第5話 双子?
腹にとんでもない衝撃が加わる。
「!?かはっ」
息が出来なくなる。
夢の世界から突然現実に引き戻された。
「あ、ごめん強すぎたっぽい。」
「何やってんの!?人間の頃の記憶飛んだ?弱くて脆いんだからすぐ死んじゃうのに……。殺すつもり?」
「いや、まあ、起きたし…うん。これでもハイル先生の助手やってるんだよ?大丈夫大丈……。」
「そういう問題じゃないでしょ!?」
ゴホゴホと咳き込む俺を放置し、言い争いを続ける2人。
その姿は、まるで鏡の中の自分自身と話しているかのようにそっくりだった。声も似ているので、きっと双子なのだろう。
まあ、そんなことはどうでもいい。とにかく
「うるさい。」
「は?」
2人の怒りを帯びた声が重なってこちらに飛んでくる。
あ、これはまずい。つい、言葉に出してしまった。
「なんでそんな事言うの?」
「私達、先生に頼まれただけなんだけど。」
2人はジリジリとこちらに近づいてくる。
その隙にこっそりと部屋に入り込んだやつを俺は見逃さなかった。
「あの、」
「早く質問に答えて!ねぇ、なんで?」
「後ろ。」
「は?後ろが何__あ、」
2人が振り向いた視線の先。そこにはにっこりとした表情を浮かべて、ハイルが立っていた。
見る見るうちに2人の顔が青ざめていく。
「ねぇ。ここは一人部屋だけどさ。周辺には別の患者さんもいるんだよね〜。」
「…はい。」
「私の言いたいこと分かるよね。2人とも。」
怖い。目が笑ってない。めちゃくちゃ怒ってる。
「あ、あははは……。………ごめんなさい。」
どうやらこの2人、ハイルには逆らえないらしい。
まあ、今にも殴られそうな雰囲気が出ているやつ相手に反抗できる方がどうかしているとは思う。
「壁が薄い訳では無いけど、ちょっと建物が古くなってて、声が響くから。気をつけて。」
ハイルは怒られてしゅんとしている2人に忠告をし、こちらに向かってきた。
「いや〜2人がごめんね〜。悪気は無いと思うんだけど、2人とも短気だからさ。許したげて?」
「いや、まあ別に今後同じことさえなければ許すけど……」
俺はちらりと落ち込んでいる2人を見て言った。
「あの……どちら様?」
病室が静まり返る。そう、ハイルは2人を知っているようだが今の俺にとっては眠っていたところ、急に腹を殴ってきたやつと何故か俺にまでキレてきたやつ。ただのやばい2人組にしか見えない。
分かることといえば、ハイルやリアと同じように輪と羽が着いている天使。
そして、2人は多分双子だということ。さっきも思ったことではあるが、腹を殴った方が右側に。キレてた方が左側に、横並びになる。すると、前髪の分け方や髪飾りの位置、動き方など外見は全て鏡の中から飛び出してきたように左右対称だった。
美しすぎるくらいにだ。
まあ、こんなことを俺が考えている間にも、2人は俺に名前を教えていなかったことについてハイルからさらに圧力をかけられ、さらに落ち込むのだった。
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