第12話 普通に

「それでは、魔法の授業を行います!」


外に作られた魔法訓練用のグラウンドに響き渡るクムア先生の掛け声とともにクラスメイトの目が輝きだす。

もちろんメグミもその一人。


「メグミさんはこの授業が初めてなので、まずどのように物体浮遊術を使うのか説明していきます!ほかの皆さんも気を抜かないでしっかり聞くこと!」


「はい!」クラスのみんなが一斉に返事をする。


「まず、私たちの体にはミーと呼ばれる力が流れています。ミーが一番蓄えられている場所は心臓のあたりです。そこにミーを感じられたら、左手にミーを流していきます。指先まで流したら動かしたい物体にまで流し込みます。そしたら、まるで体の一部みたいに物体を動かすことができます。ここで、流し込めたミーの量で動させるものの重さ、動きの繊細さ、距離が決まります。一つ注意してほしいことは、ミーは消耗品です。休息すればまた溜まりますが、一気に使いすぎないようにしてくださいね。」


「はい!」


「そしたら、それぞれで目の前の石を持ち上げてみましょう!」


みんな集中し始め、左手を目の前の石にかざす。

すると数人の石は30 cmほど浮き、他の生徒たちの石は浮くことはなくともモゾモゾと動き出している。


見た目は派手ではないがその光景に圧倒される。

この目で魔法を見たのは2回目だが、やっぱり魔法というものに実感がわかない。


他の生徒たちの魔法に目を奪われていると、クムア先生が近づいてくる。

「ほら、メグミさんもやってみて!まず、目を閉じて自分の心臓の近くに漂っているミーを感じて」


言われるとおりに、目を閉じてミーを感じてみる。






正直に言うと全然感じられない。


「ミーを感じられたでしょ、そしたら左手を伸ばして石にミーを流して浮かせてみて」


再び、言われるがままに左手を伸ばして石を浮かせてみようとしてみる。



予想通り石はピクリともしない。


「きっと、流せているミーの量が少ないのね。練習していけば必ず流せるミーの量は増えていくから一緒に頑張りましょうね」


そう言ってクムア先生は他の生徒たちの見回りに行ってしまった。


隣からルミが声をかける。

「私も初めは全然ミーの量を上げられなくて大変だったんだよね。でも、一か月くらいで持ち上げられるようになったから、きっとメグミちゃんも大丈夫だよ!」


「ありがとう、頑張ってみるね。」




どうやら、ミーを感じることができるのは当たり前のことらしい。

本当はミーが感じられないと言えたらよかったんだろうけど、それを言ってしまったらみんなと違うことになるような気がした。

この世界では、みんなと同じ一人になりたい。








「メグミちゃん、おかえり!」

お家の扉を開くと同時にメイの元気な声が響く。

返事に困っていると再びメイが口を開く。「ただいまは?」

「ただいま」

「おかえり!」


夕ご飯を作っているメイは、器用にミーを使って具材を鍋に入れていく。

「学校どうだった?」

「みんないい人たちで楽しかったです。」

「そう!それはよかった!何か困ったことがあったら、いつでも頼ってね!」

「ありがとうございます。」




よし、今日の夜はミーを感じられるように特訓しよう。

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