写になったような二十歳前半の女性が名刺を差し出しながら挨拶をしてきた。


昔から引きこもりがちなところもあったし、近年はドンブリ食堂のことなどで忙しく、恋愛から遠のいていた六三郎には刺激的なキャラクターの登場だった。


「あの、花園さんの好きな料理はなんですか?」


六三郎は、自分自身でも唐突な話しかけだとわかっていたが、挨拶代わりに無難そうな質問をぶつけてみた。


すると、ミズキは笑顔で六三郎にこたえた。


「ひじき!」


唐突な返事に六三郎は面食らった。


「え?」


六三郎の頭の中で、ひじきが唐突に浮かんだが、ひじきは料理のレパートリーがない……。


「シブいですね」


六三郎は、笑いながらそう返した。


「そうなんですよ。周りからもシブい、っていわれてます」


同じように、ミズキも笑いながら答えた。


六三郎とミズキは、後にふたりの思い出の料理が「ひじき」になることは、知らずに。


「そうですか。じゃあ、ひじきと言えば......やっぱり、鯖寿司ですよね!」


六三郎は、恥ずかしそうに答えた。


「(なんだ。この可愛いキャラは)」


六三郎は初対面の可愛らしい女性キャラクターに興奮していた。


「あ、いや、あの」


六三郎は必死に言葉を考えた。


さらに、ミズキの次の言葉は衝撃的だった。


「それじゃあ、私は好きな料理は鯖寿司です」


ミズキの答えに六三郎はショックのあまりに椅子から倒れそうになった。鯖寿司、ひじき、鯖寿司、ひじき、鯖寿司、ひじき……。気がつくと、六三郎は鯖寿司に夢中になっていた。


<終わり>



いまやAIがレシピを考えることは現実的な話で、近い将来には、食堂やレストランがAIを活用して地域のオリジナルメニューの開発と提供を行い、繁盛を目指すこともありそうです。このようなAIと料理の親和性をイメージして、今回の現代ファンタジーの書き出しを考えて作成しました。AIならではの部分としては「AIオタクの大繁盛レシピ」をつくる部屋を創造したことです。AIが生成した文章に「六三郎、目を覚ましてくれ」というものがありますが、この声の主は不明です。「AIの神様」「料理の神様」など想像が膨らみますし、AIを活用して小説をつくる上で、大きなアイデアと言えます。後半、「花園ミズキ」という広報誌の女性が登場しますが、これはAIで文章を作成している過程で、ヒロイン的なキャラクターを登場させたいと考えて手動で追加しました。ただ、その後の展開の大半はAIが生成したものです。個人的に好きなシーンは、六三郎が花園ミズキに好きな料理を聞いたときに花園ミズキが「ひじき!」と答えるところです。おそらく、私が手動で執筆していたらこの発想はありませんでした。このシーンの流れで六三郎が「そうですか。じゃあ、ひじきと言えば......やっぱり、鯖寿司ですよね!」というセリフもAIが生成したものです。なぜ、ひじきと言えば鯖寿司なのかはミステリーですが、AIが生成したものを楽しみながら作成できるという点はAIによる文章生成の醍醐味のひとつかもしれません。今回のデモンストレーションは、AIレシピで食堂が繁盛し、ヒロインが初登場したところで終了しています。仮に、これを長編物として作成するのであれば、その後の展開として「ライバル出現」「AIレシピ対決」「ヒロインと恋愛」「奇抜なAIレシピ」などを追加していくことで面白さを演出できるはずです。



【次回予告】AIでホラー小説に挑戦

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