第10話 新しい生活
朝日がまぶしくて目が覚めた。
あたりを見渡して思い出す。
そっか、私カイルの暮らす世界に来ちゃったんだ。
ん?昨日の夕方、夕ご飯の前に気づいたら寝てしまったのか……
慌てて部屋を飛び出して1階に降りると、カイルが新聞を読みながらコーヒーを飲んでいる。
「おはよう!お寝坊さん!」
「すみません、夕ご飯の前に寝てしまいました。」
カイルは笑いながら続ける。
「昨日の夕ご飯の時めぐみちゃんを呼びに行ったら爆睡してたから起こさずに寝かしておいたからね。」
恥ずかしくて自分でも顔が赤くなるのがわかる。
「これめぐみちゃんの朝ごはんだから、食べちゃって!」
カイルの指さす方には、フランスパンみたいなパンが二切れ置いてある。
「ありがとうございます。」
「それと昨日言えなかったけど午前9時から学校があるから着替えて準備しておいてね。歩いて30分ぐらいかかるから8時半に一緒に行こう!」
「はい、急いで準備してきます。あの、他の皆さんはどこに行かれたんですか?」
「子供たちは村の子供預かり所に行ってて、ギルは診療所に、トウヤとメイは畑で仕事をしているよ。」
「すみません、私だけこんなに寝坊しちゃって……」
「いいよ、いいよ!昨日たくさん歩いたから疲れただろうし、世界を渡るのは結構体力使うしね!それより、準備しておいで!」
いつも通り、歯を磨き、顔をお洗い、髪の毛を結ぶ。
ようやく今の自分の姿を鏡でしっかり見た。
本当に村の人たちの一員みたいで、やっと普通を見つけたような感じで、
うれしい
一通り準備を終えて朝ごはんを食べに向かう。
席についてパンを食べる。
「はい!コーヒー」
「ありがとうございます。この世界にもコーヒーあるんですね。」
「そうだね、この世界は代々ムンヤが文化を作ってきたから、めぐみちゃんたちの世界と同じようなものは結構あるよ。でも、ここではコーヒー豆は取れないからほかの木の実で代用してて味はちょっと違うんだけどね。」
一口コーヒーを飲んでみる。
「確かに違いますね。やっぱり私は向こうの世界の方のコーヒーが好きですね。」
「そうなの!?僕は断然こっちのコーヒーの方が好きだけどな。」
「あ!もうこんな時間!もう行かないと!」
二人で慌てて立ち上がる。
「学校に持っていくものって何かありますか?」
「勉強道具は今日学校でもらえると思うから手ぶらで大丈夫なはずだよ」
カイルがマントを付けて、二人で家の扉を開けて歩き出す。
少し歩くと、畑仕事をしているトウヤとメイが目に入った。
二人がこちらに気づいて手を振っている。
「めぐみちゃん!おはよう!学校頑張ってね!」
恥ずかしがりながら手を振り返す。
カイルも大きな声で返事をする。「行ってきます!」
しばらく歩いているとギルの診療所が見えてきた。
外にいたギルが「学校頑張っておいで、しっかり勉強してくるんじゃぞ。」
「はい、行ってきます。」
「カイル、めぐみちゃんを送ったらまっすぐ診療所の仕事に来るんじゃぞ。」
「分かってるよ。今日も頑張るよ。」
そしてしばらく歩くと学校が見えてきた。
木でできた質素な学校だけど、感じのいい建物だった。
向こうにいたときの学校にはあんまりいい思い出がなくて、正直そこまで楽しみにはしていない。
でも、ちょっとだけ、友達ができたらななんて淡い期待を持ってたりする。
その前にしっかり勉強頑張ろう。
「さ!行っておいで!」
「行ってきます」
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