第19話 見せしめのエルザ② 光と影 【残酷注意】
小さな小国、スェルランド。
そこの公爵令嬢にバラに例えられる令嬢が居た。
名前はミランダと言った。
ミランダはとても美しくスェルの薔薇と呼ばれる美貌を持っていた。
そして、第二王子フリードと婚約も決まり幸せに成る筈だった..
だが、王立学園での生活も残す事後3か月となり、学園主催のパーティーが開かれた時の事だ。
「数々のエルザへの陰湿な嫌がらせ。申し開きはあるか、ミランダ」
エルザへの嫌がらせ...覚えは全く無い。
何かの間違いに違いないわ。
「エルザへの嫌がらせ...身に覚えは無いのですが?」
本当に身に覚えは無い...確かエルザは騎士爵の令嬢で一度挨拶を交わしただけの筈。
「身に覚えが無いだと! あれ程、陰湿な事をしながらお前という女は良心が全く無いのか!」
本当に身に覚えが無い...そもそも騎士爵の令嬢なんて下の身分、そうそう会う事も少ない。
「フリードさま...本当に何の事か解りません」
周りは静まりかえり、生徒たちは距離を置いて私たちを見ている。
誰もが、黙ってその様子を見ていた。
「フリード殿下何を言われるのですか? 私は嫌がらせ等受けておりません!」
そうよ、私は何もして無いわ。
「エルザ、もう庇わなくて良いんだ、無視や取り巻きを使っての嫌がらせの数々、そんな陰湿な事を繰り返すような女なんてな」
フリード殿下の言葉を聞いた周囲が、ひそひそと話し出す。
「俺は貴様のような女の婚約者であったことが恥ずかしい」
解ってしまった。
これは茶番だフリード様は心変わりした..だからこんな事をでっちあげたんだ..
「では、フリード殿下はどの様にしたいのですか!」
「黙れ! 気安く俺の名前を呼ぶな!」
「そうですか、ではどのようにしたいかお決め下さい...」
殿下は雰囲気に酔っているのか、両手を広げて声を上げる。
まるで舞台に立つ役者のよう。
「今日この時より、フリード・ルーランはミランダ・ポートランドとの婚約を破棄する!...そして、俺は、代わりにエルザ・クロウエルとの婚約を宣言する」
この婚約破棄はあり得ない..王子と言えど勝手に貴族と王族の婚約を破棄など出来ない。
ましてこの婚姻は王が決めた物、何人もそれを買える事は出来ない。
その結果、第二王子のフリードは捕らえられ処刑されてしまった。
ミランダは代わりに第一王子と結婚する事になった。
エルザはただ王子が片思いしていただけで、きっぱり「虐められてない」と証言したから無実が証明されお咎めはなかった。
本来なら、これでハッピーエンドの筈だ..だがこの物語はこれで終わらない。
ミランダはフリードを愛していた。
フリードは美しく、スェルに咲く白百合と呼ばれていた。
そして、ミランダは薔薇..いつか二人で花園ような生活を送るのが夢だった。
小さい頃から許嫁となり、その人生しか考えて無かったミランダ..
彼女はフリードを愛するように教育されただから、他の男性等愛せない。
しかも、第一王子は、フリードと違い...醜かった。
そんな男に抱かれて子供を作る人生は彼女にとって地獄しかない。
そして彼女は歪んでいった。
寝取っても居ない..それどころか自分の無実を証明した「エルザ」に逆恨みした。
彼女さえ居なければ、幸せだったのに..と。
王族は自分の息子の不始末から、責任として結婚する前から「王女」を名乗る事を許した。
ミランダは王女の地位を利用して、自分を助けたのだからとエルザに騎士の地位を与えた。
だが、これは巧妙な罠だった。
エルザに復讐する為に「騎士にした」これでエルザは自分の手駒どうとでも出来る。
すぐさまエルザを一番過酷な地に行かせた。
そこは今まさに隣国と戦争の最中だ、無事には済まない..筈だった。
だが、エルザは剣の才能に恵まれていた、エルザのジョブは「姫騎士」だった。
姫騎士は「剣聖」の次に優れたジョブ..激戦の地でも仲間を助け導き勝利を納めた。
多分、ここでエルザが泣きを入れたか、あるいは相手側の人間に犯されでもすれば、それでミランダの気はおさまったのかも知れない。
だが、エルザは勝利してしまった。
しかも敗戦濃厚な状態から勝利したから「戦場の女神」とまで言われる程人気が出た。
美しくて強い、そんな彼女には沢山の貴族から婚約の申し込みがくるのは誰でも解る。
だから、ミランダは更に歪んだ。
練習試合という形で騎士団長をぶつけた。
その際に勝ったらエルザを犯しても良いと伝えた。
エルザにその旨を伝えたら
「成程、戦場であれば犯され殺される..同じですね」
そう言って涼しく流された。
結果は、エルザの顔に大きな傷は出来たが..騎士団長は腕を失い死んだ。
本来ならエルザに咎めなど無い..自分を犯す..そう言う条件なら真剣勝負の筈だ。
「エルザ、何ていう事を..剣の指導をしてくれた相手を殺すなんて」
「待て、これは決闘の筈だ、私は無実だ..」
「私は練習試合と申し上げましたよ..何を馬鹿な事を..」
「嵌めたのだな..許せぬ..」
エルザはミランダに斬りかかった..だが複数の騎士に囲まれ捕らえられた。
エルザが目を覚ますと..そこは地下牢だった。
「目が覚めたようね..どう? 少しは惨めな気分になったかしら?」
「何故だ、私はミランダ様に嫌われるような事をした覚えは無い」
「私の人生は終わりだわ、大好きなフリードは殺され、ガマガエルような第一王子と結婚して子供を作らなくちゃならない..あんたに想像がつくかしら」
「つかないな..私なら嫌なら断る」
「私は貴方みたいに強くない..そんな事出来ないわ」
「逆恨みするな」
「そう、これは逆恨みよ..解っているの!だけどあんたが壊れない限り止まらないわ..その目が嫌いなのよ..」
「それで、私をどうするんだ?」
「3か月此処に閉じ込めるだけ..終わったら外に出すわ..そして貴方の人生にはもう干渉しないわ」
「本当だな」
「約束するわ」
此処は地下深くの特別監獄..日の光は一切届かない..どんな屈強な人間でも数日で壊れた。
終わりよ、終わり。
1日目..監獄なのに、食料も水も出て来ない..騙された。
彼奴は此処で私を餓死させる気だ..
