第31話 再会

「もしもし」

「もしもし、めぐみちゃん?」

「うん、麻美ちゃん?」

「うん……」

「……」

「……この前はごめんね、せっかく電話かけてくれたのに」

「全然、大丈夫、気にしてないよ。電話くれてありがとう」

「私のスマホの番号教えるから、これからはそっちでお話ししよう」

「そうだね」

「080-△△△△-□□□□だよ」

「ありがとう。そしたらそっちの番号にかけ直すね」

「うん!ありが……ごめん、お母さん帰って来ちゃった。切るね。また連絡するから」


プープープープープープー……


単調な電子音が頭の中で響き続ける。


純粋にうれしかった。

電話を掛けてくれて、また話そうとしてくれて。


そう言えば、普通の高校生ならこの時間は学校に行っているはず……

学校に行っていないのだろうか。

いや、麻美のような外交的で明るい子にはそんなことはありえないだろう。


しばらくすると、麻美の番号からメールが届いた。


『さっきはごめんね。めぐみちゃんから連絡くれたときは本当にうれしかった!ありがとう!よかったら今度どこかで会えないかな。』

『私も今日連絡くれてうれしかったよ、ありがとう!私も会いたい。明日、昼に小学校の近くのファミレスで集合でもいいかな』

明日も平日だが......休日の人が多い時間帯に行くのは気が引けるので助かってはいる。

『懐かしいね、そのファミレス。楽しみにしてる!』


やっぱり、麻美への違和感は残ってしまう。

でも、私が詮索することではないのだろう。




明日、麻美に会えることにワクワクとドキドキの間の感情を抱えて残りの1日を過ごす。


やはりうれしいことがあると、心が前を向いてくれる。

3か月前に麻美から電話を切られたときは、この世界をあきらめてしまいそうになった。

でも、やっぱりしっかりこの世界と向き合わないといけない気がしてきた。

都合が良すぎるかもしれないけど……

カイルの言っていた通り、キートの世界から逃げていたらきっと後悔してしまう日が来るんだと思う。


せめて私を大事にしてくれる人のことは大事にしよう。

人のやさしさに気づけるように。

カイル達が私を迎えてくれたように、人と向き合うことから逃げてはいけない。




そろそろ母さんが帰ってくる時間だから、ご飯でも作って待っていよう。

メイと料理をしていた時とは味付けも材料も違うが、向こうでの出来事が思い出される。

みんな元気かな……

みんなは今頃、6人で食卓を囲んでにぎやかにしているのだろう。

食後はカイルがコーヒー片手に医学書でも呼んでるんだろうな。

私も負けないように、医学の勉強を進めないと



「ただいまー」

「おかえりー」

さっきまで静かだった部屋が少しだけにぎやかになった。












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