第18話 疑念
診療所の仕事を見てから、私も人を助けられるような人になりたいと強く思うようになった。カイルみたいに、ギルみたいに。
これまで将来の夢なんてまともにもったことないのに……
夜暗くなりみんなが眠りにつくころ、学校で魔法を習ってから習慣になっている物体浮遊魔法の練習に出る。
初めはミーすら感じることはできなかったけど、今はルミ、クムア先生、カイルとかいろんな人の協力のおかげで20㎏ぐらいの石を浮かせることまではできるようになった。
いつも続けていることだけど、なんだかいつもより気合いが入る。
『私も誰かの役に立てるようになりたい。』
そんなことを思いながら、目の前の大きな石を浮かせるため集中する。
……
心なしか、今日はいつもよりミーの量が多くて石がいつもより浮いて胸のあたりまで浮かんできている。
そんなことを思っていると後ろから声を掛けられる。
「メグミ、お疲れ!今日は一段と高く上がったねー」
「はい!今日はなんだか調子がいいです!」
「いつも頑張ってるからだよ!」
この人の言うことで、いつも胸の中がくすぐったくなる。
本当に人をおだてるのが上手だと思う。
でも、今までその言葉のおかげで助けられた。
「今日、初めてカイルさんとギルさんが働いているところを見て本当に……すごいと思いました!」
小学生みたいな言葉しか出てこなかった。語彙力がどこかへ行ってしまった。
カイルは少し驚いた顔をして話し始める。
「それはありがとう。俺はまだまだだよ。俺たちを頼って来てくれのに助けられないことだってあるし、病気とかのことも分からないことだらけだよ。それに、キートの世界と比べたらすごく遅れてる。俺たちはもっと頑張らないといけないね。」
「でも、きっとこの村の人たちからしたら、希望の場所なんだと思います。」
「本当にそうなれるように頑張るよ。」
「そうだ!カイルさんの精神安泰魔法ってあんな風に麻酔みたいな使い方もできるんですね!」
「そうだね、名前は確かに精神安泰魔法なんだけど、実際のところは生物の神経を制御する能力っていう方が正しいのかもしれないな。神経制御魔法なんて名乗ったらきっとみんな怖がっちゃうから名付けた人はこの名前にしたんだろうね。」
「確かに、少し怖いですね」
「悪いことには使わないけどね。あ!でも、メグミに初めて会った時、確かこの魔法使って無理やりついてこさせたね。ごめん、ごめん」
「あれは怖かったです!今だから笑ってられますけど、誘拐されるのかと思いました!全然体が思うように動かなくて……本当に強い魔法でした。そういえば、他に精神安泰魔法使う人いないんですか?」
「ギルも精神安泰魔法使えるよ。でも、ギルの年齢になるとミーがなかなかもたないらしくて、もう使わないみたいだよ。魔法は体力と違ってなかなか衰えないんだけど、この魔法はちょっと他とは違うみたいでね」
「私にもいい魔法が発現するといいな」
「だといいね」
「それまでは物体浮遊魔法を極めます!そうだ!カイルさんはどのくらいものを浮かせられますか?」
「5mぐらいじゃないかな。メグミぐらいの時、すごい練習したからね!」
「ちょっと、やってみてください!見てみたいです!」
「よし!久しぶりにやってみよう!」
気合十分のカイルは右を腕まくりして石に集中する。
しかし、ふと気が付いたように腕まくりを戻す。
「ごめん、今日は疲れてミーの量が足りないや。ごめん、また今度ね!」
「そうですか、今度見せてくださいね!」
「うん。そういえば、さっき淹れたコーヒーが冷めちゃうから家に戻るね」
そう言ってカイルは足早に家に向かっていった。
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