第41話 特訓開始
夕ご飯を食べ終わりあたりが暗くなったころ、カイルと精神安泰魔法の特訓のためにいつもの練習場所に向かった。
「まず、精神安泰魔法は自身のミーを相手に流し込んだり、逆に相手からミーを奪ったりすることで神経活動が制御されてる。ちなみにミーの流れる量は圧倒的にシイムとムンヤの人間の方が多い。
夕方言っていた、もしキートの世界で生きることを選んだ場合はミーをメグミから取り除くっていうのは、正確にはミーの量をキートの人間レベルに下げるっていうこと。
逆に、こっちで暮らすことを選んだ場合には、メグミからキートの人間にミーを流して海馬を制御して記憶を改ざんするってことね。
キートの人間はもともとのミーの量が少ないから、神経細胞を制御するのに対象がシイムのときほど大量のミーは必要ないけど、コントロールはなかなか難しいものになるから覚悟しておいて」
「はい!」
なかなか難しそう。ここに残るムンヤが少なかったのはこのせいでもあったんじゃないかと思う。
「それじゃ、今日から頑張ってみようか。1年前にメグミに精神安泰魔法かけてもらったような気はするけど」
やっぱり、ばれてたか。
正直、思ってたよりも危険な魔法だったから、カイルの体に異常が起きなくてよかったと今は思う。
「まず、基本知識としてミーの量は俺たちムンヤとキートは脳が一番多くて、シイムは心臓あたりが一番多い。
ムンヤは魔法を使うときに右手を使う関係で次に脳から右手にかけてミーが多くなってる。
反対にシイムは左手を使うから心臓あたりから左手にかけて多くなってる。
じゃあ、とりあえず俺の左手にミーを流し込んで手を握らせてみてくれ。」
カイルの左手首を右手でつかむ。
「まずは俺の左手のミーの流れを認識してみて」
目をとじて集中すると、ゆっくりとしたスピードで末端に向かって流れてるのが分かる。
「ミーが分かりました」
「OK!そしたらそのまま少しずつミーを流し込んでみてくれ」
カイルのミーに自分のミーが混ざって流れていく。
「うまいね、そんな感じ。もうちょっと入れてみて」
「はい」
もう少し自分のミーをカイルの左手に流し込んでみる。
「そう!そのくらい!じゃあ、そのまま石を動かすのと同じような意識で俺の手を握らせてみて」
なかなか、カイルの左手は握らない。
5分ほど粘ってみたが、結局動いたのは人差し指と中指の第一関節だけだった。
「ダメそうです」
「そうだね。まあ、練習して初めてでうまくいくことはないよ。もう少し練習する?」
「はい!お願いします!」
なんだかんだで1時間ぐらい練習したが、最終的に曲がったのは人差し指、中指、薬指の第二関節ぐらいまでだった。
「寒くなってきたし、そろそろ戻ろうか」
「そうですね。長い時間ありがとうございました」
「いえいえ、ムンヤはみんな通る道だからね」
「そういえば、カイルさんは診療所でも初めて会った時も、一回触れただけで制御してたと思うんですけど、あれはどうやってるんですか?」
「えーと、ミーは徐々に体から流れていくものだけど、自身が流したミーは体に流した部分にとどまるようにコントロールしてるからできることなんだよね。今のメグミは流したミーは体から流した分だけ出ていってるけど、一回触れただけでやろうと思ったらミーが流れ出ないようにしないといけないから、もっと大変になるよ」
「なるほど、まだまだですね。カイルさんとギルさんみたいに人助けできるようになるには、もっと頑張らないとですね」
カイルは笑いながら答える。
「気が早いな、俺がこれできるようになったのは2年前でずいぶんかかったよ。でも、気合十分だね。頑張って!」
「はい!頑張ります!」
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