第15話 不思議
私がキートの世界からシイムの世界に来て1か月半が経った。
初めの三か月の半分が経過している。
最近の学校はいつも以上に楽しい。
一か月前にみんなとちょっと違うけど魔法を使えるようになって、魔法の授業についていけるようになった。
最初のころは、普通の座学の方ももともと習っていた内容だったから簡単でつまらなかった。
でも、最近は勉強が苦手なクラスメートに教えてあげて喜んでくれるのが、自分の存在に意味が生まれているようでうれしい。
この頃は連立方程式を習っている。
でも、キートの世界みたいにxとかyとかは使わずに〇とか△とかを使って勉強しているようだった。
授業が終わってからすぐにルミが話しかけてくる。
「メグミちゃーん!今の授業の内容おしえて!!」
「うん!いいよ!」
キートの世界では友達がいなくて、いじめられないように勉強は一生懸命してたのが今役に立っている。
ルミには魔法の件でたくさん気にかけてもらって助けてもらったから、恩返しだと思って丁寧に分かりやすく教えられるように頑張っている。
「いつも、ありがとう!ほんとにメグミちゃんに教えてもらうとすぐに理解できるよ!」
「ほんとに?そういってくれて嬉しいよ!ありがとう!」
すると近くにいたクラスのリーダー的な存在の元気なお調子者のリドが会話に入ってきた。
「ルミ、メグミに勉強教えてもらってるのか?」
「うん!メグミちゃんの授業すっごく分かりやすいよ!」
もしかしたら、リドはよそ者の私がこうやってなれなれしくしているのが鼻についたのだろうか。
勝手に不安になっていたが、リドからの返事でまた私は余計な心配をしていたと気づいた。
「ほんと!俺にも教えてよ!今度のテスト絶対やばいって!連立方程式どころか方程式も分かんないだよー」
「うん!私でよければ全然いいよ!一緒に勉強しよう!」
こんな感じで、勉強仲間兼友達は少しづつ増えていっている。
キートの世界ではあきらめていた状況で、時々我に返ると不思議で幸せな感覚が心に染み渡る。
そんな感じの学校生活を終えて今日も家に帰る。
いつも通り夕ご飯の準備と子供たちのお世話をメイと一緒にこなし、家族で食卓を囲む。
「ねえ、私、思ったんだけど、メグミちゃんのことずっと『メグミちゃん』って呼ぶのどうかと思うのよ。これからは、普通に『メグミ』って呼んでもいいかしら。」
メイの提案にトウヤが答える。
「俺も実はそう思ってた!せっかくの家族なのに、このままじゃよそよそしいじゃないか!」
「メグミ!!!」
「ちょっと!サヤ!あなたはこれからもメグミお姉さんでいいのよ!」
「はーい」
「そしたら、ワシもメグミって呼ぼうかの」
「僕も、これからはメグミって呼ぼう」
ギルもカイルもメイの提案に乗ってきた。
「ね!いいでしょ!メグミちゃん!」
「はい!……ありがとうございます!」
顔が熱くなっていく。
この家族と一緒に暮らすようになってから、こんな不思議な感情になることが多い。
何というか、腹の底がくすぐったいというか、恥ずかしいというか、今まで感じたことのない不思議な感情になる。
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