第18話 自業自得

「ガルバー様、まっていましたよ」

 ランプの明かりに照らされたニーナはゾッとするような笑みを浮かべてガルバーを見下ろしていた。


「こ、これはどういうことだ! ニーナ答えよ!」

 ガルバーは椅子に縛り付けられて身動きがとれない、ガタガタと身体をゆらしてみるがまったく身体が自由になる気配がなかった。

 首を回して周りを見てみると、ここが城の地下にある牢獄だということがわかった。

 しかもここは拷問部屋だ。

 

「ニ、ニ、ニーナ、こ、これはどういうつもりだ! ワシをこんなところに縛り付けおって、な、なにをするつもりだ!」


「ガルバー様、ガルバー様にお聞きしたいことがあるといいましたよね? 覚えていないのですか?」


「き、聞きたいことがあるのであれば、このような真似をせずとも、よ、よいだろう! さっさとこの椅子から開放せんか!」

 ガルバーは無表情なニーナに恐れおののきながら虚勢を張る。


「そうですね、とりあえずガルバー様が素直になっていただくため、指からいきましょうか」


「指とはなんのこと …がぁぁぁぁぁ痛い痛い痛い」


 ガルバーが聞き終わる前にニーナは、ガルバーの右手の小指を躊躇なくへし折った。

 

「いったいなにをする…がぁぁぁぁぁ痛い痛い痛い」

 ニーナはそのまま続けて薬指、中指と続けてへし折っていく。最後に人差し指をひときわ大きい音がなるようにへし折る。


「わかった! もうやめてくれニーナ! ワシが悪かった!」

 ガルバーは顔を涙と鼻水とよだれでぐしゃぐしゃにしながら哀願する。


「ガルバー様? なにが悪かったというのですか? まだなにも聞いていませんよ?」

 ニーナは相変わらず表情一つ変えずガルバーを見る。

 恐ろしい。相手の指を躊躇なくへし折り、悲鳴を聞き続けても表情がなに一つもかわらないのが恐ろしい。


「あの、黒い石のペンダントはなんだったのですか?」


「知らぬ! 流れの商人が売りつけてきたものだ」

 ニーナはそれを聞き、黙って左手の小指を折ろうとしたところで慌ててガルバーはいう。


「本当に知らぬのだ! 商人はあれをどこかの遺跡で見つけてきたといっておった! 聞いた話では、つかった相手の好意をいじれる惚れ薬みたいなものだといっていたのだ! 相手に向かってかざすことで効果がでるといっておった!」


「…好意? それであの時私があなたに、好意をもったか聞いてきたのですか…けれど、私はあなたに好意など全く持ちませんでしたが?」


「そのようなこと知らぬわ! …ま、まて。たしかやつがいっておったのは、そう、相手の気持ちを反転させるといっておった!」

 ガルバーは不満げに言い放とうとしたが、己の指に手をかけるニーナを見て必死に記憶を探し正解を探しだした。


「…なるほど、そういうわけですか。たぶん私はあなたに対して無関心だったので、変化がなかったということですか、そしてグラハム様に対しては見事に反転したということ…」


 ニーナは黙ってガルバーの左手の小指を折る。

 

「がぁぁぁぁぁ、まて、ニーナワシは正直いっておるのだ…」


「その商人からほかになにか買いましたか? そしてその商人はどこへいきましたか?」


「ほ、ほかにはなにも買っておらん! どこにいったかも知らん! 本当じゃ!」


 ニーナは黙ってガルバーを見下ろすと、残った左手の指を一本ずつ折っていく。

 

 バキバキバキと、絶えずガルバーは悲鳴を上げ続ける。指の骨を折る音は結構大きく響いた。

 もっともそれ以上にガルバーの断末魔の絶叫は城の地下牢中に響き渡った。

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