第19話 人がため

昨日は休みだったけど、今日は普通に学校がある。

学校が楽しみに思っている自分がいるのが少し驚きだ。


いつもの通学路を歩きながら昨日のことを思い出す。


私にも誰かのために行動して、誰かを幸せにしたい。

カイルやギルのように人を助ける力なんてないけど、私にもできることはたくさんあると思う。

これまで、カイルや家族のみんな、ルミや学校のみんながよそ者の私に優しくしてくれたみたいに。

みんなの優しさで私はこの1か月半で大きく変わったと思う。

本当に大きな恩をこの村に来てもらった。

残りの1か月半でこの村にしっかり恩返しがしたい。


でも、少し気になることがある。

カイルはどうして物体浮遊魔法を使うところを見せてくれなかったのだろう。

言葉の通りミーの量が足りなかったからなのだろうか。

そんな感じはしなかったけど……

私の中で一つの仮説が生まれる。


きっと、詮索はよくない。もう考えるのはやめよう。




そんなことを考えていると、もう学校についていた。


いつものように午前中は授業を受け、午後から魔法の授業。


魔法はやっぱりみんなの方が上手で、もう3 m近く上げている子もたくさんいる。

ルミもその一人、もともと魔法は上手だったが最近さらに成長している。


「メグミ!一緒に練習しよう!」

いつの間にか呼び方も変わっている。


ルミは人との距離を縮めるのがうまいと思う。

そして、自分ができればいいっていう考えじゃなくて、みんなで成長しようとしてくれる。

最初は正直、いい人ぶってるとか思っていた。

キートの世界でも何人か優しくしてくれた人たちはいたけど、1週間ぐらいですぐに離れていった。

めんどくさくなったとか、いじめの標的になりそうとかそんな感じの理由なのだろう。

でも、ルミはずっとそばにいてくれた。

ルミにはどれだけありがとうを言っても足りなさそう。

そういえば向こうの世界でも麻美はルミみたいにずっと横にいてくれたな。

その時は周りを恨んでばかりで、全然感謝とかもできなかった。

いつか、麻美にもありがとうを言わないといけないな。


シイムの世界の人は何となくこんな感じの性格の人が多い気がする。

本当に温かい人たちばかり。


「ありがとう!今日は私も3 mあげられるように頑張るよ!」

「じゃあ、私は4 m!!」


そうして、楽しく1日の学校は終わる。


帰りの準備をしていると、リドが声をかけてきた。


「なぁ、メグミ!ここの問題教えてくれ!」

「うん!いいよ!」


最近、こうやってクラスのみんなに勉強を教えるのが習慣になっている。


「なるほど!!ありがとう!やっぱりメグミは教えるのが上手だな!」

「ありがとう、でもそんなことないよ……」

「そうだ!!1か月後のテストのために、放課後メグミが先生で授業してくれよ!メグミが授業するって知ったらみんな絶対来るぜ!」

「そうかな……」

「このままじゃ、みんな再テストなっちまうから頼むよ――」

「……分かった。がんばるね!明日からでいいかな」

「本当か!?やった!ありがとう!」


リドが大きな声で叫ぶ。

「みんな!明日からメグミが放課後授業してくれるって!!!」


教室に残っていた10人ほどの生徒がメグミの机の周りに集まってくる。

「やったー!ありがとう!」

「今度のテストはクラスで再テストゼロ目指して頑張ろう!」

「私頑張るね!」

「メグミちゃんは教えるの上手だからきっとみんな大丈夫だよ!」


「明日から頑張るね!」


想像以上にみんなが嬉しそうにしてくれて驚いた。

人前に立ってみんなに教えるなんて以前の自分からは考えられない。

ここまで私を変えてくれたのは、間違えなくこの村の人たちなのだろう。


これが私なりのみんなへの恩返しだと思う。




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