2日目..喉が渇いた、だが此処は暗くて湿っている..見えないが探せば上から雫が落ちてくる場所があった。
そこの下で口を開いて居れば..水は手に入る。
だが、食料は手に入らない..
3日目...お腹が空いた..だが食べる物は無い..幾ら目を凝らしても何も見えない。
手を動かすと偶に何かがぶつかる..トカゲか? 私はそれを手に取ると口に運んだ。
生臭い血の味がしたが背に腹は代えられない
4日目..暗いのは嫌だ..
「だれか助けて、助けてくれー」幾ら叫んでも助けは来ない..ただ喉が痛いだけだ。
5日目..暗いのは嫌だ..
「たずけて くれ」喉が枯れた..もし助けてくれるなら、愛人だろうが奴隷だろうがなる..「たすけて...」
6日目...死んだ方がましだ..
だが死ぬ方法が無い..当たり構わず頭をぶつけるが痛いだけで死ねない..鼻も額もぶつけて血が出ているが死ねない。
7日目..死にたい
誰か殺してくれ..そう心で叫んだが、そんな者居ない..解り切っている。
8日目..棒を見つけた。
顔も痛いし体も痛い..だが、死にたいとは思わなくなった。
だったらどうする、この棒でも剣の代わりに振るう..それしかやる事はない。
2か月後..心眼に目覚めたのかも知れない。
トカゲの動きが見切れる..他に居た虫も見切れた。
見えないのに何処に居るかが解る..トカゲを食べるのに飽きた..虫は不味い
だけど..死ぬという恐怖はもう無い
3か月...彼奴がきた
彼奴がきたという事は此処から出られるという事だな。
「ひぃ..化け物..」
「化け物とは随分ご挨拶だな..約束だ、だして貰うぞ」
「いやあああっ来ないで..いやああ」
「貴様ぁああああああ出さないなら殺す」
私はミランダ相手に持っていた木の棒を振った、その枝が目に入りミランダは片目を失った。
怪我したことで冷静になったのかミランダは話し始めた。
「よよよよくも、私の目を..良いわ出してあげるわ..自分の姿を見て絶望するが良いわ..」
「約束は守るんだな」
「奴隷に落としてやる..それも他国に」
化け物..自分の姿に気が付いて居ないのね..老婆の様な白い髪に、岩にぶつけたのでしょう潰れてしまった顔。
最早人間には見えないわ..まだオーガやゴブリンの方が真面よ。
「ほう、戦闘奴隷にでもするつもりか? 」
「さぁね知らないわ..そんな事..あんたなんて買い手はつかないわ..銀貨1枚でもね」
「馬鹿な、私はこれでも騎士だ..」
「そう、売れると良いわね..」
私は樽に詰められ他国に奴隷として売られた。
何時か、ミランダは殺してやる..その復讐心は絶対に忘れない。
「しかし、この樽の中身はどんな奴隷なんですかね」
「女の奴隷だそうだ..廃棄奴隷として売って欲しいそうだ」
「廃棄、それじゃ..性病女..」
「違う、処女らしいぜ..」
「処女で廃棄信じられねー..それじゃババアか?」
「それが16歳らしい」
「何だそれ、掘り出しもんじゃないか..」
「良いか、商売物に手を出すなよ」
「解っているさ..引き渡すまで手を出さない..でも廃棄奴隷で訳ありなら銀貨5枚もしないだろう..みて良かったら売って貰うよ」
「そうか..それなら問題無いな」
途中問題も無く奴隷商について奴隷を引き渡した。
「輸送料は払ったぞ、何か用があるのか?」
「その樽の中の奴隷をみて見たい..」
「あっ女だからだな...確かに廃棄奴隷なら女でも金貨1枚しない..欲しいのか?」
「見てからだ」
「それじゃ開けてやる..」
「うわぁぁぁぁぁぁぁっ、」
「おい、これが欲しいならタダでやる」
「いいいいいらねぇ..いらねぇええよ..」
「畜生..此奴を押し付けたかったから他の奴隷が安かったのか」
「私がどうかしたのか?」
そこには顔が潰れて老婆の様な白髪の化け物が居た。
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