第21話 友達

クムア先生との話が終わり、教室に戻る。


すると、クラスメイトがこちらに駆け寄ってくる。


「メグミありがとう!」

「メグミのおかげでみんないい点数取れてるんだぜ!」

ルミとリドに続いてみんなも思い思いの言葉を述べてくれる。

「本当にメグミちゃんがいてくれてよかった!」

「再テストなしとか夢みたいだよ!」

「これからもたくさん教えてね!」


心から嬉しかった。

私がこの世界の人たちの役に立つことができて。


でも、さっきのクムア先生の言葉で思い出す。

私はみんなと違う人種で、結局この世界にいても姿が同じなだけで中身が違う。

私がムンヤだと言ったらみんなどんな反応をするのだろうか。

向こうの世界にいたときみたいにまた奇異な目で見られるのだろうか。

私はまだここにいたい。この優しい空間に。


それでも、それでも、―――――

ここまで自分を慕って信頼してくれているみんなに嘘をついているのは、心が痛い。


それに、きっとみんななら受け入れてくれる気がする。

今度は私がみんなを信じる番なのだろう。


「あのさ、みんな……ありがとう!それで、みんなに言ってなかったことあって私、旅人とかそういうのじゃなくてムンヤなんだよね……」


みんなの顔を見るのが怖くてうつむいていたが、みんなの反応が全然なくて不安になって顔をあげてみた。


そこには、なんだかくすくす笑ったみんながいた。


この笑いはどっち?私をさげすむ笑い?

いや、みんながそんなことするわけない。


「だと思ってた!」

謎の空気を言葉で断ったのはやはりルミだった。

周りのクラスメイトもうなずいている。


「え?なんで……」


「ムンヤの子はシイムの世界に生まれた子よりも頭がいいのとか、初めの3年は1年のうち3か月こっちに来るとか、結構有名な話だよ」


「うそ、そうだったんだ」

我ながら驚きで拍子抜けしたような声が出る。


「みんな、いつメグミが本当のこと教えてくれるのかってずっと待ってたんだぜ。友達なのに大事なこと黙っておくのはさみしいじゃねーか」

リドの声はいつもより優しい声だった。


「それに、今回、俺たちが勉強頑張ったのは、自分たちのためだけじゃなくて、メグミが俺たちを友達だって思ってほしかったっていうのもあったんだからな!」


「ちょっと!それは言わない約束でしょ!」

間髪入れずルミが突っ込みを入れる。


「ありがとう……ずっと黙っててごめんなさい。私がキートの世界から来たって言ったら、みんなにどんな目で見られるか怖くて言えなかった。でも、この2か月半、一緒に勉強したり魔法の練習したりして……みんなが向こうの世界で出会った誰よりもあったかくて優しくて……みんなならどんな私も受け入れてくれるかなって」

話しているうちに温かい液体が頬を伝っていく。


「ありがとう!私たちを信じてくれて」

「今年は後2週間、もっとたくさん思い出作ろうぜ!」


「うん!ありがとう!!もっとみんなと遊びたいし勉強したいし話したい!」


いい友達に巡り会えた。

これからは、偽りの自分ではなく本当の自分として真剣にみんなと関わりたい。

本当の友達として……


本当の友達という言葉を思うとやはり、なぜだろう麻美の顔が浮かぶ。

小学校の最後の1年間だけクラスが一緒になっただけなのに。

中学は私は公立で麻美は私立を選んで、そこからはもう会ってない。


いや、いったんキートの世界のことは忘れよう。

残り少ないこの世界の人たちとの生活を精一杯楽しもう!!






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