第12話 この場所の名前は、天界

「うーん、どこから話せばいいんだろ。君は何も知らないもんね。」

「とりあえず、この場所を教えて貰いたい。ここは、何処なんだ?」

「この場所の名前は、天界てんかいっていうんだ。わかりやすく言うと、地上の上。宇宙とはまた違うんだけど、雲よりずっと高い場所にある。」

「てん、かい…?」

 信じられない。空に世界がある?そんな話聞いたことがない。

「急に何言ってんの?って感じだよね。でも本当なんだ。あと、落ち着いて聞いてほしい。」


 リアは決心したように深呼吸をし、こう言った。

「地界…つまり地上は、もうほとんど生きている人はいない。荒廃して、もう君の知っている世界はに等しい。」

 思考が停止する。

「…なんで?なにがあった?鮮明ではないけど昔の、記憶みたいな夢を見た。俺は、普通に地上で暮らしていたはず。なんで生きて、天界に…?」

「……今より1000年くらい前かな…?君が覚えていた年の翌年。2023年、天界の存在が明らかになった。今までずっと見つからずにいたのに。」

 リアや、オーキッド姉妹の表情が少し曇る。

「ワープや宇宙について研究している人達が起こした、ほんの些細な数値のズレ。たったそれだけのことで、天界は見つかった。ってやつだね。」

 1口、紅茶を飲む。味わって飲むほど心に余裕がなくて、味がよく分からない。


「そもそも、天界は宇宙の一部。周りから見れば宇宙と同化していて分からないけどね。」

「天界は、1つの世界なんだ。同じように太陽も空も、星も空気も水もある。僕達のように見た目は違うけど、住人もいる。」

「異世界ってやつだよ。の見た目がほとんど同じだから同化できるんだ。」

 オーキッド姉妹の補足で何となく意味は理解できた。でも、現実味がない。そもそも、ここにいること自体が夢のような気がしてならないのだから。


「後の説明に関わってくるけれど、異世界ということは、起こる事象が全く違う。」

「この世界は、1人の神様を中心に回っているの。そして、私達のように天使になったら神様から個々に能力が与えられる。」

「本当に、異世界って感じなんだな。」

「そうだね。ちなみにボロボロだった君の体。ハイルが治したって言ったけど、ハイルので治したんだ。」

 納得したと同時に、何か特別な力でないと治せないほどの怪我をおったことを再認識し、恐ろしくなった。

 逆に考えれば、ハイルがいなかったら俺はここで話をしていることはありえないからだ。

 そんな思いを胸に抱えながら俺は、信じたくなくても信じざるを得ないリアの話を聞き続ける。

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