第2話

「あるはずなんだ、ここに。あるはずなんだ!」


夜の森というのは危険だ。そこら中に異形が餌を求めて跋扈している。自殺以外の目的で入る奴はいないだろう。だが俺にはもうこれしかなかった。

おとぎ話というのは嫌いだ。「正直者は救われる」

だの「真実の愛」だの甘ったるい言葉を吐かして人

の心を惑わす。だから本をよむ奴っていうのは甘ったれの腰抜けばかりなんだ。だが俺は例えそんなおとぎ話でもあいつを救えるのであればもう信じるしかなかった。だからこの森に入ったのだ。奇跡の泉というのがどんな物であろうと妹の体を元通りにするくらいはできるはずだ。ベナを抱き抱えながら俺は走り続けた。

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