発覚

発覚

そして、ここからは夢の話。仕事で疲れ果てシャワーも浴びずに寝た。次の日も仕事という憂鬱な気持ちを鎮めるため床に着いた。暗闇の中、沈みゆく瞼とともに深い眠りに落ちた。

 夢を見始めた時、俺は同僚のRと仕事が終わりに酒を飲んでいた。最寄り駅の居酒屋に行き飲み放題で程よく酔っていた。話の中身など覚えているはずもない。しかし、酒を飲んだ勢いでガールズバーへ行くことにした。もちろん嫁には内緒で。

 現実でも俺は良くガールズバーに立ち寄っていた。別に下心もないが、男だけのむさ苦しい空間に男は耐えられないのだ。

 この日もいつもと同じガールズバーに立ち寄る。外壁は青い塗料で丁寧に塗られ、入り口の扉は木でできていてドアノブは金色の真鍮でできており、どこか暖かい気持ちになる。そんな落ち着く作りもこの店のいいところだ。俺が先頭に立ち真っ先に扉を開ける。酒に酔っていたせいか今日は普段よりも扉が重く感じた。

 店に入るとちょうど20歳の若者3人が入口近くのダーツ台で遊んでいる。3人とも初心者のようで騒ぎながらブルとは程遠い場所に矢を刺して悔しがっている。いつもなら入口に1番近い席に2人で並んで座る。

 今日も一目散にその席座ろうかと考えたが金髪の若い女性店員に1番奥へ案内された。

Rと2人でタバコを燻らせながら酒が出てくるのを待つ。女性店員が酒を作っている間は気恥ずかしく2人とも自分の吐いたきれの悪い煙を目で追っている。しばらくすると女性店員が緑茶ハイを2つ持ってきた。そしてカウンターに立つなり「私も一杯いいですか?」と元気に尋ねてくる。女性店員に一杯奢ると1000円前後のお金が必要になる。サービスに対するチップと考えれば安いもんだ。

それにここで出し渋って財布の固い金にならない男と思われて、雑に接客されるのは面白くない。俺は同僚Rの返事を待たず「どうぞ」と声を掛ける。すると女性店員は「ありがとう」と笑顔で自分の酒を作りに足速にキッチンへと向かっていった。女性店員は自分の酒を持ってカウンターに立つ。乾杯をしようと顔を見るとその女性店員は嫁の友達のKちゃんだった。

 Kちゃんは嫁の高校の友達で背は低く顔は幼げで可愛らしい女性である。嫁とKちゃん、俺の3人で飲みに行った時、Kちゃんはフランクに接してくれた。いつも楽しげに恋愛の話や仕事の話をしてくれる。そんな気さくな女性だ。

 そんなKちゃんがガールズバーで働いている。ある意味、似合っている仕事だと思う。俺は「あれ?Kちゃんじゃん」と声を掛けるとKちゃんは俺に「久しぶり」と元気な声で返事をしてくれた。相変わらずの笑顔を見て少し照れている自分に少し罪悪感を感じた。

 話がある程度進んで煮詰まってきた頃、いつも笑顔のKちゃんが眉間に皺を寄せながら俯き始めた。何か具合が悪いのか、俺は何も言葉を出さずにただ見守る。するとKちゃんは重い口を開いてこう言った。

「私、あなたの嫁が横浜のクラブで男と遊んでいるのを見たの」

 俺は驚きやショックよりも納得がいかないという気持ちが大きかった。嫁は俺を裏切らないという自信が自分の中に強くあった。俺はKちゃんに「そんなはずないよ。あんなに俺のことが好きなのに。他の男に興味を持つはずなんてない」と自信満々に伝える。Kちゃんも俺の譲れない気持ちを察したのか「私も見間違いかと思ったんだけど……」と自信のない文言で、しかし真っ直ぐと目を見つめながら答えた。そして、Kちゃんは「ほら、この写真見て」とスマートフォンを自信満々に見せてきた。そこにはスーツを着て短髪、清潔感のある男と腕を組んでいる嫁の姿があった。そして、嫁の視線は男の顔に向けられており、そこには普段俺に向けている温かい笑顔が画面に映されていた。ここまでの証拠を突きつけられると、俺も引けない。ここだけの話で済ませようと思っていたがこれは確実に調査するべきだと考えた。Kちゃんと後日、嫁の動向を探る約束を取り付けた。

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