第38話 精神安泰魔法
「あら、メグミさん、どうしたの?」
「クムア先生、魔法のことで聞きたいことがあって、物体浮遊魔法以外の魔法はどんな感じで発現するんですか?」
「えーとね、これは結構人それぞれで魔法次第っていうところなんだけど、一番多いパターンが家系の誰かが使えていた魔法をもしかしたら自分もできるのでは?って思ってやってみたらできちゃったっていう感じかな。物体浮遊魔法以外の魔法は親ができれば子ができるというわけではないけど、なぜか家系で似通った魔法が発現しがちなのよね」
なるほど、多分これは常染色体の潜性遺伝というやつなのだろう。
「ムンヤの人間だった場合はどうなるのですか?ここでの家族のムンヤの2人が精神安泰魔法を使えていて、もしかしたら私も使えるのかなって……」
「その二人はギルさんとカイルさんね。確かにあの二人は使えるけど、カイルさんの前のムンヤの中には使える子もいたけどほとんどは使えなかったわね。逆に言うと物体浮遊魔法以外の魔法でムンヤに発現するのは精神安泰魔法しか聞いたことがないわね。でも、精神安泰魔法は本人も発現に気が付きにくい魔法だから、もしかしたら発現していたのかもしれないけどね。なにか心当たりでもあるの?」
「はい、ちょっと。勘違いかもしれないですけど」
「気になるんだったら、誰かに協力して試してもらうのもいいけど、気を付けてやってみるのよ。時々、自分の魔法が制御できなくなって自分や周りの人にけがを負わせてしまう子たちがいるから。まあ、精神安泰魔法だったらそんなに危険なこともないと思うけどね」
「はい!ありがとうございます!今日、カイルさんとギルさんに相談してみます」
「そうね。それがいいわ。最近、コーネルが良く出るらしいから気を付けて帰るのよ」
「コーネルって何ですか?」
「そっか、向こうの世界にはいないのか。大きな牙をもった生き物で、本来はそんなに狂暴じゃないんだけど、今が数年に一回訪れる繁殖期で狂暴化してるのよね。人間以外に唯一ミーの操作ができる生き物なんだけど、ミーの使い方が人間と違ってそのミーを牙に流すことでより鋭くて長い牙になる。もう何人かけが人出てるみたいだから気を付けてね」
「分かりました。さようなら」
帰りに診療所に寄っていこう。勘違いだったら恥ずかしかったから言えなかったけど、先生が言っていた通りなら、私が精神安泰魔法を使えていた可能性は十分ある。
ただ、問題が一つ。
先生は精神安泰魔法は安全な魔法って言ってたけど、カイルによるとこの名前はみんなを不安にさせないようにするための名前で、本来は対象の神経を操作する魔法だったはず。
カイルに初めて会った時、思いっきり体を操作されたのを鮮烈に覚えてるぐらいだから、なかなか危険な魔法なんだと思う。
ぼんやりと考えていると診療所についた。
「失礼します」
「お!メグミ!学校どうだった?」
「またみんなと会えて楽しかったです」
「よかった、よかった!」
「おや、メグミちゃん、いらっしゃい。カイル、休憩にしようか」
「そうですね、今日はけが人が多くて大変でしたね」
カイルは薬草をすりつぶしていた手を止めて、少し疲れた顔をしていた。
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