第7話 はじめまして
扉から一歩外へ、そしてもう一歩
後ろからカイルが続く。
数歩歩いて立ち止まる。
ほんとだったんだ。
私と同じ人種がたくさん、みんな生きてる、生活してる。
ぼーっとしてるとカイルの声で気が付いた。
「よし! 行こう! めぐみちゃんが今日から生活するのはもう少し離れたところだよ。僕と僕の家族と一緒に暮らすことになる。ついて来てね!」
「はい!」
「お! いい返事だ!」
ワクワクとドキドキ、いわゆる遠足前の小学生みたいな気分。
カイルのゆっくりとした足取りについていく。
周りを見れば小さなお店がたくさん並ぶ商店街。
結構栄えているように見える。
野菜、肉、饅頭見たいなおやつ、アクセサリー、服、香辛料?みたいなもの、いろんな店があって見ていて面白い。
カイルが突然立ち止まる。
「おじさん! まんずう2つ!」
「おーカイル! 久しぶりだなー 少し見ない間に大きくなったんじゃないか?」
「そんなわけないよ、もう22歳だよー」
「そうか? それもそうか! それにしても、お前さんの後ろにいる別嬪さんは誰だい? まさか、彼女とか?? カイルも年も年だしな!!」
「違うから!! 彼女はムンヤの子でここに来るのは初めてなんだ!」
「おー そうかそうか! もうあれから5年たったのか! 懐かしいなー」
『おじさん』と目が合う。優しそうな人だなー、私の顔見て驚かれないのが新鮮で、うれしくて、不思議な感じで、幸せで...
気づいたら、目頭が熱くなって視界が曇っていた。
「おい! どうした? カイル、俺、なんかまずいこと言っちまったか?」
優しい声でカイルが言う。「その逆だよ」
カイルの手が肩に置かれるのがわかる。
手で涙をぬぐって深呼吸。
「初めまして、大原めぐみです」
「初めまして、これからよろしくな! 俺はダン、ここで毎日まんずうを売ってる。それと、ここでは苗字はいらないよ、めぐみちゃん」
「ごめん、言うの忘れてた! ここでは、キートの世界と違って名前だけなんだよ」
「そうなんですね」
なんか、恥ずかしくなってきた。
赤くなってる私を見て二人は楽しそう。
「すまん、すまん、話に夢中になってしまった。まんずう2つね。」
ダンは蒸し器の中に入っている饅頭みたいなまんずうを空中に浮かせて、紙の袋に入れてくれた。
本当に魔法なんてあるんだ。すごい……
「はい! お待ち! 400パラね!」
カイルは硬貨を4枚渡した。「ありがとう! おいしくいただくよ!」
「おう! また、頼むぜ!」
再び、歩き出す。
「ここから、家のある村まで30分ぐらい歩くから食べながら歩こう!」
カイルがまんずうを1つ手渡してくれた。
袋が少し熱いけど一口食べてみると、味まで饅頭みたいな感じ。
「饅頭みたいでしょ、これ。どうやら、何十年も前のムンヤが饅頭って言って作り方をここの人たちに教えたら、なまってまんずうになっちゃったらしいよ。」
「そうなんですね、このまんずう、饅頭よりおいしいです!」
「確かに、僕もこっちの方が好きかなー」
「あの! この世界のこともっと知りたいです! 教えてください!」
満面の笑みの笑顔でカイルが振り向く。
「もちのろん!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます