第2話 小説を書いたきっかけ。執着と怨念、時には勢いの中段蹴りが有効

 ※2022年5月ごろに書いていたnoteのエッセイに、加筆修正しています。


***


 わたしはとにかく子どもの頃から本を読むのが好きで、かといって、そうそう本が沢山ある家でもなく、裕福な家庭でもなく、その上、図書館も子どもが行ける距離ではない……。


 そんな環境でしたので、お誕生日に、クリスマスに、そんな時には、「本買って! 本を買って! なんでもいいから!」そして、読むものがなければ、早起きして、新聞をなめるように、端から端まで読み、父親に「新聞は、朝一番に父親が読むものである」そう言って叱られる。こんな感じでした。


 文章を読むということは、わたしにとって、あらゆる世界と時代に出かけることができる手段であり、楽しい世界に旅立つ手段、そして、もはや止められぬ欲望でした。特段、賢くなったかといえば、ひたすら貪り読み続ける、ただの活字中毒、ただの過文症でございました。


 それでもぼんやりと、自分でも小説を書いてみたい、当時、小学校に入学したところでしょうか? そんな風にも思ったものです。


「小説を書いてみたいんです。小説家になりたいんです。どうしたら、小説家になれますか?」


 そんな質問をしたわたしに、学校の担任の先生は、実に現実的な大人の対応で、「そんなことは無理ですよ。小説家とは、特別な選ばれた人がなり、そして書くものです」そうおっしゃりました。


 で、物語の主人公であったならば、それをばねにして、「わたしは絶対に小説家になる!!」そんな風に原稿用紙に向かう、文章の書き方を学ぶ。ノートに書き溜める。


 そうなるはずなのですが、凡庸で、しごく素直な少女だったわたしは、「そうか、ダメなのか……」なにか違うことを探すか……。


 それっきり、小説家になるという夢は忘れてしまい、趣味として読書をしながら、どんな姑息な手段で手に入れたのか、黒帯と有段者証(写真がぼけてる)を隠し持つ大人になっていましたが、心の底にあったのは、義務教育課程の間に出会った歴史のH先生の授業でした。


 受験などを考えれば、はたしてその授業が良かったのか、悪かったのか、それはもう分かりませんが、とにかく、わたしが歴史好きになったのは、H先生のおかげです。


 決して暗記だけの授業でなく、分かりやすく、それでいて、もっともっと自分で、もっと深く知ってみたい。そんな風に思わせてくれる、楽しい授業でした。素晴らしい先生に巡り合えたのは、生涯の宝です。


 そしていまこのご時世、ふとリモートの合間に、「そういえば、小説を書いてみたい。書いても良いのではないか? 幸い発表できるサイトがあるみたいだし」


 それでも、一抹、百抹の不安を覚え、友人(※まったく読書しないアウトドア派。もちろん、今現在も、ここの存在も知らない)に、さりげなく聞いてみました。


「いいじゃん! ただなんだから、とりあえず書けばいいじゃん! ただなんだから!」


 小学校の先生とは真逆に、背後から背中を蹴飛ばしてくれました。多分、中段蹴り。


「……そ——だね、ただだもんね——」


 さて、そうなれば、なにを書こうが、どういったものを書こうか? そこで思い出したのは、歴史が大好きなことと、H先生でした。


 わたしも知らない誰かに、『もっと歴史を知りたい、もしくは文学を知りたい、でも敷居が高すぎる……』『歴史なんか大っ嫌い!』そんな人に、楽しく読んでいただける小説を、歴史に触れるきっかけになる小説を、なんとか書けないものか……。


 そんな訳で、第一の被害者は、世界に誇る絢爛たる王朝絵巻、源氏物語の『光源氏』だったのでした。(※ただの個人的恨みという気も致します。)


 初めに投稿したのは、『小説家になろう』でした。いまは『カクヨム』のみ掲載し、カクヨム限定小説もあります。(色々あって、葵の上奇譚の残骸が「ティーポット」というサイトにありますが、そちらは本人のわたしにも、どうにもできず、途中放置に……なぜだろう……)


 で、初期の成果なのですが、コツコツコツ→「誰も読んでくれない……」 コツコツコツ→「ブクマもつかない……」そして数か月~。


 そりゃそうです。『小説家になろう』も『カクヨム』も、とんでもない量の小説の数、大海の一握の砂、しかもなにせ、書き方の作法が、『てにおは』すらも分かっていない。


 書いては上げて、上げては修正し、やがてブクマが数個ついたころでしょうが、誤字報告が届いては修正し、勘違いして覚えていた日本語の使い方を「そこ、意味が違いますよ!」そんなお知らせをいただく。そんな感じになって参りました。


 まさに、賽の河原か、サグラダファミリア、書いているわたしもですが、読んでくださっている方にも、もはやギザギザの石の上に正座して、しかも膝の上に石を乗せて読む、そのくらいの苦行状態。


 画面越しに、みなが一丸となって、「光源氏のやろう! あの〇〇野郎をやっつけろ! 一条戻り橋に逆さ吊りにしてしまえ!」そんな、レヴューや感想、ブクマをいただいた方々の、モニター越しの執念と怨念で、できあがったと言って過言ではない『葵の上奇譚』でございました。(※そういう小説なので、正統派の方は、まったくお勧めできません💦)


 そして最後によかったら、ご興味の沸いた方は、本物の『源氏物語』も読んでみてくださいませ。わたしは谷崎潤一郎氏のバージョンがお勧めですが、最近発売された角田光代氏のバージョンが、一番読みやすいです。(相変わらず光源氏は、杓で張り倒したいくらい腹立ちますが、美しい世界です。あと、そのあたりの歴史の大爆笑実話も面白いです。)


 長文ご覧いただき、ありがとうございました。


 また、チマチマ新しい更新したいと思います。よろしくお願いします。

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