第4話 夢の続き

 何かを蹴るようなとても大きくて鈍い音がした。

 恐る恐る目を開けて見るが、どう見てもメモリールームではない。

 見覚えのあるモニター。白衣を着た2人の研究者。


 先程見た夢の続きだ。


 大きな音とともに破られたドア。

 破られたドアの向こうにはスーツに身を包んでいる何やら偉そうな人物が1人。そいつを守っている男数人がゲラゲラと笑いながら中に入ってきた。

「やっと□イ□チを押したか。手こずらせやがって。」

「世間が今のお前のことを知ったらどうなるんだろうな?考えただけでゾクゾクしちまうよ」

 男たちがベラベラと好き放題話をする中、1人の男の声で場が静まる。

「まあ、いいさ。被検体にはこのまましばらく眠ってもらおうか。1〜2年経ったら起こすとしよう。それから実験をするぞ。いいな?」

「じ、実験……?」

 助手は信じられないというような目で男を見た。

「今この被検体は世界で唯一コールドスリープに成功しようとしているんだ!………まだ成功ではないがな。まあ、もしもなんの以上も確認できずに目覚めたとしよう。」

 次の瞬間男は声を荒げて言った。

 「体の健康状態は?免疫は?そもそも、記憶・知能に変化はあるのか?そこの君、分かるかい?」

 男は助手を見つめ答えを求めた。助手は突然のことに驚きながらも冷静に答える。

「…わかりません。しかし、ラットなど人以外でのデータに問題は─。」

「わからない!そうだ、わからないんだ!これは人類初の試みで分からないことだらけ。」

 部屋の中に響き渡る男の声。誰も男の言動を止めなかった。いや、あまりの剣幕に、止められなかったのである。

「『体に害は無いのか』『スリープ中に目覚めて窒息で死んでしまうことはないのか』数々の不安や疑問はわからないから発生する。」

 男は水槽を一瞥する。

「彼はその鍵を!を解明する鍵を持っているんだよ!」

 男は息を切らし、よろめいた。咄嗟に部下は手を出し男を支える。

朝葉あさば様。これ以上はお体に障ります。もう、戻りましょう。これ以上進行してしまったら─」

「わかっている!それ以上何も言わないでくれ。頼む。」

 男の名前はどうやら朝葉あさばというらしい。何かの病気を患っているようだった。

「すまない。見苦しい姿を見せてしまったね。」

 朝葉は気を取り直して博士たちに向き合った。

「今まで人類は新しい技術を生み出し続けてきた。その過程には大勢の犠牲が付き物だ。彼はその犠牲の1人となり、引き換えに大勢の命を救うこととなるんだよ。」

 助手は朝葉を睨みつけ言葉を絞り出した。

「だからって…そんな簡単に犠牲になんてさせられない!」

「もういいよ。」

「そんな非人道的な事が許されていいわけが─」

夏花なつかっ!」

 今まで黙っていた博士が突然大声を出すものだから、その場にいたほとんどの人物はピタリと動きを止めた。

「もう、良いから…。」

 博士は立ち上がり、くるりと朝葉と対面になるように向き合う。

「実験の件…了解しました。ただし、条件があります。」

「条件?」

「はい。それは─」

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