第2話 2人目の天使
「俺は…誰だ?」
暖かな日差しが冷たくなった気がした。ハイルの表情が一変する。ニコニコとしているお人好しのようなやつではない。目つきを鋭くしている。
医者。そう呼ばれるに相応しい表情。
「……場所を、変えましょうか。アタシと一緒に来てください。立てます?」
「……はい。」
◇
案内されたのは『メモリールーム』と書かれた部屋。向かい合うように置かれたソファーにはハイルと同じように、羽と輪が付いている女性が座っていた。
「おっと?ハイルか。ちょーどいいとこに来たね。君が連れてる彼を先に見たいけど、頼みたいことがあるんだよね。」
彼女はそう言いながら部屋の奥に視線を移す。視線の先には涙を流しながら部屋の隅で人が倒れていた。
「この人診察してたんだけど、ちょっとキツかったみたいでさ〜?パニック起こしたんだ。そっちのベッド空いてるよね?1個で良いから貸してくんない?」
「なんでアタシがリアの患者を連れて…。」
「え、空きがないから。」
なんだかよくわかんないけど、多分リアって呼ばれてるこの人も医者なんだろうな…。
「ごめんね~、すぐ戻るから座って待ってて!」
そう言い残すとハイルはリアと呼ばれた少女と共に行ってしまった。
何が起こっているかろくな説明もされずに取り残された俺は待つことしかできない。なんだこの状況…?そもそもここは何処で俺は誰なんだ?
「…覚えてることだけ整理してみるか。紙とペンは…あった。」
【覚えてることリスト】
・起きる前の日付(2022年11月26日)
・言葉
・一般常識
思いつくものはこれくらいか…。
「「え、覚えてること少なすぎない?」」
キレイにハモった声が後ろから聞こえた。
「び、びっくりした~。いつからそこに…?」
「書き始めた辺りからずっとハイルと一緒に居たよ?」
いたなら声くらいかけてくれてもいいのに……。
「とりあえずそこのソファーに座ってくれる?そこ私の席だから。」
そう言ってさっきまで俺が座っていた席に腰をかける彼女。
ボブくらいの長さの栗色の髪。金色の輪には銀色のチェーンが絡まっている。
そして、窓から降り注ぐ光に照らされた羽は、現実とは思えないほど美しく光を吸い込み輝いていた。
「私の名前は、メモーリア・オルテンシア。リアでいいよ。ここの部屋…メモリールームの担当してる。よろしくね。じゃ、今から診察に入るけど─。」
俺がその姿に見惚れているうちに自己紹介は終わり、リアの診察が始まった。
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