第7話 多分、死ぬ
目の前が突然キラキラと輝いた。
窓から入り込む光を綺麗に反射する何か。
「は?あ、あれ?……え。」
目の前にまで迫ったそれを避ける暇もなく俺の視界は真っ赤に染まり、視界がぼやけた。
ガシャン、パリン。音がするとほぼ同時に俺の体は何処かへ打ち付けられる。途端に体が熱くなる。
あまり見えていないので分からないが、恐らく体が倒れたのだろう。
耳元で絶えず鳴る何かが割れる音。
次の瞬間、廊下は叫び声で満たされた。
「──っ、キャァァァァ!だ、誰か早くっ担架!」
「何、今の大きな音─って、ひっ!」
響き渡る声。その声を聞き俺は自分の体に起こったことを確認しようと目を開けた。
床に広がる赤い液体。その液体にまみれながらも光を反射する何か。
目のピントを必死に合わせ、目の前にあるものを見る。そして、
俺はこの物の正体を知り、絶句した。
ガラス片。
大きなものから砕けて粉々になった小さな破片まで。大量のガラスが辺りに散らばっていた。
ガラスと赤い液体。真っ赤に染まった視界。
自分の身に起きたことの重大さを初めて理解した。
咄嗟に目を動かし、視界に入ったのは自分自身に突き刺さった大量のガラスと、ズタズタに切り裂かれた服と皮膚。
同時に、さっき熱いと感じた部分が急激に痛みだす。
痛い。熱い。苦しい。痛い痛い痛い。
あまりの痛みに叫び声を上げようとした。
喉も傷付いたのだろうか。自分の喉からは掠れた声が少し出るだけで、叫びというよりは必死に息を吸っているような音しか出てこなかった。
口から溢れ出る血。低くなる体温。狭まっていく視界。遠のく声。痛みが和らぐような痛覚が鈍くなる感覚。
多分死ぬのだろう。死ぬのは嫌だが、この地獄からは早く抜け出したい。
『君のこと、助けられなくてごめん。』
突然頭に声が響いた。この場にいる誰のものでもない、知らない声。
その声を最後に、意識は途切れた。
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