第13話 天使の正体
「ごめんね、話の順序がごちゃごちゃしてて。能力についての詳しいことはまた後でね。……さてと、何をどこまで話してたっけ─っとそうだ、地界が荒廃した理由だった。」
紅茶を啜り話を続ける。
「さっきも話した通り、この世界の存在が地界にバレてしまった。それだけならまだ良かったんだ。」
メモーリアの悲しそうな声だけが部屋に響く。
「かなり研究の進んでいたワープ技術が完成するのに時間はかからなかったよ。研究者達は天界の座標を保存しておいたの。ワープ技術が安全に使えるようになった時、こっちの世界の謎を解明できるようにね。」
「待ってくれ。一つだけ聞いてもいいか?」
「どうぞ、遠慮なく聞いて。」
「どうして、ちきゅ…地界のことをそんなに知っているんだ…?今の話だと、それぞれが独立した世界のはずだ。なんで…」
「それについては私が説明するよ。」
今まで話を聞いていたハイルが口を開く。
「簡潔に言うとね、私達は元人間なんだ。」
「…は?だ、だって、じゃあなんで羽と輪が…見た目は天使じゃないか。」
「そうだよ。見た目は天使。でも、中身は人間だ。さっき、この世界は神様を中心に回ってるって言ったでしょ?」
そういうとハイルは静かに笑みを浮かべてこう言った。
「神様は死んでしまった人間の魂を選別してこちら側の世界に引き寄せ、天使としてやり直させる力を持っているんだ。つまり私達は既に1度地界で死んでいるということなんだよ。」
言葉を失った。信じられないことだが、矛盾もしていないこと、死んでいるという発言が出た瞬間の空気の変わり方からやけに納得してしまう。
一度、死を経験しているというどうしようもなく重たい事実が場を支配するなかで、ラディアータだけがにこにこと微笑みながら口を開く。
「私はそういうのよくわかんないんだけど、違う世界でもう一度新しい人生を送れるなんて、すごいことだよね!」
「っ!」
メディキーナは焦った様子で小さく息を飲むと、雰囲気に似合わない彼女の発言を塗り替えるかのように、即座にわざとらしいおどけた口調で言った。
「え、選ばれる条件は至ってシンプルだよ!言葉を選ばずに言うとすれば、”人間の頃に不幸だったかどうか”だけだ。」
…嫌な言い方になってしまうが、あまり空気を読むのが得意ではないのだろう。発言の幼さやメディキーナの庇うような言動からみるにおそらく、メディキーナが姉でラディアータが妹だろうか。
最悪な雰囲気と会話の流れを断ち切るようにメモーリアは小さく咳払いをした。ラディアータに探りを入れるような視線を送りながら。
「…少し話が逸れちゃったね。本題に戻るとしようか。」
二人の─正確にはラディアータの発言やメモーリアの視線に少し違和感を感じた。が、その違和感がどこから来ているのかわからない。今はとにかく、世界のこと、自分のことを知らなくてはいけない。
俺はその小さな違和感に蓋をした。
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