確認

畏霊の群れを殲滅した長峡仁衛は息を漏らして地面に座る。

壁に背中を付けながら片目を瞑ると共に、力を放出する。

祓ヰ師には、脊髄部分に臨核と呼ばれる器官が存在する。

その臨核から術師の源である万物生成の力・神胤を放出した。

頭部部分に力を込めると、長峡仁衛は声を漏らし術式を扱う。


かい


その言葉と共に、長峡仁衛の片目にはこれまで封印した畏霊の情報が開示される。


――――――――――。

水霊牟すらいむ』×27

小振鬼ごぶりん』×34

固掘土こぼると』×17

喰狂ぐーる』×28

透頭すけるとん』×39

――――――――――。


「…(随分と洋風な奴ばかりだなぁ)」


そんな事を考えながら、長峡仁衛は膨大な畏霊に対してどうするのか。


かさね


言葉を漏らす。

すると、長峡仁衛の脳裏に、他の畏霊の情報が出現する。


―――――――――――――――――――。

斬人きりうど

性質:幽霊・怪異 形状:変異人体型

 死した魂が不浄となり反転、畏霊と化した。

 戦国時代に存在したとされる剣豪、異形の身であり一国を落とした。

 三本の腕、右腕部が二つ、左腕部が一つである。

 死因は自殺とされ、切腹による自刃が原因とされる。

 生涯不敗の剣豪伝説、その益荒男物語は歴史に残る事は無かった。


熟練じゅくれん度『三十五』

 身体性能(最高位百段)

 武力:三十段 速力:三十段 耐力:二十五段 気力:二十段 霊力:三十段 


異能変遷いのうへんせん

 『斬身之刃ざんしんのじん』剣術を極め、肉体全てが剣と罷り成る熟知の極み。

 『居刀両断いとうりょうだん』溜め技、高速居合切り。

 『撃剣発破げきけんはっぱ』相手の攻撃に合わせて攻撃を弾く。

 『不弓射刀ふきゅうしゃとう』斬撃を飛ばす。

―――――――――――――――――――。


情報を確認して、長峡仁衛はその畏霊に対して先程脳裏に浮かべた畏霊に『斬人』に重ね合わせ…『強化』を施す。


「…熟練度、四十辺りで止まるか。(これ以上は強化は出来ない、…いや、出来るんだろうけど、したらヤバイって頭の中で危険信号が出てるな…)」


長峡仁衛は改めて強化された情報を確認した。


―――――――――――――――――――。

斬人きりうど

性質:幽霊・怪異 形状:変異人体型

 死した魂が不浄となり反転、畏霊と化した。

 戦国時代に存在したとされる剣豪、異形の身であり一国を落とした。

 三本の腕、右腕部が二つ、左腕部が一つである。

 死因は自殺とされ、切腹による自刃が原因とされる。

 生涯不敗の剣豪伝説、その益荒男物語は歴史に残る事は無かった。


熟練じゅくれん度『四十』

 身体性能(最高位百段)

 武力:三十二段 速力:三十三段 耐力:二十六段 気力:二十一段 霊力:三十段 


異能変遷いのうへんせん

 『斬身之刃ざんしんのじん』剣術を極め、肉体全てが剣と罷り成る熟知の極み。

 『居刀両断いとうりょうだん』溜め技、高速居合切り。

 『撃剣発破げきけんはっぱ』相手の攻撃に合わせて攻撃を弾く。

 『不弓射刀ふきゅうしゃとう』斬撃を飛ばす。

―――――――――――――――――――。


情報を確認すると、長峡仁衛は強化後、その素材に使った畏霊の残存数を確認する。


――――――――――。

水霊牟すらいむ』×10

小振鬼ごぶりん』×15

固掘土こぼると』×5

喰狂ぐーる』×10

透頭すけるとん』×20

――――――――――。


「(水霊牟は中々使い易いから、残りはこの水霊牟に使うか…)」


残存を惜しまず、長峡仁衛は自らが封緘した畏霊を広く浅く使役する事無く、狭く深く掘り起こす事に決めていた。

数が多い事に越した事は無いが、多くても統制が取り難い。

長峡仁衛が式神として扱う畏霊は、彼の脳から伝わる命令を直接受け取る様になる。

混戦となれば、一体一体に命令する事も至難。

自動攻撃、と言うやり方もあるだろうが、敵…畏霊も馬鹿ではない。

同類が敵として襲って来る異常は、それは敵として認識される。

味方であれば共食いする確率は低いだろうが、敵であれば問答無く喰らい散らかすだろう。

下手に畏霊を取り込まれて強化をされるくらいならば、最初から強力な畏霊を手駒にした方が良いと考えていた。


「(強化、『重』、と…よし、式神が進化したな)」


脳裏から流し込まれる自らの畏霊の情報。


―――――――――――――――――――。

雲泥韻音うんでぃーね

性質:幽霊・精霊 形状:肉体流体型

 『水霊牟』から進化した畏霊。

 水子の集合体である畏霊が強化により変質。

 一つの個体として生まれ直された。

 蛇の様な胴体をした畏霊。

 美しい声色から怨嗟と悔恨の詞を歌う水上の歌姫。


熟練じゅくれん度『三十』

 身体性能(最高位百段)

 武力:十四段 速力:十五段 耐力:十段 気力:二十段 霊力:二十八段 


異能変遷いのうへんせん

 『流体性質りゅうたいせいしつ』肉体が流体と化す。物理無効。

 『破壊渦音はかいわおん』液体を沸騰させ、物質を破壊させる音を周囲に響かせる。

 『肉体変貌にくたいへんぼう』肉体を変貌させ別個体に偽装する。

 ―――――――――――――――――――。


「(良し…後は適当に畏霊を補充しながら移動するか)」


長峡仁衛は立ち上がる。

この後はどうするかを考える。


「(あの人らが俺を殺したい程憎んでいたのは分かるけど…いざ、殺されるとなるとへこむなぁ…はぁ、小綿に逢いたい)」


そんな事を考えながら長峡仁衛は頬を叩く。


「ッし、ネガるのは此処までだ…出口を見つけて、さっさと戻ろう」


長峡仁衛は自らに喝を入れ込むと、『無限廻廊』から出ていく為に歩き出した。

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