第8話 葬式
「………あ、れ?」
俺、は。何をしていたんだっけ?
大人たちの背で隠れてしまい、周りの様子は確認できない。
何故か、この場にいる全員が黒と白を基調とした服に身を包んでいた。
『まさか、□□さんが□くなってしまうなんて……』
『遺産ってどうなるの?』
『あの子達、悲しくないのかしら…。泣かないなんて。』
『□□だけじゃない。…………ご□親を亡くしたのは。』
ああ、そうか。
これは葬式だ。
誰の?誰のだっけ?そもそも、俺はなんていうんだっけ?
今はそんなことはどうでもいい。
ヒソヒソと話す人々。話の内容は当然良いものではない。
『あの子たちどうなるの?』
『悪いけど、私は引き取れないわよ。□□さんには申し訳ないけどね。』
『どこかの施設に預けるしか……。』
『私の家はちょっ─』
…視線が痛い。
重い雰囲気に耐えられなくなった俺は人気のない場所を求め、この場を立ち去ろうとした。
部屋の隅。
ふと、服の裾を握りしめながら下を向いて佇む、同年代くらいの女の子が目に映った。
「だ、大丈、夫…?」
……やってしまった。大丈夫なわけが無い。誰の葬式だか知らないがこの場にいるということは葬式の関係者なのだろうから。
『……□□くんは、大丈夫なの?』
「……え?」
……聞き取れなかったが、名前、なのだろう。
俯いたまま、声を震わせて少女は続けた。
『だって、悲しいのは私だけじゃないよ。』
「………」
『□□くんだって、泣いていないだけで本当は悲しいんでしょ?』
……あ。思い出した。
そうだ。これは、俺の両親の葬式だ。
いや、正確には俺と彼女の両親の葬式だ。
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