第6話 目の前が突然キラキラと輝いて

「んで、改めて聞くけど2人は誰?」

「あ、ごめん。すっかり忘れてた。」

 2人は同じタイミングで立ち上がるとそそくさと俺の目の前まで歩み寄る。

「じゃあまずは僕の自己紹介から。」

「僕の名前は、メディキーナ・オーキッド。」

「私の名前は、ラディアータ・オーキッド。」

「僕、メディキーナは薬剤調合の仕事してる。よろしくね。」

「私、ラディアータは看護の仕事とか患者の見回り担当してるよ。よろしく。」

「………改めて見ると、見た目も声も本当にそっくりなんだな。」

 2人は同じくらいの身長で、前髪の分け方やつけているリボンの髪飾りの位置まで左右対称。まるで鏡の中から片方が飛び出してきたかのように、不自然なくらいそっくりだった。

「それじゃ、今度は君の番ね。」

「うっ……俺も自己紹介したいところなんだが、なんか記憶が無いらしくて……。自分の名前すら覚えてないんだ。悪い。」

「え〜そっか…。ならしょうがないね。まあ、ずっと君って呼ぶのもおかしいし、仮の名前でも作れば?」

その手があったか。

「そうさせてもらおうかな。」

そう返したものの、名前なんてそんなにすぐ決まるわけが無い。とりあえず、話を切り上げてゆっくりと考えたいが、なかなか話が終わる気配もない。

「2人とも〜。話の途中でごめんだけど、ハイル先生、彼に用事があって……。」

ナイスタイミング。

「実はここに来たのは君をリアが呼んでたからなんだよね。あんまり待たせると怒られそうだし行こうか。」

頷いて数歩歩いたあと、俺は振り向いて言った。

「良さそうな名前俺も考えとくからさ。2人も良かったら考えておいてくれると嬉しい。」

2人は呆然とした後、「いいの!?」と目を輝かせながら嬉しそうな顔をした。

「もちろん。せっかくなら一緒の方が楽しいと思って。」

「じ、じゃあ、また今度会う時までに考えとくね!」

「また今度!」

俺は頷いて自然と手を振っていた。無意識のうちに振っていたのだから、きっとこれがなんだろう。

「早くしないと置いてくよ〜。」

廊下に目を向けると数メートル先にバインダーを掲げて、手招きしているハイルの姿があった。

「すぐ行くよ」と部屋を出る。

廊下に出たその刹那。

頭上で何かが割れるような音が二人しかいない廊下に響き渡った。

何事だと思い咄嗟に上を見上げる。

目の前が突然キラキラと輝いた。

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