魔人戦記 ~無能だと言われていた俺は実は最強でした~

アストラル

プロローグ 

「ったく!お前は何やってもクソだな!」


「いたっ!」


また頬を殴られた。俺の名前はベン・マルカス。4大列強国の一つである「カリスト王国」に住んでいる。あ、なんで殴られているかって?それは僕が「固有能力パーソナルスキル」というものを持っていないからだ。この世界には「固有能力パーソナルスキル」と呼ばれる生まれながらにしてもつものがある。そのほかにも「通常能力ノーマルスキル」と呼ばれるものや魔法も存在する。しかしそれらは固有能力パーソナルスキルには遠く及ばない。そのため、基本的に固有能力パーソナルスキルを持っていない人は落ちこぼれとされ一生奴隷であったりと不遇な生活を強いられることになるのだった。そして俺は…


「全く…これだから固有能力パーソナルスキルを持っていないやつは…まぁいいや。とにかく!早くそこの掃除を終わらせておくんだよ!分かったね?」


「はい…」


俺は主人であるバルトン侯爵にそう言われ、はぁ…とため息をつくのだった。




「終わったのかい?」


「はい、侯爵様。全部屋の掃除、滞りなく終わりました」


「終わったのはいいが…次からはもっと早く終わらすんだよ、いいね?」


「はい、今日は申し訳ございませんでした」

「分かったらいいのだよ。さ、早く部屋に戻るんだよ」


俺は時間をかけてでもしっかりと掃除を終わらせた。そして自分の部屋(一応部屋はもらえている。まぁ納屋みたいなところだが)に戻ろうとしたその時だった。


「な、王城が燃えてる…」


そう、侯爵の屋敷はものすごく王城に近く、どの窓から見てもかならず立派な王城が見えるのだが…今はその立派な王城が火に包まれていた。


「…くっ。ベン!今すぐ馬車を持って…いや、飛ぶ方が早いか」


そういうとバルトン侯爵は窓から外に出た。しかし数秒後には空を飛んでいた。通常能力ノーマルスキルの一つ、「飛行」である。そうして王城に飛んでいった主人を片目に、俺は走って王城に向かうのだった。こう見えても魔法は結構使える。少しでも役に立てるのなら…と思い走るのだった。




「キャァァァァァァァァァァ!」


「悪魔か…でもまだ下位クラスだな。『影縛り』!」


王城に向かう途中、俺は悪魔に襲われている人を発見した。それを見て俺は現在使える中で扱いが難しく、さらに一番解かれにくい魔法属性である「影」を使った。影は便利だ。いろんなことに応用が効くから。


「大丈夫ですか?」


「あ、ありがとうございます…」


「向こうにはまだ火も回っていませんし悪魔たちもいません!急いで!」


「わ、分かりました」


そうしてまた、王城へ行くのだった。その後もたくさん悪魔と遭遇し、『影縛り』を使ってそこに放置していた。動けず、魔法の使えない悪魔なぞ普通の人間でも倒せる。俺は悪魔を倒さずに捕らえることで、自身の魔力もそこまで使わなくても良いと考えた。そしてそれは上手くいくのだった。




「侯爵様!」


「べ、ベン!?なぜお前がここにいるんだ?」


「手伝いに来ました。魔界軍の襲撃ですよね?」


「そうだが…そうか、魔法を教えたのはわしだったな…」

そうしているうちに魔力感知を怠ったのだろう。もしくは能力スキルで反応しなかったのかは分からない。しかしそのことで俺は全く気づかなかったのだあ。ここに上位悪魔が来ていることに。


「…ベン、危ない!」


侯爵様が守ってくれた。でもなぜだ?いっかいの奴隷にしかすぎない俺を助けたのは…しかし俺にはそんなことを考える余裕なぞ存在しなかった。


「おのれ…ぶち殺してやる!」


そうして俺は過去に経験したことのないほどの魔法術式を唱えた。いつもなら無詠唱でもできるのだが、命中率と威力を上げたい時はやはり詠唱したほうが圧倒的にいい。


「喰らえ、『龍炎砲レッドドラゴンブレス』!」


普段なら紅く染まった火で作られたドラゴンを模した火属性系統の上位魔法だ。しかしその魔法は、俺の怒りをうけてか青く染まっていたのだった…





「侯爵様!」


「ベン…か。お前は無事だったんだな」


「そんなことはどうでもいいんですよ!侯爵様の傷が…なんで俺みたいなのを庇ったんですか?」


俺は急いで侯爵様の元に駆け寄った。見れば侯爵様の体の至る所から血が出ている。出血多量で危篤状態にあるというのは一目で分かったのだ。でも俺は聞きたかった。どうして奴隷である俺を助けるのか、ということを。


「…そうか、お前はまだ自分のことをよく知らないんだったな。今から言うことはよく聞くんだぞ」


「そんなことよりも侯爵様の血が…」


「わしはじきに死ぬ。自分が一番分かるし、何よりわしの固有能力パーソナルスキルがそう示しておるわ」


「でも!」


「最後にお前に伝えておくことがあるのだ。お前は固有能力パーソナルスキルを持っていない訳ではないのだ。むしろ誰よりも強い能力スキルなのだぞ」


「え?でも…」


俺は今まで侯爵様が言っていたことを思い出す。しかし…


「お前にも言いたいことはあるだろう。でも我慢して聞いてくれ。お前の固有能力パーソナルスキルは世界を滅ぼせる力があるから隠していただけなんだ。その能力スキルは…『模倣コピー』。他者の持っている能力スキルを自身のものにでき、さらにそれらを組み合わせて新たな能力スキルを作ることが可能というものなんだ。だから今まで隠していたんだ。それはすまなかった」


「いや…侯爵様が謝ることじゃないですよ!」


「頭の良いお前なら分かるな?なぜ俺がお前を奴隷として扱ったか」


「分かりますよ…納得です」


「発動条件だけ…ゴホッ!」


「大丈夫ですか!?」


話していると侯爵様がいきなり血を吐いた。しばらく無言の時間が続いたが、侯爵様は唐突に、


「…能力スキルの発動条件は、相手の能力スキルの名前を知ること…だからわしの固有能力パーソナルスキルとは相性がいいだろう…わしの固有能力パーソナルスキルは『心眼マインド・アイ』と言う。能力の詳細は…ゴホッ!対象者の能力スキルとその者の健康状態を見れると言うものじゃ…後のことはわしの部屋の金庫の中に手紙がある…パスは○○○○○じゃ。あとは頼んだ…ぞ…」


こうして侯爵様は息を引き取った。後に残されたのは衝撃の事実と、「『心眼マインド・アイ』をコピーしました」との頭に響くメッセージだけだった…

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