第3話 診察開始
「じゃ、今から診察に入るね」
「あ、うん。よろしく、お、願いします。」
冷静に返事をしたつもりではあるがもう既に緊張していて言葉が上手く出てこない。
「……緊張するようなこともしないよ。気楽に受けてくれればいいからさ。ね?」
リアが微笑みながらそう話しかけてくる。
普段ならその笑顔と言葉をなんの躊躇いもなく信じてしまうだろう。
だが、流石に診察がキツくてパニックに陥った人を見てからではもう遅い。誰が信じるというんだよ。
とはいえ、どこにいるのかも分からない上に自分のことも分からないのでは話にならない。
今はどんなに怪しくても怖くてもこの2人に頼る以外の選択肢など俺には残っていなかった。
「…んじゃ、診察の準備できてるからそこの椅子に座ってもらえる?」
覚悟を決め、言われるがまま椅子に座る。
「私が4つ数えてる間息を吸う。もう4つで息を吐く。これを目を閉じて繰り返して欲しいの。」
「え、そんなことでいいの?」
「うん。まあ、準備運動みたいなもんだから!はい、いくよ──」
1・2・3・4
1・2・3・4
1・2・3…
1・2…
少し声が聞き取りにくくなった。水の中にいるような音が少しぼやける感覚。
何故だろう。
やけにうるさい自分の心音。体がこの行為に対し、警報を鳴らす。
だが、どうしてもやめることが出来ない。このリズムに合わせているこの呼吸をやめようとしても、反射的に瞬きをしてしまうように、やめられないのだ。
体が言うことを聞かない。
少しずつリアの声が遠のいていく。
ふわふわとした気持ちいい感覚。
俺はこの感覚を何処かで感じたことがあるような─。
「行ってらっしゃい。夢の世界へ。」
ふとリアの落ち着いた声が聞こえた気がした。夢の世界…?それって一体……
その思考を最後にギリギリ保っていた意識はとうとう手放された。
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