第22話 またね
明日、私はキートの世界に戻る。
いつもと変わらぬ朝、家族と朝食を食べて学校に向かう。
学校でもいつもと変わらず勉強して魔法の練習。
この生活ともしばらくの間さようなら。
クラスのみんなも私が明日戻ることを忘れているのではないかというほど静かな一日だった。
そして、魔法の授業が終わり、テストが終わっても習慣になっていたみんなとの勉強会を始める。
「メグミ!今日の授業の植物の分類よくわからなかったんだけど、教えてくれない?」
「私も!!」
「うん、いいよ」
そこでも、みんなはいつも通り真剣に勉強をしていた。
ちょっと、寂しいくらいに。
空がオレンジ色に染まり始めたことに気が付いて声をかける。
「もう日が落ちそうだし、そろそろ帰ろうか」
「そうだね!今日もありがとう」
みんなで校門まで歩き、分かれ道でなんとなく足を止める。
リドは背を向けて夕日に照らされながら話し始める。
「お別れ会とかそういうのしねーからな!ほんの9か月会えなくなるくらい、なんでもないことだから。それに、メグミがいなくたって……勉強ぐらいできる……」
「…………」
ルミは静寂を断ち切って話す。
「そうだよ!メグミはどこにいても友達だから、さようならじゃないから……」
再び静寂――――
「わ――――!やっぱり寂しいよ――――!」
ルミが急に抱き着いて、涙を流し始める。
そして、リドの方を向いて声をあげる。
「リドが本当のお別れみたいになるからいつも通り過ごそうって言ったのに!あんたが最初にしんみりしてどうすんのよ!!」
「バカ!しんみりなんてしてねーよ!!」
夕日を眺めながらささやかな抵抗をする。
「ありがとう!お別れじゃないって言ってくれるだけで、私はもう十分嬉しいよ」
「メグミちゃん、3か月ありがとう!いつも勉強とか魔法とか頑張ってるのすごいかっこよかった。私も、めぐみちゃんみたいになれるように頑張るね」
「またね!必ずこの学校に戻って来てね!待ってるから!」
「向こうの世界でも頑張ってね!たまには私たちのことも思い出してね」
誰からでもなくクラスのみんながそれぞれ思い思いの言葉を話し始める。
「ありがとう!またね!9か月後に必ず会おう!」
ルミが再び抱き着く。
「またね」
ルミの背中に手を回す。
その後、いつも通り何もなかったかのようにそれぞれの帰り道に向かって歩き始める。
初めはは魔法どころかミーすら認識できなくて悔しかったこと。
たくさんの人に助けてもらいながら魔法を使えるようになったこと。
みんなに勉強を教えてほしいと頼まれて困惑しながらもうれしかったこと。
クラスのみんながテストでいい点数を取れて満足そうに笑っているのが幸せに思えたこと。
いろんなことを思い出しながら家に向かって歩いていると、思った以上に早く家に着いた。
家の前には、いつも農作業に使っている馬に乗馬用の準備をしているトウヤがいた。
「メグミ!おかえり!」
「ただいま!」この言葉は正直今も少し照れくさい。
「どうしたんですか?」
「今日でしばらくメグミと一緒に食卓を囲めなくなるから、森に狩りに行ってごちそうで採りに行こうと思ってな!」
「もう1時間ぐらいで暗くなってしまいますよ」
「俺は目がいいから大丈夫、それに、1時間もあればきっと大丈夫さ!そうだ!メグミも一緒に行こう!面白いと思うぞ!」
ちょっと怖かったが、好奇心が先立ってしまって結局のところついていくことになった。
トウヤの背中に掴り、ウイマの走る振動を全身で感じながら近くの森に向かう。
この村の風は心地がいい。
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