第16話 仕事

翌朝、起きて階段を降りると、メイが朝食の準備をしていた。

「おはようございます!」

「おはよう、メグミ!」いつも通り満面の笑みで返してくる。


「今日、私学校休みなので畑仕事とか手伝います!」

「せっかくのお休みならどこか遊びに行ってもいいのに」

「いえ、全然お家のことできてなかったので、これを機にいろいろできるようになりたいなって思ったので」

「分かった、ありがとう!そしたらまずトウヤが畑の野菜に水あげてると思うから、お手伝いしてきて!」

「はい!行ってきます!」


家の周りの畑でトウヤが野菜に水をあげていた。

「おはようございます!トウヤさん!お手伝いに来ました」

「おはよう!ありがとう、助かるよ」


私もじょうろで野菜に水をあげていく。

ここだけを見ると、のどかな田舎生活っていう感じがする。

野菜に水をあげながら会話を続ける。


「学校は、楽しいかい?」

「はい!最初は魔法が全然使えなくて大変でしたけど、今は友達も結構できてすごく楽しいです。あの、魔法を右手で使うのってそんなにおかしなことじゃないんですか?学校で右手で魔法使っても誰もからかったりしてこなくて、逆にすごいって言ってくれるばかりで……」

「俺は父さんがそうだから何とも思わないけどな。もし、父さんがそうじゃなかったとしても、右で使う人を見ても気持ち悪いとかそういうことは思わないと思うけどな!だって、人と違うところがあるから面白いんじゃないか!」

当たり前のようにトウヤは笑いながら答える。

「ここの世界はいい人ばかりですね。……あ!そうだ!ギルさんともう一人のムンヤって誰か知ってますか?いつか話してみたくて」

「知ってるよ。でも、その人はあんまり自分はムンヤとは名乗りたがらないからな……きっといつかその人から教えてもらえると思うぞ!」


畑の水やりが終わると、家族で朝食を食べカイルとギルを送り出す。

その後、サヤとライを保育所まで送り届け、家のお掃除をしていた。


メイが急に大きな声を出す。

「あ!!!カイルとギルお昼飯を忘れていってるじゃない!メグミ、悪いけど診療所まで届けに行ってくれない?」

「はい、分かりました!もうすぐお昼なので急ぎますね」

「ありがとう!気を付けてね!」


急いで家を出て、診療所までの道を急ぐ。


「お邪魔します!」

すると白衣を着たギルが出てきた。

「おや、メグミ、どうしたんじゃ?」

「これ、お昼ごはんお家に置きっぱなしになっていたので」

「すまん、すまん、すっかり忘れておったわ。ありがとう。」

「それじゃ、私、帰りますね」

「そんなに急がんでも、ゆっくりしていったらどうじゃ。お茶でも飲んでいったらええよ」

ギルは中に入るように手招きしてくる。

「ありがとうございます。失礼します」


診療所の中は、書類と本でびっしりだった。

それと、ベットが3台と診察用のスペース、それと休憩用のソファーとテーブルが隅に設置されている。

お世辞にもいい環境だとは言えなさそうだった。


すると、白衣を着たカイルが本棚の陰からひょっこり出てきた。


「あれ!メグミ!どうしたんだ、こんなところまで」

「忘れておった昼ごはんを届けに来てくれたんじゃよ」

「そっか!すっかり忘れてた!ありがとう、助かったよ!今日の診療所は落ち着いているから、好きなだけゆっくりしていってね」

そう言ってカイルはメグミにコーヒーを渡す。

「ありがとうございます」


しばらく3人でソファーに座って雑談していると、子供を担いだ女性が慌てて診療所に入ってきた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る